2009年7月 9日 (木)

七瀬三部作完結編 筒井康隆 『エディプスの恋人』(新潮文庫)

筒井康隆の七瀬三部作の完結編、『エディプスの恋人』(新潮文庫)

筒井康隆 『エディプスの恋人』(新潮文庫) 七瀬は私立手部高校の事務職員をしている。ある日、香川智弘という手部高校の生徒に向かって飛んだ、野球部員の打球が、上空で破裂する。それが全ての始まりだった。

その不思議な出来事に興味を持った七瀬は、「彼」、香川智弘と、「彼」の父親である香川頼央に持ち、調査を始める。
そのうちに明らかになる驚くべき真実、と同時に七瀬は「彼」に強烈な愛情を感じ、毎晩のように彼とつきあうようになる……

七瀬を「彼」との恋愛に向かわせた力とは? 
それが明らかになるにつれ、筒井康隆が仕掛けた壮大なスケールに圧倒されることになる一冊です。

筒井康隆 『エディプスの恋人』(新潮文庫) bk1

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2009年7月 8日 (水)

「七瀬ふたたび」の前日譚 筒井康隆 『家族八景』(新潮文庫)

七瀬三部作の第1作で、「七瀬ふたたび」の前日譚に当たる『家族八景』(新潮文庫。筒井康隆:作)を紹介します。

筒井康隆 『家族八景』(新潮文庫) テレパス・七瀬は高校を卒業して家政婦の仕事をしている。家政婦の仕事を選んだのは自分がテレパスであることを見抜かれないように短期間で職場を変わっても怪しまれないためである。

そんな七瀬が通った8つの家族の内面が本作品では炙り出される。
七瀬同様に何らかの特殊能力を持った老女のいる家庭、汚らしい大家族の家、自分が年を取ったということを受けいれられない中年の女性、七瀬がテレパスであることを見抜こうとする大学の助教授、定年退職後に自分の居場所を見つけられない初老の男性、不倫願望のある男女、歪んだ心を持つ日曜画家、嫁姑の確執が激しい家庭。

七瀬が覗いた、どこにでもあるようでいて奇妙に歪んだ家族とその内面をえぐり出す心理小説です。

筒井康隆 『家族八景』(新潮文庫) bk1

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2009年7月 7日 (火)

筒井康隆 『七瀬ふたたび』(新潮文庫)

4度もドラマ化されているSFの名作、筒井康隆の『七瀬ふたたび』(新潮文庫)

筒井康隆 『七瀬ふたたび』(新潮文庫) 美しきテレパス・火田七瀬は仲間ともいうべき超能力者と次々に出会う。同じテレパスの少年・ノリオ、未来予知の能力を持つ岩淵恒夫、念動力を操り、七瀬を崇拝する黒人のヘンリー、時間旅行者である女子高生の漁藤子(すなどり・ふじこ)。そうした能力者達の触れ合いを通して心の安らぎを得、ホステスで稼いだ金で北海道南西部に別荘を購入して、井能力者同士で暮らし始めたのも束の間、マカオのカジノでテレパスを使って大金を火星だ七瀬を超能力者と察し、命を狙おうとする謎の集団が現れる。

北海道の別荘に立て籠もり、相手の様子を窺う七瀬達。だが魔手はすぐそこに迫りつつあった……。

自分達と違う能力を持つものへの迫害というテーマも宿したSF小説の金字塔です。

筒井康隆 『七瀬ふたたび』(新潮文庫) bk1

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2009年7月 5日 (日)

NHKドラマ8「七瀬ふたたび」オリジナル・サウンドトラック

NHKドラマ8「七瀬ふたたび」のオリジナル・サウンドトラックを紹介します。川井憲次:作曲。NAYUTAWAVE RECORDS。

NHKドラマ8「七瀬ふたたび」オリジナル・サウンドトラック テレパス・火田七瀬(蓮佛美沙子)を主人公にした、未知能力者達と彼らの能力を利用しようとする組織との対決を描いたドラマの音楽だけに、ミステリアスでドラマティックな旋律を中心に構成されていますが、ロマンティックな音楽や明るいサウンドのポップな曲なども含まれており、バラエティに富んだサウンドトラックになっています。

全25トラック、66分を超える長時間収録のサウンドトラック盤です。

NHKドラマ8「七瀬ふたたび」オリジナル・サウンドトラック(HMV) icon

NHKドラマ8「七瀬ふたたび」オリジナル・サウンドトラック

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2009年7月 4日 (土)

DVDBOX 「七瀬ふたたび」

2008年の秋に放送された連続ドラマ、NHK「七瀬ふたたび」のDVDBOX。NHKエンタープライズの発行、ポニーキャニオンからの発売。DVD6枚組。

DVDBOX「七瀬ふたたび」

原作:筒井康隆、脚本:伴一彦&真柴あずさ、主演:蓮佛美沙子、出演は、塩谷瞬、水野美紀、柳原可奈子、郭智博、宮坂健太、載寧龍二、今井朋彦、光石研、北村総一郎、小日向文世、市川亀治郎ほか。

<あらすじ>
田中七瀬(蓮佛美沙子)は老人ホームで介護士として働いている。そんな七瀬の母親が事故に遭う。母親が息を引き取る瞬間、七瀬は母親の記憶を読み取る。七瀬がテレパスに目覚めた瞬間だった。七瀬は母親の記憶から自分の過去と父親の火田精一郎(小日向文世)が残した謎の言葉を知る。その謎を探るため、七瀬は父親の苗字である火田を名乗り、火田七瀬として東京に向かう……

新進女優、蓮佛美沙子の才能が輝く連続テレビドラマシリーズ。「七瀬ふたたび」のドラマ化は4度目となりますが、新たな七瀬像を生み出しています。

特典としてメイキング映像や蓮佛美沙子のインタビューを収めたDVDが入っています。

DVDBOX「七瀬ふたたび」(HMV) icon

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2009年7月 3日 (金)

日本のオーケストラを聴こう(2) 京都市交響楽団 ウーヴェ・ムント指揮 バルトーク 管弦楽のための協奏曲&「中国の不思議な役人」組曲

日本のオーケストラを聴こうシリーズの第2回目は私の地元、京都市交響楽団。
1956年に日本初の自治体直営オーケストラとして誕生。創立当初はモーツァルトの演奏で高い評価を受け、「モーツァルトの京響」と呼ばれました。
現在まで53年間の歴史を誇り、12人の常任指揮者を迎えてきました。
ウーヴェ・ムントは第10代目の常任指揮者で、1998年から2001年までの3年間、その座にありました。

ウーヴェ・ムント指揮京都市交響楽団 バルトーク 管弦楽のための協奏曲&「中国の不思議な役人」組曲 ムントの在任期間中、京響はBMG傘下の廉価盤レーベルであるアルテ・ノヴァと契約し、4枚のアルバムを作成しています。

今日紹介するバルトークの管弦楽のための協奏曲とバレエ音楽「中国の不思議な役人」組曲を収録した1枚はその中でも高い完成度を誇っています。

録音にやや問題があり、音のパワーには欠けますが、京響のアンサンブルの精度の高さは十分に伝わってくる優れたアルバムです。

ウーヴェ・ムント指揮京都市交響楽団 バルトーク 管弦楽のための協奏曲&「中国の不思議な役人」組曲(HMV) icon

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2009年7月 2日 (木)

追悼ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踏団「フルムーン」

2008年4月2日 びわ湖ホール大ホールにて

びわ湖ホール大ホールで、コンテンポラリーダンスの世界的大家、ピナ・バウシュ率いるヴッパタール舞踏団の公演「フルムーン」を観る。午後7時開演。

ピナ・バウシュの公演ということで、関西の舞台関係者や文化人の姿が多く見られる。

「フルムーン」はダンサーが日本語や英語でセリフを語りつつ進むダンス作品。ヴッパタール舞踏団には日本人のダンサーもいるので、日本語のセリフもメンバーは憶えることが出来たのだろう。

舞台中央、やや上手寄りに巨大な岩石のセットが置かれている。その下には川状の浅いプールが舞台を横切っている。

「フルムーン」というタイトルゆえ、冒頭こそ月に憑かれたようなダンスがあるが、それに沿った解釈で見ても面白くないので、場面場面を画として楽しんでみた。物語性を追おうとすれば追えるのだけれど、そもそも物語性というもの自体が、あるがままのものにレッテルを貼って、それらしき場所に押し込めてしまうものであり、ダンスにまでそんな窮屈さを求めたくない。

水を多量に使った場面はやはり爽快。市川猿之助が、スーパー歌舞伎について、「水芸を舞台でやると必ず喜ばれる」と言っているのを聞いたことがあるが、やはり本来舞台とは相性が良くないはずの水を思いっきり使うと、舞台であることの制約が取り払われたとような感覚があり、痛快である。

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2009年7月 1日 (水)

コンサートの記(46) 大植英次指揮ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー来日公演2009

2009年6月21日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールで

雨の朝を迎える

午後2時から大阪のザ・シンフォニーホールで、大植英次指揮ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニーの来日公演に接する。大植英次はハノーファーでの音楽活動が評価されて、ドイツ・ニーダーザクセン州功労勲章一等功労十字賞を受賞したばかりで、凱旋公演となる。

演目は、マーラーの交響曲第9番。

客の入りは、2階席正面に空席が目立ったが残りは埋まっていた。大植は大阪フィル時と同様に、北ドイツ放送フィルもヴァイオリン両翼配置、コントラバスは最後列に横一列に並べて演奏させる。

悠然とした音運びによるマーラーで、演奏時間は約100分。細部を拡大するように演奏するところもあった。
北ドイツ放送フィルは、音の立体感、艶と輝き、パワー、いずれにおいても大阪フィルよりずっと上である。おそらくハーモニーに対する感性が、日本人奏者とドイツ人奏者とでは違うのだろう。また、個々の資質の違いも当然あると思われる。大阪フィルと違い、緩やかなテンポでも間延びしないのは流石だ。

まさに慟哭、涙で押し流されるような第4楽章が出色の出来であった。「死に絶えるように」と記されたラストの寂しさなども印象的である。

最後の音が消えても大植はなかなか腕を下ろさない。1分かそれ以上の間があり、ようやく拍手が起こり、瞬く間に怒濤のように盛り上がる。

拍手は15分以上も続き、楽団員全員が退場した後も大植一人が登場して拍手を受けた。大植はガッツポーズに投げキッスで拍手に応えていた。

ホールに入るときは小雨もぱらついていたが、出る時は晴れ。名演を天が祝福しているかのようだった。

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2009年6月29日 (月)

ONTOMO MOOK「最新・世界のオーケストラ名鑑387」(音楽之友社)

音楽之友社から発売されたONTOMO MOOK「最新・世界のオーケストラ名鑑387」を紹介します。

「最新・世界のオーケストラ名鑑387」(音楽之友社)

文字通り、全世界の387のオーケストラを紹介するという書物。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ザクセン・シュターツカペレ・ドレスデン、シカゴ交響楽団、バイエルン放送交響楽団といったトップオーケストラから、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団といった一流楽団、更には世界各国の主要オーケストラ、日本のオーケストラまでを網羅。

中には有名なのに選から漏れたオーケストラや、編集上の重複などもありますが、資料として大変有用なムックです。

ONTOMO MOOK「最新・世界のオーケストラ名鑑387」(音楽之友社) bk1

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コンサートの記(45) アジアオーケストラウィーク2005 セバスチャン・ラング=レッシング指揮タスマニア交響楽団

2005年10月3日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールで

大阪へ。福島のザ・シンフォニーホールで今週は「アジアオーケストラウィーク 2005」が開催される。
今日、公演を行うのはオーストラリア・タスマニア島のオーケストラ、タスマニア交響楽団。オーストラリアは当然アジアではないが、一応、環太平洋ということで特別に選ばれたのだろう。タスマニア交響楽団はピアノの通奏低音入りの「ベートーヴェン交響曲全集」を発表し、賛否両論を巻き起こした。そのことも招聘にもちろん関係しているだろう。

無名オーケストラということで客席は半分ほどしか埋まっていない。オーストラリアやタスマニアに興味がある人、タスマニア響の「ベートーヴェン交響曲全集」を聴いて興味を持った人、そして単なる物好き、が主な客層だと思われる。普段はコンサートに来ないタイプの人もいる。
東南アジア系の人も多いな、と思ったら、彼らの正体は明日演奏するヌサンタラ交響楽団(インドネシア)のメンバーであることが後でわかった。

私が座ったのは3階席のステージ後方よりの席、指揮者が右斜め下に見える席である。シンフォニーホールは京都コンサートホールと違い、ステージ後方寄りでも音のバランスが悪いということはない。

指揮はドイツ人のセバスチャン・ラング=レッシング。見るからにやる気が漲っているタイプの指揮者だった。棒は決してわかりやすくない。勢い余って棒を強く振りすぎ、オケがそれに反応して急に音が大きくなるという場面もあった。
ただ、曲の全体像をあたかも俯瞰するように把握しているのだろう。楽曲の解釈には遺漏がない。

1曲目は、1957年にウズベキスタンに生まれ、オーストラリアで育った、エレナ・カッツ=チャーニンの「ミシック」。現代の音楽だがわかりやすい。悲歌のような弦楽の歌に、管の音が点々と打たれ、最後はかなり盛り上がる。いい曲だと思う。

2曲目はリヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲。オーボエソロはシドニー交響楽団の首席奏者、ダイアナ・ドハティ。明るく澄んだ音を出すオーボエ奏者だ。シンフォニーホールの音響の良さもあって、心地良いが、少し音色が単調な気もする。オーボエとヴィオラの掛け合いが面白い。

メインはベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。ピアノの通奏低音が聴けるか、と思ったがそれはなし。少し残念。指揮者が変わったので当然といえば当然なのだけれど。
タスマニア交響楽団は総勢47名の中編成のオーケストラだが、それを十分に生かし、小回りの利いた快演となった。
アンサンブルは万全。音自体はそう輝かしいものではないが、表情は明るく、音が生き生きしている。
ラング=レッシングの指揮は曲から立体感と奥行きを引き出した優れたものだ。どちらかというとドライなベートーヴェンだが、不必要な重さがないのは却って好感が持てる。
推進力があり、中編成ながら迫力も十分で、聴き応えがあった。

世界には無名でも優れた指揮者とアンサンブルが沢山存在するのだ、と実感する。これが本日の最大の収穫である。

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