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2006年12月21日 (木)

第九あれこれ 2006 その1 N響の第九

日本では年末になるとベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が頻繁に演奏されるようになります。これは日本だけの習慣です。
ヨーロッパ人は日本で年末になると第九ばかりが演奏されるのを不思議がり、ヨーロッパ贔屓の日本人の中にも「第九ばかりなんてみっともない」と考える人もいるようですが、そういう習慣のある国が一つぐらいあってもいいように思います。

年末の第九演奏を始めたのはNHK交響楽団であるとされています。今回は、そのNHK交響楽団の第九のCD2枚を紹介します。いずれもNHKによる録音、キング・レコードからの発売です。

ヨーゼフ・カイルベルト指揮NHK交響楽団 第九 まずは、1908年、ドイツのカールスルーエに生まれ、1968年にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を指揮中に心臓発作のために60歳で亡くなったヨーゼフ・カイルベルト指揮の演奏です。合唱は東京放送合唱団と国立(くにたち)音楽大学合唱団。ソプラノ・伊藤京子、アルト・栗本尊子、テノール・森敏孝、バリトン・大橋国一。
1965年12月25日、東京文化会館でのライブ録音。

1965年当時のNHK交響楽団はやや非力(特に金管)であり、録音も音の強さを十分に捉え切れていないように思えますが、カイルベルトの「いかにもドイツの指揮者」らしいガッチリとした構成力を持つ巨大な音楽を楽しむことが出来ます。渋み溢れる誠実な演奏であり、スケールの豊かさ、奥深さなど、カイルベルトという指揮者の実力を思い知らされます。もう少し長生きしていたら20世紀を代表する指揮者になっていたはずで、60歳という指揮者としては若い年齢で亡くなったことが惜しまれます。

ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮NHK交響楽団 第九 もう一枚は最近発売されたロヴロ・フォン・マタチッチ指揮のCD。合唱は国立音楽大学合唱団。ソプラノ・中沢桂、アルト・春日成子、テノール・丹羽勝海、バリトン・岡村喬生。
1973年12月19日、東京・渋谷のNHKホールでのライブ収録。

NHKホールはこの年5月に完成したばかりであり、約4000人を収容出来るホールの巨大な空間を気にしたのか、独唱陣が総じて力んでいるのが気になります。

旧ユーゴスラビアの指揮者であるロヴロ・フォン・マタチッチ(1899-1985)は巨大な音楽作りを特徴とする名指揮者であり、N響との相性は抜群で、1965年の初共演以来、1984年まで20年近くに渡って、東京を始めとする日本の聴衆を魅了してきました。

この演奏の特徴は、切れ味の良さで、「霧のよう」と称されることの多い冒頭から弦の動きはクッキリ聞こえ、主題の登場のフォルテシモの爆発力も抜群です。
冒頭に限らず、ここ一番での爆発力は超人的であり、圧倒されます。
録音も優秀であり、カイルベルト盤よりマタチッチ盤の方が一般受けするはずです。

キング・レコードから出ているNHK交響楽団の第九のCDは、他にエフゲニー・スヴェトラーノフ指揮の1995年盤がありますが、オーケストラにミスが多く、スヴェトラーノフの個性も強すぎて妙な第九になっています。スヴェトラーノフのファンにはお薦めできますが、それ以外の方にはどうでしょう(私はスヴェトラーノフが好きですが、それでもこの第九のCDは納得がいかず、すでに手放しています)。

私は、N響演奏の第九のCDの中では、カイルベルト指揮のものが一番好きです。

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