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2007年3月11日 (日)

観劇感想精選(3) WANDERING PARTY 「21世紀旗手」

2006年1月27日 京都のアトリエ劇研にて観劇

アトリエ劇研で「WANDERING PARTY」の『21世紀旗手』を観る。タイトルは太宰治の「20世紀旗手」から取られており、そこからもわかる通り太宰を主人公とした演劇である。井伏鱒二、川端康成といった文学界の巨星も実名で登場する。

一つ一つのシーンは面白い。全体の流れもいい。ただ、ラストが物足りない。もっと続きが観たいし、本当に大切なのは、そこ(ラスト)から先にあるのではないか、という考えも浮かぶ。
平岡君や丸山君といった人々が登場する。もちろん平岡君こと平岡公威の正体や、女っぽい男でシャンソン歌手の丸山君の現在の名前、太宰の娘・里子の将来などを「観客は一般常識としてわかっている」という前提でこの劇は進められている。そう思わないと演劇なんて出来ない。ただ、今日の観客はその部分で笑わなかったので、あるいは説明が必要だったのかも知れない。残念ながら。

戦後が舞台なのだが、最新式のオーディオ機器なども登場し、タイトル通り「21世紀(第二の敗戦後)」が第二次大戦後に重ねられている。効果的だったかどうかは疑問だが、表現としては面白い。でも、「銀巴里」を出すのなら(「銀巴里」は太宰の没後にオープンしたので、本当なら太宰がそこにいるはずはないのだけれど)、時代は少し飛ぶけれど中西禮三君も登場させて欲しかった。

熱海にいる太宰から「借金が返せない」という連絡が来たので、美知子夫人は太宰の友人である壇一雄(作家。女優・壇ふみの父親)に金を届けるよう頼む。しかし貰った金を太宰は豪遊に使ってしまい、やはり借金が払えない。そこで壇を人質として旅館に置き、太宰が金を借りに東京へ戻る、という、太宰ファンの間では「走れ太宰事件」として有名になっているエピソードも盛り込まれている。太宰はメロスとは違って戻ってこなかったのだけれど。
ちなみに今日の劇ではその舞台が京都になっていた。太宰は京都には来たことがないはずだが、京都のアトリエ劇研でやる劇なので別にいいのだろう。時代も飛んでるし、歴史考証の劇ではないのだから。
といいながら書くけれど、平岡君がボクシングの話をするが、平岡君は安部譲二に出会うまでは「ボクシング」というものを知らなかったはずである。

この劇は衒学的ではない。しかし衒学的に見えてしまう人がいることも察しがつく。それくらい、今の若者は文学的知識に乏しい。

太宰の遺書を使ったギャグがあったが、太宰の遺書を知らない人が意外に多かったようで、笑ったのは私を含めて数人ほどだった。

最後になるが、セットは相変わらず凝っていて感心する。

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