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2007年3月 9日 (金)

観劇感想精選(2) 燐光群 「スタッフ・ハプンズ」

2006年2月6日 大阪・周防町(すほうまち)のウイングフィールドにて観劇

大阪・周防町にあるウィング・フィールドという小劇場で、燐光群の「スタッフ・ハプンズ」を観る。イギリスの劇作家、デイヴィッド・ヘアーの戯曲(日本語訳:常田景子)を燐光群主宰である坂手洋二が演出した。タイトルの「スタッフ・ハプンズ」とは、「ろくでもないことは、おきるものだ」という意味で、アメリカのラムズフェルド国防長官のコメントから取られている。

アメリカを始め各国の政治家達が実名で登場、イラク戦争に至るまでの舞台裏を描く虚実ない交ぜの政治劇であり、会話劇であり、歴史劇である。虚実ない交ぜとは書いたが、公の場での発言は一切手を加えることなく、セリフ化しているという。

主要登場人物は、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ米国大統領、リチャード・チェイニー副大統領、コンドリーザ・ライス国家安全保障担当大統領補佐官(現・国務大臣)、コリン・パウエル国務大臣(イラク戦争当時)、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、ポール・ウォルフォウイッツ国防副長官(現・世界銀行総裁)、トニー・ブレア英国首相、ジャック・シラク仏国大統領、コフィー・アナン国連事務総長など。

硬質の芝居であり、入り込むまでには少し苦労する。役者達も慣れない単語だらけのセリフを発するのに難儀している様子が見て取れた。だが一度入ってしまうと興味深く面白い劇である。

納屋の内部のようなセット、一人何役も演じ分けるストーリーテラーの存在など、リアリズムの芝居ではないが、「迫真」の芝居である。

ネオコンの人達が悪代官や悪徳商人のように見えるのは難ありとも捉えられるのだが、案外彼らの本質は本当に悪代官や悪徳商人に近いのかも知れない。

ブッシュ大統領が傀儡(くぐつ)として描かれているが、それは真実であろう。

長々と感想を語るよりも、自分の中で反芻し、ゆっくり消化しながら味わうべき劇であるため、多くを書くつもりはないが、興味深い内容だったということだけは伝えておきたい。「神」、「自由」、「正義」、「平和」、「秩序」、「民主主義」など、甘い匂いで人々を惹きつける単語がセリフの中に散りばめられている。が、これらの言葉が持つ二面性と危険性に作家も演出家も自覚的であるため、単なるイラク戦争とアメリカ政治の概要や説明でなく、奥行きと力強いメッセージを持つ「演劇」にまで高めることに成功していた。

上演時間2時間半の大作であるが最後まで観る者を惹きつけていた、と書けるといいのだが、政治に興味のない人や演劇を見慣れていない人にはわかりにくかったかな、とも思う。

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