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2007年11月の38件の記事

2007年11月30日 (金)

岡城千歳 「坂本龍一ピアノ・ワークス2」

女性ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト、岡城千歳(おかしろ・ちとせ)が坂本龍一の映画音楽をクラシック音楽として演奏した「坂本龍一ピアノ・ワークス2」を紹介します。「2」があるからには「1」もあるわけですが、「1」に相当する「坂本龍一ピアノ・ワークス」は坂本龍一のYMO時代やそれ以前の時代の作品、ソロアルバムに収録されている作品のピアノ編曲。一方、「2」の方は坂本が作曲した映画音楽を中心に選曲がなされています。
クラシック・ピアノの録音を追求するために生まれたアメリカのレーベル「プロ・ピアノ」からの発売。

岡城千歳 「坂本龍一ピアノワークス2」

「戦場のメリークリスマス」、「シェルタリング・スカイ」、「ラスト・エンペラー」、「ハイヒール」の映画音楽ピアノ版を収録。

特に「ハイヒール」の音楽のピアノ編曲が聴きもの。外の映画音楽のピアノ・バージョンは坂本本人の演奏でも聴くことが出来ますが、「ハイヒール」は映画自体がそれほどヒットしなかったということもあって(監督は「オール・アバウト・マイ・マザー」のペドロ・アルモドバル。「ハイヒール」は私は観ていますが、なかなか面白い映画です。坂本龍一の音楽は「最高」の一言)、ピアノ版を聴けるのはこのCDだけです。

映画音楽の他には、「1919」や「M.A.Y In Backyard」などを収録。

岡城のピアノは技巧に走りがちなところが気になりますが、音楽を楽しむには十分な仕上がりです。

坂本龍一/Piano Works Vol.2: Okashiro岡城千歳

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紅葉の盛り

紅葉の盛り 北白川疎水沿いの紅葉

北白川疎水沿いの紅葉。写真では余りきれいに出ていませんが、実際は目に染みるほど鮮烈な赤です。

夏の酷暑の影響で遅れ気味だった京都の紅葉、今が盛りです。明日明後日は天気も良いとの予報が出ており、絶好の紅葉狩り日和となりそうです。ぜひ京都にお越しください。

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模範解答

「用意された答えに出来るだけ近づくのが良いこと」

果たしてそうだろうか。

だが、良くも悪くも「用意された答えに近づけること」が現代教育の本質となっている。

答えを用意した側の意図を読み取った上で、それでも近づくというのなら、否定したりはしないのだけれど。

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2007年11月29日 (木)

これまでに観た映画より(14) 「かもめ食堂」

2006年6月5日 京都シネマにて

久しぶりに映画館まで映画を見に行く。京都シネマで公開中の「かもめ食堂」。オール・フィンランドロケによる日本映画である。
10時20分の回(つまり初回)を観る。京都シネマのロビーには早朝サービスとしてお茶が無料で飲めるようになっている。

「かもめ食堂」。フィンランドの首都ヘルシンキで、おにぎりをメインにした食堂「かもめ食堂」をオープンしたサチエ(小林聡美)。しかし1ヶ月経っても一人も客が来ない。ヘルシンキの3人のおばちゃんが食堂の中を覗いて、「あの子(サチエ)、大人かしら? 子供かしら?」、「子供なんじゃないの?小さいから」などと言っているだけである。
ようやく最初のお客が来る。日本オタクのトンミ・ヒルトネンという青年である。ヒルトネンはサチエに、「ガッチャマンの歌」を全て歌って欲しいと要望するが、サチエは「誰だ、誰だ、誰だ」の部分しか思い出せない。その日、書店に立ち寄ったサチエは、ミドリ(片桐はいり)という女性に出会い、「ガッチャマンの歌」をフルコーラス教えて貰う…。

はやらなかった「かもめ食堂」が繁昌するまでのお話。主要スタッフは全て日本人だが、フィンランドで撮影したためか、画面上に日本映画とは異なった時間が流れているのがわかる。出てくる料理も全て美味しそうで、こちらも食べたくなる。

小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、というとても濃い3人のコメディエンヌの主演だが、互いの個性と個性が調和して、爽やかな味わいが生まれている。

フィンランドの森のシーンがあるのだが、本当にトロルが出そうな雰囲気である(実際に、「トロルの悪戯か?」と思われるシーンがある)。映像も、画面に吸い込まれそうになるほど美しい。

ほのぼのとしたラストシーンも良く、愛すべき一本になっている。

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2007年11月28日 (水)

シベリウスの年に(23) 渡邉暁雄指揮京都市交響楽団 シベリウス交響曲第2番

渡邉暁雄(わたなべ・あけお)が京都市交響楽団を指揮して1972年に録音したシベリウスの交響曲第2番のCDを紹介します。EMIの原盤を、山野楽器、タワーレコード、新星堂が共同で再発するチェント・クラシックス・レーベルからの再発売。

渡邉暁雄指揮京都市交響楽団 シベリウス交響曲第2番(チェント・クラシックス) 渡邉暁雄は1970年から1972年まで京都市交響楽団第4代常任指揮者として活躍。京都市交響楽団(京響)に新風を送りました。

この録音は京都市交響楽団初のスタジオレコーディングとなったもの。当時、京響は京都会館を本拠地にしていましたが、音響を考慮してか、録音は奈良文化会館で行われています。

結成からまだ16年しか経っていない当時の京響は、今に比べると音の輝きに乏しく、パワーも不足気味ですが、それでも初録音にかける意気込みが伝わってくる良い演奏です。アンサンブルの質も結成16年目のオーケストラにしては上々です。

渡邉は何よりも京響にしっかり音を弾かせることを目標にしていたのか、冒頭から遅めのテンポで、一音一音をかみしめるように進んでいきます。最初のうちは間延びして聞こえたり、洗練度不足を感じさせるところもありますが、第4楽章に向けて徐々に盛り上がっていくという、スタジオ録音にも関わらずライブのような感興があります。

第4楽章の高揚感が一番の聴きもの。京都市交響楽団の歴史的記録としての価値も高く、特に関西のクラシックファンにはお薦めの一枚です。

シベリウス:交響曲第2番ニ長調op.43

クラシックも豊富な品揃え【タワーレコード 公式サイト】

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徳永英明 「VOCALIST 3」

徳永英明 「VOCALIST 3」 徳永英明が、女性ヴォーカリストの曲をカバーした、「VOCALIST」シリーズ。1から3までありますが、個人的に一番気に入っているのは、最新盤である「VOCALIST 3」(ユニバーサル・シグマ)です。

小林明子の「恋におちて」、今井美樹の「PRIDE」、高橋真梨子の「桃色吐息」、中島みゆきの「わかれうた」、薬師丸ひろ子・竹内まりやの「元気を出して」、石川ひとみ・松任谷由実(荒井由実)の「まちぶせ」、安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」など全13曲を収録。

「VOCALIST 3」では特にその傾向が強いのですが、徳永英明は、持ち前の声の色気を生かすことを大事にしており、必要以上に楽曲に踏み込むこと、つまり余計な演出はしません。それが却って女歌の良さを生かす結果になっています。

『金曜日の妻たちへ』の主題歌であった「恋におちて」などは20年以上も前の歌ですが、徳永英明の個性に合っているのか、徳永のオリジナル曲のように聞こえるほどピッタリはまっています。

徳永英明 /Vocalist: 3

徳永英明

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2007年11月27日 (火)

私選 プロ野球・記憶に残る名勝負(2) 伊藤智仁 VS篠塚和典 無念のサヨナラ被弾

ヤクルトスワローズの黄金期であった1990年代を代表するピッチャー、伊藤智仁。150キロを超えるストレートと驚異的なキレを見せる高速スライダー、更にフォークボールを武器に1993年のルーキーイヤーは怪我で規定投球回数に満たなかったものの防御率0点台という驚異的なピッチングを披露し、ドクター0(ドクターオー)の異名を取ります。

しかし、バルセロナオリンピック壮行試合、プロアマ対決戦でアマチュア時代の伊藤と対戦した古田敦也をして「来るとわかっていても打てない」と言わしめた高速スライダーは肘や肩に強度の負担をかける諸刃の剣であり、度重なる怪我に泣かされ続けた伊藤智仁は「ガラスのエース」でもありました。

その伊藤智仁の悲運の野球人生を象徴するような試合が、1993年6月9日に、金沢の石川県立球場で行われた対巨人戦。
伊藤智仁はセリーグ最多タイ記録となる16個の三振を奪う快投で巨人打線を0点に抑え続けるも、味方のヤクルト打線も沈黙。結局、9回裏に篠塚和典にサヨナラソロホームランを打たれ、試合の主役でありながら負け投手となってしまったのでした。

1993年6月9日の対巨人戦の模様も含まれたドキュメンタリー(YouTubeより)

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2007年11月26日 (月)

コンサートの記(4) ネーメ・ヤルヴィ指揮 京都市交響楽団第490回定期演奏会

2006年7月4日 京都市交響楽団第490回定期演奏会

京都コンサートホールで、京都市交響楽団の定期演奏会を聴く。指揮台に立つのは、エストニアが生んだ世界的指揮者、ネーメ・ヤルヴィ。350点以上のCDをリリースしている音盤の巨匠として知られ、また、世界が注目する新鋭指揮者、パーヴォ・ヤルヴィの父親でもある。

曲目は前半が、グリーグの「叙情的組曲」と「4つのノルウェー舞曲」。後半がチャイコフスキーの交響曲第4番。

「叙情組曲」は京響の管楽器群がやや不安定であり、弦の音色にももっと彩りが欲しくなるがハーモニーは美しく、音に勢いがある。ネーメは時折、極端に長いパウゼ(休符)を取る。京都コンサートホールは天井が高いので休符の間も上方に音が漂っているのがわかる。ネーメはその残響を楽しんでいるようだ。

「4つのノルウェー舞曲」では、ネーメは肩や肘のちょっとした動きだけで音楽を作ってみせる。造形のしっかりした音楽だが、ネーメの指揮はどことなくユーモラスだ。というよりその動き、わざとやってるだろう。音の動きは緩急自在であり、色々な意味で面白い音楽になっている。
いつもより一段とパワフルな京響の音楽に客席も大いに沸く。

ネーメは何と、「4つのノルウェー舞曲」より第2曲を再度演奏。今度はノンタクトで振ったのだが、滑稽な表情を見せたり、わざと大袈裟に振ったりと、やはり先程もわざとユーモラスに指揮していたことがわかる。
ネーメの実演には10年ほど前にも接しているが、こんな指揮はしていなかった。長くアメリカのオーケストラ(デトロイト交響楽団)の常任を務めたため芸風を変えたのだろうか? 演奏前は難しい表情をしていたのに、なかなか役者である。

メインのチャイコフスキーの交響曲第4番は純音楽的な解釈による硬派な演奏だ。京響の音は輝かしく、スケールは豊かで、ブラスの威力も抜群である。関西のオーケストラ演奏としては間違いなく最上の部類に入るだろう。

演奏終了後、普段は大人しい京都の聴衆が爆発的に盛り上がる。これほど盛り上がっている京響の演奏会を見るのは初めてだ。というより、大植&大阪フィルや、デュトワ&N響の終演後よりも遥かに盛り上がっているじゃないか。凄いぞネーメ。

モーツァルト生誕250周年ということで、特別にアンコール演奏がある。モーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」序曲。ネーメは日本語で、「オメデト、モーツァルト」と言ってから振り始める。
チャイコフスキーと同じメンバーによる演奏なのだが、音も表情も全く違う。きちんとモーツァルトの音がして、モーツァルトの音楽が奏でられる。ネーメはここでもユーモラスな指揮でエンターテイナーぶりを発揮する。面白さとは何かがちゃんとわかっている。

いいぞネーメ! 息子に負けずにまだまだ頑張って欲しい。

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2007年11月24日 (土)

街の想い出(17) 銀座その1 シネスイッチ銀座(銀座文化劇場)

街の想い出 銀座その1 シネスイッチ銀座(銀座文化劇場)

東京都中央区銀座、銀座のシンボルともいえる和光の裏通りにあるのがシネスイッチ銀座です。1997年までは、シネスイッチ銀座と銀座文化劇場という2つの劇場が入っていて、銀座文化劇場は往年の名画を上映するいわゆる名画座でした。現在はシネスイッチ銀座1とシネスイッチ銀座2となり、ロードショー館となっています。

私が良く通ったのは、今はなき銀座文化劇場の方で、ルキノ・ヴィスコンティの「家族の肖像」や「ベニスに死す」、先日亡くなったモーリス・ベジャールがバレエの振付を担当した「愛と哀しみのボレロ」などが強く印象に残っています。

グスタフ・マーラーをモデルにした「ベニスに死す」(原作はトーマス・マンの小説)は、テレビでも観ていたのですが、スクリーンで観ると耽美的な味わいがよりはっきりとわかりました。

「愛と哀しみのボレロ」は、ラストの有名なバレエシーン(ラヴェルの「ボレロ」。この振付をしたのがモーリス・ベジャール)以上に、とにかく長い映画だったという印象が残っています。今観たらまた違った感じを受けるのかも知れませんが。

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2007年11月23日 (金)

ナット・キング・コール 「アフター・ミッドナイト AFTER MIDNIGHT」

ジャズヴォーカルのキング、ナット・キング・コールのアルバム「アフター・ミッドナイト AFTER MIDNIGHT」を紹介します。1956年の録音。

ナット・キング・コール 「アフター・ミッドナイト」 やはりジャズシンガーとして知られるナタリー・コールの父親としても知られるナット・‘キング’・コール。
「モナリザ」、「LOVE」などの歌で知られ、ジャズのみならずポピュラーシンガーとしても大人気だったナット・キング・コールの、ジャズシンガーとしての代表作ともいうべきアルバムが「アフター・ミッドナイト」です。コールはヴォーカルとピアノを担当。

誰でも知っているような超有名曲は入っていませんが、それでもニュース番組のテーマソングにもなった「イッツ・オンリー・ア・ペイパームーン」、ジャズナンバーの定番「ルート66」など、聴けばあの曲かとわかるナンバーも収録。

渋みがあるのに朗らかという独特の歌声を持ったナット・キング・コール。どのナンバーも楽しそうに歌い上げており、聴いている側も幸福感に包まれます。

Nat King Cole/After Midnight Complete

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2007年11月22日 (木)

実相観入

眺める人生は高校で終えようと思ったのが、東京に出た最初の年のこと。一浪して大学に入った年のことだ。具体的に書くと1994年の春。

煙草や酒といった苦痛を和らげるものに手を染めないことに決めた。幸い、煙草は嫌いだったし、酒も飲めなかった。

作家の吉行淳之介は、自分の皮膚感覚しか信じなかったというが、そこまでいかなくても、自身の痛みと真っ向から向き合わねば、何もつかめないだろうという確信が私にもあった。

「実相観入」などという言葉を用いると格好良すぎるし、そんな大したものでもないのだが、私はあらゆる事柄を自分の内側を通して「感じる」ことに決めた。五感、もしくはそれ以上の何かを用いて、見、分け入り、多くの事柄に触れた。いうまでもなくそれは危険な行為で、私も多くの青年が陥ったのと同じ罠にはまることにもなった。自意識の相克、目に見えぬものを追う不確かさと湧き起こる不安、あらゆる欺瞞、陰、見えなくていいもの知らなくても良かったもの。

でもいいさ。なるようにしかならないんだもの。
眺める生き方は楽だ。自分についてだけ、あるいは他人についてだけ語っていればいい。でもそんなことに「私が私であること」、「私でしかあり得ないこと」の意義を見出すことは絶対にない。それは「絶対」を何度繰り返しても恥じないほど私にはわかっていたのだった。

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2007年11月20日 (火)

シベリウスの年に(22) レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック 「シベリウス交響曲全集」

レナード・バーンスタインが当時音楽監督を務めていたニューヨーク・フィルハーモニックとともに1960年代後半に完成させた「シベリウス交響曲全集」(ソニー・クラシカル)。

レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック 「シベリウス交響曲全集」 本国であるフィンランドとイギリスでは評価の高かったシベリウスの交響曲ですが、アメリカにその良さを積極的に広めたのがレナード・バーンスタインです。バーンスタインの師であるクーセヴィツキーがシベリウスと親交があったことも影響していると思われますが、バーンスタインは晩年にもウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と「シベリウス交響曲全集」を作ろうとした(結局、未完成)ことからも、バーンスタインがシベリウスの音楽に愛着を抱いていたことは間違いないと思われます。

ウィーン・フィルとの晩年のシベリウス演奏では、肥大化したスケールが音楽の良さを奪っている面がありますが、若き日に録音したニューヨーク・フィルハーモニックとの演奏ではスケールも適切であり、情感豊かな演奏を繰り広げています。

全集としては、「悪くない」というレベルに留まっている気がしますが、深刻な楽想とシベリウスの現代作曲家としての側面を的確に表現した交響曲第4番は優れた演奏。全曲に渡ってかちどきを挙げる交響曲第5番もユニークな演奏です。

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2007年11月19日 (月)

好きな短歌(25)

心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ 西行

いわゆる三夕(「秋の夕暮れ」で終わる三つの歌)の一つ。三夕の中では唯一、秋の夕暮れの美しさを歌った歌です。

「心なき身にはあはれは知られけり」は勿論謙遜です(本当はこんなことは書くまでもないのですが)。

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観劇公演パンフレット(18) 加藤健一事務所 「コミック・ポテンシャル」(再演)

加藤健一事務所の「コミック・ポテンシャル」は、初演時に購入したパンフレットも紹介しましたが、今年(2007年)行われた再演のパンフレットも紹介します。加藤健一の直筆サイン入り。2007年11月4日、京都府立府民ホールALTIにて購入。

加藤健一事務所 「コミック・ポテンシャル」(再演)パンフレット

英国の劇作家、アラン・エイクボーンの近未来コメディ。未来では、ドラマは生身の俳優ではなく、演じることを専門として製造されたアンドロイド=アクトロイドを用いて撮影が行われています。脚本も不要で、これまでに放送された膨大な量のドラマのシナリオと演出のデータをインプットされたアクトロイドが状況に応じて勝手に演じます。嫌な未来図の中で繰り広げられる、「ロミオとジュリエット」路線のドラマです。

加藤健一事務所 「コミック・ポテンシャル」(再演)の感想

午後6時30分より京都府立府民ホールALTIで、加藤健一事務所の「コミック・ポテンシャル」を観る。2004年に上演された舞台の再演。アラン・エイクボーン:作、小田島恒志:訳、加藤健一:演出&出演。出演は、加藤忍、蟹江一平、西山水木、辻親八、小山萌子、深貝大輔、横山利彦、横井伸明、はざまみゆき、枝元萌ほか。

前回の2004年の公演もALTIで観ているが、今回も面白かった。前回よりも内容がよく理解できた、というよりは前回はストーリーに注目しすぎ、話を私個人の視点から眺めすぎ、役個々の感情を十全に把握できていなかった。要するに深い理解は全く出来ていなかったのである。
もちろんコメディーだし、アンドロイドが出てくるし、サイバーパンク的な要素(人工知能や人工臓器の話も出てくる)もあるのだが、一番注目すべきは、人間の「エゴイズム」であることがわかった。

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2007年11月18日 (日)

ルドルフ・ゼルキン ベートーヴェン三大ピアノ・ソナタ+「テレーゼ」ソナタ

ルドルフ・ゼルキンのピアノによるベートーヴェン三大ピアノ・ソナタ(ピアノ・ソナタ第14番「月光」、同第23番「熱情」、同第8番「悲愴」)とピアノ・ソナタ第24番「テレーゼ」を収めたCDを紹介します。ソニー・クラシカル。

ルドルフ・ゼルキン ベートーヴェン三大ピアノ・ソナタ+「テレーゼ」ソナタ

20世紀を代表するピアニストで、ピーター・ゼルキン(ピーター・サーキン)の父親としても知られるルドルフ・ゼルキン(1903-1991)。

幼くしてピアニストとしての才能を認められ、12歳でデビューしたルドルフ・ゼルキンですが、他の多くの神童ピアニストとは異なり、レパートリーはドイツ・オーストリアものに集中していました。とにかく真面目で誠実なピアニストで、自分の個性よりも何よりも音楽に奉仕することを目標としてきたルドルフ・ゼルキン。

このCDにもそうしたルドルフ・ゼルキンの特徴がよく表れています。

楽譜通りに淡々と弾いているようでありながら、良く聴くと一つ一つの音に魂を込めるような丁寧な奏法であり、聴けば聴くほど独特の味わいが聴き手の耳に自然と染み込んでくるような、達人業を披露しています。

表現したいという欲望をぎりぎりのところで押さえ込み、音楽そのものを生かすという、大人の演奏ということも出来るでしょう。

ちなみに「テレーゼ」とは曲を献呈された女性の名前(テレーゼ・フォン・ブルンスヴィック)。「エリーゼのために」のエリーゼの正体とされるテレーゼさん(テレーゼ・フォン・ドロスティック。旧姓マルファッティ)とは同名ですが別の女性です。

ベートーヴェン/Piano Sonata.8 14 23 24: R.serkin

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2007年11月17日 (土)

金曜ナイトドラマ「トリック TRICK」 オリジナル・サウンドトラック

仲間由紀恵を一躍人気女優の座に押し上げたテレビドラマ「トリック」のオリジナル・サウンドトラックを紹介します。

金曜ナイトドラマ「トリック」 オリジナル・サウンドトラック 仲間由紀恵初主演作として今や知らぬもののないほどの有名ドラマである「トリック TRICK」ですが、放送前はさほど話題になっていませんでした。仲間由紀恵もそれまでは意地悪な役の多い地味な脇役女優でしかありませんでしたが、放送後、仲間由紀恵が演じた自称天才マジシャンの山田奈緒子と、日本科学技術大学助教授(のちに教授に昇進する)で自称天才物理学者の上田次郎(阿部寛)のボケボケコンビの絶妙のやりとりが受けて深夜ドラマとしては異例の高視聴率を稼ぎ、金曜ナイトドラマ最初のヒット作となりました。それまでは、「深夜枠はカルトなドラマをやる枠で視聴率なんて取れない」というのが常識でしたが、「トリック」のヒットにより、深夜ドラマが幅広い層に受けいれられていきます。

ドラマは説明はこれぐらいにして、辻陽が担当した音楽の方ですが、テーマ曲である「Mystic Antique」ではチェンバロやオルガンが使われるなど本格指向です。

主題歌であった「月光」(鬼束ちひろ)のピアノソロバージョンや、テレビバージョン(霧島澄子こと菅井きんの声入り)も収録。

放送時(2000年)、番組放映終了後に、オリジナル・サウンドトラック盤プレゼントの告知があったのですが、阿部寛が上田次郎のキャラクターそのままで出てきて、「『トリック』のオリジナル・サウンドトラックCDを五人にやる。俺はもう貰った。役得だ。なかなかいいぞ」とコメントして笑わせました。

Tv Soundtrack/トリック (HMV)

「トリック」オリジナル・サウンドトラック (タワーレコード)

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もののけ占い

「もののけ占い」なるものが人気検索キーワードの上位に来ています。テレビ番組か何かで紹介されたのでしょうか?

というわけでやってみました。

「もののけ占い」 http://www.scarabstudio.com/mononoke/mononoke.html

結果は、「ヴァンパイア」。へえ、というしかないな。そもそもヴァンパイアはもののけなのか?
しかし昨日書いた詩(某ページにアップ)は考えようによってはヴラド・ツェペシュしてますね。

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2007年11月16日 (金)

イビチャ・オシム日本サッカー代表監督 急性脳梗塞で入院

日本サッカー代表監督のイビチャ・オシム氏が、今日午前2時頃、千葉の自宅で倒れ、入院。脳梗塞と見られ、今も集中治療室(ICU)で治療を受けている。

今日、午後4時50分過ぎに、川淵三郎日本サッカー協会キャプテンが会見を行い、「ぜひ治って欲しい。命を取り留めて欲しい」と涙声で語った。病状は重いと思われる。

(16日午後5時30分時点での情報)

後記:ご存じの通り、イビチャ・オシム氏はその後順調な回復を遂げている。

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これまでに観た映画より(13) 「風の丘を越えて/西便制(ソピョンジェ)」

DVDで韓国映画「風の丘を越えて/西便制(ソピョンジェ)」を観る。1993年の作品。イム・グォンテク監督作品。
これは日本でもかなり話題になった作品で、私も日本でロードショー公開された時(1994年)に銀座テアトル西友(現・銀座テアトルシネマ)で観ている。韓国映画を観たのはその時が初めてだったと思うが大いに感銘を受けた。
韓国映画がまだ、「重い暗い」というイメージを持っていた頃の作品であり、やはり重く暗いが、秀作だ。

12年ぶりに見直してみて、画質が古いのに驚く。当時はそれほど気にならなかったのだが。最近の韓国映画の画質の向上のめざましさが却ってよくわかる。
韓国映画の画質が飛躍的に上がるのはこの直後、韓国が国策として映画とコンピューターゲームに力を入れてからである。

韓国の伝統歌謡パンソリ。唱劇とともに一時は隆盛を誇ったものの次第に廃れていく。「風の丘を越えて~」はそんな死にゆく芸術パンソリと、義理の親子愛、姉弟愛を描いた作品。「芸のためなら~」という芸人の愛と表裏一体の残酷さが胸に迫る。

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2007年11月15日 (木)

どうでもいいことですが プレイステーション3のCM

ソニーのプレイステーション3(プレステ3、PS3)、『やりたかったぞーラチェット&クランク FUTURE篇』のCMに、京都を代表する俳優である金替康博さん(MONO)と内田淳子さんが夫婦役で出ているのですが、なぜ京都に本社がある任天堂ではなく、ソニーのCMなんでしょう。あるいはそれがソニーの戦略なのかな?

PS World ムービーギャラリー テレビCM一覧

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瞬間湯沸かし器

「瞬間湯沸かし器」といってもいいほど短気な一面を私は持っています。しかし、そのそうしたことを知っている人はごくごく身内に限られています(「いました」というべきかな)。私は怒りを瞬間的に凍結させてしまうことも出来るので。

有名な諺がありますが、短気を起こしても損をすることが多い、それは怒ったときに人間は本質や、奇妙な思考を表に出してしまうからです。

短気な人は怒りをフリーズする術を身につけましょう。といって簡単に出来るなら苦労はしないのですが。
ただし、怒りを封じ込めるのは体にも心にも悪いです。出来るなら怒らないのが一番です。一番なんですけどね。

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矢口史靖×鈴木卓爾 「ONE PIECE」秋コレクション

矢口史靖監督と鈴木卓爾監督が作ったショートフィルム集「ONE PIECE」の秋コレクションを紹介します。

以前に、春コレクションを紹介しましたが、秋コレクションもやはり全て家庭用ビデオカメラを用いた、ワンカット、編集なし、アフレコなしのショートフィルム集。

矢口史靖×鈴木卓爾 「ONE PIECE」秋コレクション

出演は、自主制作映画の帝王、BOBAさんこと田中要次、自主制作映画の女王こと唯野未歩子(ただの・みあこ。ジャケットの女性が彼女です)ほか。

大地震後の部屋を描いた「二人ぽっちの惑星」(矢口史靖監督)、おそろしくシュールな「傘男」(鈴木卓爾監督)、これまた怖い「暗室」(矢口史靖監督)、女性の嫉妬心を描き、恐ろしい結末を迎える(?)「祝辞」(矢口史靖監督)、これまた別の意味で恐ろしい結末を迎える「社長の首」(鈴木卓爾監督)、河原で集団ダンスの練習をする中学教師の姿をコミカルかつシリアスに描いた「サウンドオブ中学教師」(鈴木卓爾監督)、のちに深津絵里主演のテレビドラマとしてリメイクされることになる「猫田さん」(矢口史靖監督)など、全14作品が収められています。

特典として、唯野未歩子が踊るエンディング映像と鈴木卓爾監督の短編映画「おっけっ毛ビビロボス」(出演:西田尚美、西牟田恵、猫田直、上野純子、阿部サダヲ、田中要次ほか)がついています。

軽い感じで撮られたものが多いので、観て、「あー、面白かった」と思う作品は少ないのですが、恋愛ものである「猫田さん」(主演の相川直はこの作品に出演したのをきっかけに猫田直に改名した)などはなかなかです。

ONE PIECE 秋コレクション

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2007年11月14日 (水)

沖縄のジミ・ヘンドリックス 登川誠仁「スピリチュアル ユニティ」

「沖縄のジミ・ヘンドリックス」、「沖縄音楽の神様」ともよばれる登川誠仁(のぼりかわ・せいじん)のアルバム「スピリチュアル ユニティ」(リスペクト・レコード)を紹介します。

登川誠仁 「スピリチュアル ユニティ」 登川誠仁は、1930年生まれ。11月12日生まれで、私と誕生日が一緒の有名人の一人です。

中江祐司監督の映画「ナビィの恋」の恵達おじぃ役で全国区になった登川誠仁ですが、沖縄では音楽の神様扱いで、中江祐司監督が京都出身者のヤマトンチュだからキャスティング出来た、つまりウチナンチュだったら畏れ多くて「映画に出て下さい」などとは言えないというほどの人です。

このアルバムを買ったのは、2002年4月20日、今はなき京都朝日シネマにおいて。その日、中江祐司監督の舞台挨拶つきで「ナビィの恋」が京都朝日シネマで上映され、その際に購入したものです、上映終了後に、中江監督のサイン会があり、他の人は映画のパンフレットにサインを貰っていましたが、私はすでに何度も「ナビィの恋」を観ており、パンフレットも持っていたので、登川誠仁おじぃのCDを買ってジャケットに中江監督のサインを貰いました。

「ナビィの恋」でも歌われる「くんじゃんジントーヨー」や「祝い節」、沖縄民謡「安里屋ユンタ(あさどやゆんた)」などを収録。

沖縄スピリッツに溢れる楽しいアルバムです。

登川誠仁/Spiritual Unity

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意識の流れは

単語の選び方一つで完全に読まれてしまうこともある。

だからご用心。人間はそれほど愚かではない。

自分がわかっていることは他人もわかっていると思った方がいい。だから自分は一歩でも先に行こうとする。そうした意識で丁度良い。

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2007年11月13日 (火)

稲尾和久の死

「鉄腕」、「神様、仏様、稲尾様」と呼ばれた名投手、稲尾和久氏が死去。70歳。

日本記録であり、今後も破られないと思われるシーズン42勝(ビクトル・スタルヒンとタイ記録)を始め、数々の記録を打ち立てた名投手、稲尾。

稲尾の持ち味はスピードではなく、抜群のコントロールとウイニングショットのスライダー。実際に稲尾のピッチングを見た人で、「稲尾は球が遅かった」と証言する人は何人もいます。

漁師の子として別府に生まれた稲尾和久は、少年時代から船の櫓を漕いでいました。左足を上げる際に軸足である右足の踵も上げて、つま先立ちになるというコントロールのぶれやすいピッチングフォームだったにも関わらず抜群の制球力を誇ったのは、少年時代から櫓を漕いだことで培われた足腰の強靱さにあったと思われます。また、船板一枚隔てて下は海で、死が待っているという感覚を少年時に抱いたという稲尾は、ピンチにも動じない精神力をも手に入れました。

スライダーのコントロールは抜群で、例しに、ブルペンで目を閉じたままアウトローのスライダーを投げ込んだところ、20球以上連続で捕手の構えたミットと寸分違わぬところに球が行ったと言われています。

なお、広島カープと巨人軍で活躍した川口和久氏と、東京ヤクルトスワローズの石井一久投手は、いずれも父親が稲尾和久のファンであったことから、「かずひさ」と命名されたそうです。

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2007年11月12日 (月)

石川セリ 武満徹「MI・YO・TA」

石川セリ 武満徹「MI・YO・TA」 1996年2月に亡くなった、現代日本を代表する作曲家・武満徹。武満の葬儀の日に、武満の盟友であった黛敏郎があるメロディーを口ずさみました。それは黛が武満と一緒に映画音楽の仕事をしていた時に武満が作曲しながら採用されなかったメロディーでした。その美しくも悲しいメロディーに谷川俊太郎が作詞して生まれた曲が「MI・YO・TA」。武満が仕事場を持っていた長野県北佐久郡御代田町に由来する曲名を持つこの歌を収めたのが本ミニアルバムです。

「MI・YO・TA」の他に、五木寛之原作の同名映画のために書かれ、作詞も五木寛之が担当した「燃える秋」、「翼 ~武満徹ポップ・ソングス」にも収録された「死んだ男の残したものは」を収録。

切々とした悲しみを持つ表題作「MI・YO・TA」が何といっても印象的。そのメロディーは武満が書いたものの中でも特別な美しさを持っています。

石川セリ/武満徹: Mi・yo・ta

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石川セリ 「翼」武満徹ポップ・ソングス

井上陽水の奥さんとしても知られる、歌手の石川セリが現代日本を代表する作曲家・武満徹(1930-1996)のポップソングと歌ったアルバム「翼 ~武満徹ポップ・ソングス」(DENON)を紹介します。1995年リリース。

石川セリ 「翼」武満徹ポップ・ソングス

タケミツ・トーンと呼ばれた独特の響きを生み出し、全世界の音楽家に影響を与えた武満徹。しかし武満が本当になりたかったのはメロディーメーカーであり、「ポール・マッカートニーのような作曲家になりたい」と生前よく話していたと言います。

このアルバムは武満側から石川セリにオファーがあって制作されたもので、映画などのために武満が作ったポップソングが収録されています。
服部隆之、コシミハル、羽田健太郎、小林靖宏(coba)など、武満が認めた音楽家がアレンジを担当。

ベトナム反戦歌として知られる「死んだ男の残したものは」、映画のために書かれた「めぐり逢い」、「見えないこども」、演劇のために作曲された表題作「翼」などを収録。

武満本人は自身のメロディーメーカーとしての才能に不満があり、また実際メロディーだけ取り上げれば素朴で時代に馴染んでいない印象を受けますが、アレンジと石川セリの歌声により、楽しいアルバムに仕上がっています。

石川セリ/武満徹ポップ ソングス

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2007年11月11日 (日)

毎日がスペシャル

竹内まりやの曲に「毎日がスペシャル」というものがあります。良い歌です。歌詞もメロディーも良い。
ラッキーでなくても(「例え優等生じゃなくても人気者じゃなくてもナイスなバディじゃなくてもね」)心の持ち方一つで毎日が楽しくなるという内容の歌です(でも、どうでもいいことかも知れませんが、竹内まりやさんって若い頃から優等生で人気者でナイスなバディですよね)。

「今日も人生の一日なり」という言葉もありますが、毎日がスペシャルという感覚で生きてみるのも「たまには」いいかも知れません。同じ日などもう二度と来ないのですから。

ただ本当に毎日、「今日もスペシャルだ」という風に感覚を鋭敏にしすぎていると本当に本物のスペシャルに対する感性が鈍ってしまうかも知れません。それにいつもハイテンションの人と一緒にいるようで、酷く疲れそうです。
「なんだ今日もスペシャルかよ。たまには普通がいいよ」と思うようになるかも知れません。

ハレはケがあってこそ楽しいもの。何事もほどほどが良いのかも知れません。

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コンサートの記(3) フレディ・ケンプ ピアノリサイタル2006 オール・ベートーヴェン・プログラム

2006年4月2日 大阪のザ・シンフォニーホールにて

ザ・シンフォニーホールで、フレディ・ケンプのピアノリサイタルを聴く。
フレディ・ケンプは1977年ロンドン生まれの若手ピアニスト。母親は日本人である。クラシックに詳しい人はピンと来るかも知れないが、その通り、ドイツの往年の名ピアニスト、ヴィルヘルム・ケンプの遠縁に当たる人だ。しかし本人はそのことに触れられるのを好まないという。それはそうだろう。フレディ・ケンプ個人として見られずに、ヴィルヘルム・ケンプの遠縁のピアニストという目で見られたのではたまったものでない。

オール・ベートーヴェン・プログラムで、ピアノ・ソナタ第14番「月光」、同第23番「熱情」、同第29番「ハンマークラヴィア」の3曲が演奏された。

フレディ・ケンプの演奏の特徴は、何といっても強靭なタッチにある。フォルテシモの威力は凄まじく、シンフォニーホールの天井が軋むのではないかというほどである(実は実際に軋んでいた)。
テクニックも抜群であり、「月光」の第3楽章や、「熱情」の第1楽章は快速テンポで鮮やかに駆け抜ける。ケンプ本人は嫌がる表現かも知れないが、まさにサラブレッドの音楽だ。しかもただのサラブレッドではない駿馬の音楽である。

逆に緩徐楽章、例えば「月光ソナタ」の第1楽章などはじっくりとしたテンポで弾くが、まだ深い味わいに乏しい。もっとも20代で深みを出されたらそれはそれで将来が心配になる。

強弱の付け方が単調なのも気になったが、若々しいピアニズムはそれを補って余りある。

アンコールはショパンのピアノ・ソナタ第3番から第4楽章、同じくショパンの「12の練習曲作品25」より第1番、ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』より「バーバ・ヤーガの小屋」、「キエフの大門」の2曲。
ムソルグスキーが快演であった。最新鋭の兵器を連想させるような精度と威力、表現力の多彩さ、スケールの大きさ。将来が楽しみなピアニストである。

日曜のマチネーということもあってか、フレディ・ケンプの知名度の割りには客の入りは良くなかったが、演奏後の拍手は盛大で、満員の観客が平凡な演奏に対して送る拍手よりもはるかに大きな音がホール中に鳴り響いた。

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2007年11月10日 (土)

名古屋フィルのプログラムはいいな

9月にハンヌ・リントゥの指揮する名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏を聴きに行きました。シベリウスの交響曲第6番という滅多にプログラムに載らない曲が演奏されるからですが、入り口で渡されたパンフレットに載っていた名古屋フィルの定期公演プログラムの充実ぶりを見て感嘆しました。
「いいな、羨ましい」

名古屋フィルのホームページでも確認できますが、

http://www.nagoya-phil.or.jp/P0401.html

珍しい曲目が並んでいます。リントゥが指揮した回のパンフレットには、広上淳一が名古屋フィルの7月定期で指揮台に立ったとき(余談だが広上は以前に名古屋フィルの副指揮者をしていたことがある)のレポートが出ていたのですが、後半のプログラムは何とブラームスの「ハンガリー舞曲集」全曲。広上さんは指揮台の上で踊りまくったらしい。

広上は来年から京都市交響楽団の常任指揮者になるので、京都でも同じような意欲的なプログラムを組んで欲しいのですが、どこかから横槍が入りそうな……。
京都市交響楽団は名前が示すとおり、京都市のオーケストラ。民間のオーケストラより財源は安定しているので、冒険をしやすいはずなのですが、そういうところに限って……。

というわけで、名古屋フィルのプログラムを見てため息をつくばかりなのでした。

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とらわれということ

誰に強制されたのでもなく、教えられたわけでもないのに、強迫的に守らなければ気が済まないことがあるのはなぜなのだろう。

そうしたとらわれから自由になれたらもっと自己の幅は拡がるのだろうか、あるいは無意識の自制がとらわれの正体であり、それを破るともっと不自由になるのだろうか。

とらわれの代表的な例が「縁起担ぎ」である。平安時代の「方違え」のような大仰なものから、ちょっとした習慣まで、こうでなくては気が済まないと、自分自身にとらえられ、行動は制限される。しかしそれを取り払ったときに、自由が待っているとは限らないのである。

強迫的なとらわれは自己防衛反応の一種だともいわれ、アメリカではそうしたとらわれを「プロテクト」として捉えることもあるという。

あるいはそうした強迫的な観念は自己の境界であり、それを破ると自己は自己であることに耐えきれなくなるのかも知れないが、そうした自制のためにしなくてもいいことをしたり、しなくてはいけないことまで出来なくなることもある。

自己は自己からも自由ではないということなのか。

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観劇感想精選(21) 『死のバリエーション』

2007年6月6日 兵庫県立芸術文化センター中ホールにて観劇

西宮にある兵庫県立芸術文化センター中ホールで、ヨン・フォッセ作(翻訳:長島確。ながしま・かく)、アントワーヌ・コーベ演出の舞台『死のバリエーション』を観る。出演は、長塚京三、高橋惠子、伊勢佳世、瀬川亮、杵鞭麻衣(きねむち・まい)、笠木誠。

ヨン・フォッセは1959年生まれのノルウェーの劇作家、小説家、詩人。視座の移動する独特のセリフを特徴とし、「21世紀のベケット」、「イプセンの再来」などと呼ばれ、注目を集めている。
作風は難解とされ、一部からは「21世紀にベケットはいらない」などと評されてもいる。
ただ、『死のバリエーション』のストーリー自体はシンプルであり、把握は全く困難ではない。

薄明、役者の姿が朧気に見える程度の照明の中で舞台は始まる。
年をとった男(長塚京三)と、彼と元夫婦だった年をとった女(高橋惠子)が、海で死んだ娘(杵鞭麻衣)のことを回想する。彼らの背後には娘が「友達」と呼んだ男(笠木誠)。
照明が徐々に明るくなり、若い男(瀬川亮)と娘を身籠もった若い女(伊勢佳世)が現れる。年取った男と年取った女の過去の姿だ。
そして娘が現れ、「友達」と戯れ始める…。

悪い演劇ではなかった。難解といわれるヨン・フォッセの戯曲だが、それは展開の手順が独特なだけであり、理解不能なことが描かれているわけではない。題材はむしろ身近なものが選ばれており、静かな感動は観客の心に水のようにひっそりと染みこみ、満たしていく。

ただ、演出にはいくつか疑問がある。若い男と若い女の演技にはもっと抑制が必要なのではないか。年を取った男と年を取った女、そして若い男と若い女を対比させるために、若い二人にはよりナチュラルな演技を求めたのかも知れないが、セリフと演技がマッチしていない。フォッセの戯曲は、観客がイメージ補正をしながら観る必要があるので、私は若い二人の演技も頭の中で補正しながら観たが、出来れば演技はイメージ補正しないで観たい。
若い二人は娘を授かるが、男は別に好きな女が出来て、妻と娘から去っていく。この過程をナチュラルに近い演技でやると、卑俗な印象を受ける。
もっとも、最後まで観ると、その卑俗な部分が暗いストーリー展開の中にあって仄かな明かりのように浮かび上がる仕掛けにはなっている。印象にも残る。優れているようにも思う。しかし果たしてそうした仕掛けが必要なのかどうか。
モノトーンの演出を行えば、もっと違った感銘が得られたと思う。この手の戯曲を扱うときは、「わかりやすくしよう」、「面白くしよう」という演出意図が逆に観客に本質を見失わせる危険性もあるのではないか。

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2007年11月 8日 (木)

「STRIKE UP THE BAND!」

NAXOSから出ているマーチ名曲集「STRIKE UP THE BAND! ストライク・アップ・ザ・バンド」を紹介します。スウェーデン王立空軍軍楽隊の演奏。指揮はイェルケル・ユーハンソン。

「ストライク・アップ・ザ・バンド」(マーチ名曲集) 表題作であるガーシュウィン作曲の「ストライク・アップ・ザ・バンド(楽隊を始めろ)」を始め、運動会のBGMとしておなじみの、J・F・ワーグナー作曲「双頭の鷲の旗の下に」、ツィマーマン(ジンマーマン)の「錨を上げて」、タイケの「旧友」、「クワイ河マーチ」原曲である「ボギー大佐」、パレードなどでよく用いられるフチーク作曲「剣士の入場」、『ヒッチコック劇場』のテーマ曲の原曲であるグノーの「操り人形の葬送行進曲」、シューベルトの「軍隊行進曲」の吹奏楽編曲版、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団がワルトビューネで行うピクニックコンサートのラストで演奏されるリンケの「ベルリンの風」などを収録。

とにかく楽しい曲が次から次へと出てきて、元気とやる気と勇気を貰えること請け合いのアルバムです。

*brass&wind Ensemble* Classical/Strike Up The Band!: J.johansson / Band Of The Royal Swedish Air For

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2007年11月 6日 (火)

坂本龍一ファーストアルバム 「千のナイフ」

坂本龍一のファーストアルバムである「千のナイフ」を紹介します。1978年リリース。YMO参加前の作品です。

坂本龍一 「千のナイフ」 全編シンセサイザーを取り入れた日本初のアルバム。坂本本人はこの時はまだ現代音楽指向が強く、このアルバムも完全なポピュラー作品とは位置づけていなかったようです。

ライナーには坂本本人による小難しい(だけの?)メッセージや、現代音楽の作曲家・林光による推薦文、直後にともにYMOを結成することになる細野晴臣による賛辞が寄せられています。

セッションには細野晴臣、渡辺香津美、高橋悠治、山下達郎らが参加。コンピュータオペレーション&シンセサイザープログラマーとして参加しているのは、のちにYMOのコンピュータ部門全般を担当することになる松武秀樹。

のち坂本は、ファーストアルバム「千のアルバム」をスタジオに籠もって作っている時に、「世界に向けて発信している感覚はすでにあった」と回想しています。

今もなお坂本の代表作の一曲とされる表題作「千のナイフ」のほか、「アイランド・オブ・ウッズ」、「グラスホッパー」、「ダス・ノイエ・ジャパニッシェ・エレクトロニッシュ・フォルクスリート」、「プラスティック・バンブー」、のちにYMOによってパロディー(街道もの)化される「ジ・エンド・オブ・エイシャ」の全6曲を収録。

坂本龍一/千のナイフ (Ltd)(Pps)

坂本龍一

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観劇感想精選(20) 北区つかこうへい劇団「つかこうへい二本立て」(「ヒモの話」、黒谷友香エンドレス「売春捜査官 ─女子アナ残酷物語」)

2007年7月24日 大阪・なんばのワッハ上方ワッハホールにて観劇

大阪へ。午後6時30分よりワッハ上方ワッハホールで、北区つかこうへい劇団の「つかこうへい2本立て」、第1部・三浦祐介一人芝居『ヒモのはなし』(作:つかこうへい、構成・演出:蓮見正幸)、第2部・黒谷友香エンドレス『熱海殺人事件 ─売春捜査官』改め『売春捜査官 ─女子アナ残酷物語』(作・演出:つかこうへい)を観る。

『ヒモのはなし』は、ヒモの男(三浦祐介)による語り物。状況からセリフから全て語るスタイルだ。ヒモとストリッパーの同棲生活、他に何の仕事も出来ない駄目な男女の話なのだが、男の一途な愛に心打たれる。キレイな話ではないのだが、こういうのが本当の純愛だよなと思う。


黒谷友香エンドレス『売春捜査官 ─女子アナ残酷物語』は、おなじみ『熱海殺人事件』のニューバージョン。木村伝兵衛部長刑事を演じるのはもちろん黒谷友香。木村伝兵衛という名前でタキシードを着ているが女性という設定である。出演は他に、赤塚篤紀、及川以造、逸見輝羊、吉田学、杉山圭一、小川智之。

木村伝兵衛部長刑事は、趣味で売春をやっている。そんな木村伝兵衛が手がける今回の事件は、大山金太郎(逸見輝羊)という男が幼なじみの山口アイ子という女性を熱海で絞め殺したという事件。その熱海殺人事件の謎と、長崎で起こった原発事故に関与している某重要人物(実は木村伝兵衛の祖父)の陰謀に木村伝兵衛は立ち向かう。

長崎・五島列島出身の大山金太郎は、右手にケロイドがある。五島に出来た長崎原発の臨界事故で、冷却水を抜く仕事をしたのが大山金太郎であり、大山はその時に被爆したのだった。被爆した大山は東大病院にヘリで輸送される。実は、日本政府は原爆を作るのに適当な放射能の数値を大山の体を調べることで割り出そうとしていた……。

『熱海殺人事件』を観るのは5年ぶり。前回観たバージョンは、『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』であった(木村伝兵衛部長を演じたのは阿部寛。水野朋子婦人警官を内田有紀が演じた。於・シアター・ドラマシティ)。

『熱海殺人事件』の最新バージョンである『売春捜査官 ─女子アナ残酷物語』でも例によって差別用語が飛び交い、時事ネタを含めた毒のあるセリフが放たれる。
黒谷友香のセリフは、ここまで長いかというほど長い。
差別的な単語も数多く出てくるが、それらは差別したいから書かれた(正確に言うと書かれたのではなく、つかこうへいの口立てで生まれた)セリフではなく、差別を行うことの卑しさを告発するべく発せられるものだ。
容姿が劣るため、「女子アナ養成所」という名の売春宿でコケという最下級の仕事をしていた山口アイ子を木村伝兵衛は罵倒する。それに対して木村伝兵衛のかっての恋人であった熊田留吉刑事(赤塚篤紀)は、「全員があんたみたいな美人じゃないんだ。コケをやるしかない女だっているんだよ」と痛罵するのである。

黒谷友香は長身であり、木村伝兵衛役も絵になる。

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2007年11月 4日 (日)

私選 プロ野球・記憶に残る名勝負(1) 落合博満 VS斎藤雅樹逆転サヨナラ3ラン

三冠王に三度輝いた史上唯一のバッターで、「史上最強の右打者」と呼ばれた落合博満(ロッテ→中日→巨人→日本ハム)。中日ドラゴンズを日本一に導いたことで監督としての評価も高まっていますが、そんな落合の現役時代において、最も私の記憶に鮮明に残っているのは、中日ドラゴンズ時代の1989年8月12日、ナゴヤ球場で行われた対巨人戦での一打です。

巨人の先発は「平成の大エース」と呼ばれることになるサイドスローの斎藤雅樹。巨人が3-0でリード。斎藤は9回1アウトまで中日打線に1本のヒットも許さず、このままノーヒットノーラン達成かと思われました。斎藤の夢は中日の左バッター音重鎮(おと・しげき)のヒットで砕かれるのですが、その後もランナーを許し、1点を失ったところで打席に落合を迎えます。ここで落合は右中間に逆転サヨナラスリーランホームランを打ち込みます。マウンド上で唖然呆然とする斎藤を尻目に悠々とダイヤモンドを一周する落合。勝負の恐さを思い知らされた一打でした。

その試合のドキュメンタリー(YouTubeより)

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2007年11月 2日 (金)

第九あれこれ 2007 その1 ルツェルンの第九

永遠の第九といわれるフルトヴェングラーのバイロイト盤(EMI)。最近になってバイエルン放送所蔵のバイロイトライブ録音がフルトヴェングラー・センターからCD化され、演奏の内容がEMI盤と異なっていたため物議を醸しました。「どちらが本物のライブなのか?」、「どちらかはゲネプロの録音なのか?」、「どちらかは継ぎ接ぎ盤なのか?」など、様々な憶測が飛び交っています。

フルトヴェングラーのバイロイトの第九は昨年紹介したので、今年はルツェルンの第九を紹介します。ルツェルンの第九は同じ音源のものが複数のレーベルから出ていますが、今日紹介するのはイギリスの復刻盤レーベル・アーチペルから出ている、フルトヴェングラー指揮のライブ音源を集めた「ベートーヴェン交響曲全集」に含まれているものです。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 「ベートーヴェン交響曲全集」 英アーチペル盤 第九はルツェルンの第九を採用

1954年(中日ドラゴンズの前回優勝の年である)8月22日、スイスのルツェルンにおけるライブ録音。オーケストラはロンドンを本拠地とするフィルハーモニア管弦楽団、合唱はルツェルン祝祭合唱団、ソリストはソプラノにエリザーベト・シュヴァルツコップ、テノールにエルンスト・ヘフリガーという名歌手を配しています。

この演奏の約3ヶ月後に亡くなるフルトヴェングラーはこの時すでに難聴がかなり進行しており、体調も万全ではありませんでした。しかしそうしたハンディを乗り越えようという気概に満ちた演奏であり、バイロイト盤とともに最も優れた第九の演奏に数えられると思います。

録音は当然ながらモノラルですが大変鮮明。名手を集めた当時のフィルハーモニア管弦楽団の合奏力も聞きものです。

フルトヴェングラーの指揮は体調の不良もあってバイロイト盤に比べると当然ながら安全運転ですが、その分、情熱に任せない安定感があります。フルトヴェングラーを聴くならバイロイト盤ですが、第九自体を楽しみたいならむしろこのルツェルン盤の方が目的に適っているかも知れません。

ベートーヴェン/Comp.symphonies: Furtwangler / Various Orchestra

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2007年11月 1日 (木)

中日ドラゴンズ53年ぶりの日本一

2007年の日本シリーズは第5戦も中日ドラゴンズが勝ち、4勝1敗で日本一に輝く。
第5戦は先発の山井が8回をパーフェクトピッチング、更にリリーフエースの岩瀬も9回を3人で抑え、北海道日本ファイターズ打線を完全に抑えての勝利である。

53年前(1954年)、中日ドラゴンズが日本一になったときの監督は天知俊一、エースは杉下茂(ともに明治大学出身。以降、ドラゴンズは明大閥が続く)であった。なお、俳優の天知茂(1931-1985)は名古屋出身であり、天知俊一と杉下茂から苗字と名前を取って芸名とした。

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