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2006年8月14日 (月)

後戻りできない文明

東京で大停電が起こる。電気に頼って生きてきた現代人はたちまちのうちに立ち往生する。

電気が発明されてからそう長い歴史を経たわけではないのに、人類は電気なしでもずっとやってきたというのに、電気が発明されてからは、それに頼らないでは生きていけなくなってしまった。

携帯電話やパソコンも然り。今では詳細なニュース速報はまず、携帯のニュースメールやネットから流れてくる。10年ちょっと前まではパソコンもケータイもそれほど普及してはいなかった。しかし、今はケータイやパソコンなしでは相当な不便を強いられることになる。
公衆電話が街から次々に姿を消し、コミュニケーションのスタイルが大変革を遂げ、パソコン無しでは就職の際にエントリーすることも出来ない時代なのだ。

かくして文明は後戻りできない。

アメリカに生まれ、モロッコに渡って活躍した作家、ポール・ボウルズが書いた「シェルタリング・スカイ」という小説がある。ベルナルド・ベルトリッチ監督が映画化したため、一時は文庫本が再発売されたのだが、現在は古本屋かネットオークションでないと(ここでもネットが出てくる時代なのだ)手に入らない。次善の策としてベルトルッチの映画を観るという手もあるが、小説の方がずっと重く、されど面白い。

今、手元に本がないので、詳しくは書けないのだが、「シェルタリング・スカイ」は、観光でサハラを訪れたアメリカ人の夫婦が、砂漠という圧倒的な自然の前に打ち倒されるという悲劇である。アメリカ人夫妻は「文明に依存した現代人」の代表であり、文明の側にいる限り勝者であるが、ひとたび別の原理で動いている世界に出てしまうと全く無力である現代人の一種の「闇」もしくは「病み」を炙りだしている。
とにかく陰惨な小説なので、「小説を読んで暗い気持ちになんてなりたくない」という人は一生読まない方が幸せでしょう。

しかし、今日の停電に代表されるように、現代文明は意外な脆さを持ち合わせている。もはや後戻り出来ない我々は、いつ「やみ」が世界を飲み込むかわからないまま生きなければならない弱い存在でもある。

このまま弱くてもいいのか、或いは(為政者にとっては)弱いほどいいのか、それはわからないが、弱さは自覚していた方がいい。

「一病息災」という言葉が(近年に入ってから生まれたものであるが)示しているように、弱さを抱えているからそれに対するケアを怠らず、結果、より「健全」に生きられるということもあるのだから。

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