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2007年8月28日 (火)

これまでに観た映画より(8) 黒澤明 「天国と地獄」

DVDで映画「天国と地獄」を観る。黒澤明監督による刑事サスペンス。主演:三船敏郎。刑事役に仲代達矢。犯人役は山崎努。
エド・マクベインの小説を翻案、映画化したもの。横浜を中心に神奈川県内各所が舞台となっている。

会社重役権藤(三船敏郎)の息子が誘拐される、と思いきや実は誘拐されたのは権藤の運転手の息子だった。だが誘拐犯は身代金を渡さなければ子供を殺すと言い張り……。

特急こだま(まだ新幹線ではない)の唯一開く窓を使った酒匂川鉄橋(小田原市内)での身代金のやり取り、モノクロの映像に煙だけが赤く染まって流れる場面(このシーンは映画「踊る大捜査線」でパロディー化されている)、阿片窟として描かれた横浜・黄金町など見所が多く、2時間20分を超える大作ながら一息に見せてしまう。

三船敏郎は世界的な俳優であるが、例えば電話で喋るシーンなど、迫力はあるが巧さは感じられない。俳優の平均的な演技水準は今の方が上だと思う。

横浜の黄金町がとんでもない場所として描かれている。確かに黄金町はいかがわしい街ではあるがこれほど酷くはない。ただ黒澤監督は黄金町を怖れていたそうで、昼間でも決して一人ではこの街を歩かなかったという。後に林海象監督が映画・濱マイク三部作(「我が人生最悪の時」、「遥かな時代の階段を」、「罠」)を黄金町を舞台として撮っているが、これは「天国と地獄」の黄金町の場面にオマージュを捧げたものだろう。

権藤のことを恨む、犯人の医学生・竹内銀次郎を演じる山崎努はこの頃から存在感抜群だ。

全編スリル溢れる構成となっているが、竹内が花屋に入ったという情報を無線で受けた戸倉警部(仲代達矢)が「誰か花を買いに行かせろ」と命令したところ、車で尾行中の刑事から「生憎、花を買いに行きそうな面(をした刑事)がいません」と答えが返ってくるという、客席は大爆笑したであろうシーンも挿入されていて心憎い。

麻薬中毒者の群れの中に菅井きんがいたり、刑事の一人を名古屋章が演じるなど、私のような団塊ジュニア世代にも馴染み深い俳優が紛れているのが面白い。

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コメント

>ただ黒澤監督は黄金町を怖れていたそうで、昼間でも決して一人ではこの街を歩かなかったという。

これは、美術監督の村木が取材のために
黄金町へ行ったが、昼間でも怖くて一人で
いけるような所でなかったので
刑事に護衛について来て貰ったという
エピソードと混同されてるものと思います。

つまり当時は実際にそういう恐ろしい場所
だったという事です。

>三船敏郎は世界的な俳優であるが、例えば電話で喋るシーンなど、迫力はあるが巧さは感じられない。俳優の平均的な演技水準は今の方が上だと思う。

この映画で共演した香川京子は
三船のあるシーンでの芝居を激賞してます。
「巧さ」は必ずしも必要ではないし
「巧い」から上というわけでもないでしょう。

投稿: あやや | 2007年9月 7日 (金) 17時57分

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受信: 2007年9月 7日 (金) 18時15分

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