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2007年12月29日 (土)

観劇感想精選(24) 燐光群 「フィリピン ベッドタイム ストーリーズ 2007」

2007年2月9日 兵庫県伊丹市のAIホールにて観劇

伊丹へ。AIホールで、燐光群とフィリピンの俳優陣による公演「フィリピン ベッドタイム ストーリーズ 2007」を観る。5本の脚本による6話オムニバス。フィリピンの作家(ラリー・ブーコイ、ビック・トレス、ロディ・ヴェラ、レネ・ヴィラヌエヴァ)の脚本と内田春菊の脚本を使用。演出:吉田智久、テキスト日本語訳:珍田真弓&桑山沙衣子、芸術監督・日本語版上演台本:坂手洋二。
ヤング・ニナガワ・カンパニー(蜷川スタジオ)出身で、数々の舞台で活躍する宮本裕子が客演するのも見所の一つ。

タガログ語、英語、日本語による上演。タガログ語と英語のセリフは舞台下手(向かって左側のことです)に設置されたモニターに字幕スーパーが出る。ただ、字幕と俳優の演技を同時に観るのは難しく、英語のセリフは耳でも何となくわかるが、タガログ語のセリフの時は、モニターを凝視して訳を全部頭に入れてから俳優の演技を観るようにしないといけない。

フィリピンの戯曲は総じて、ストーリーテリングの手法が徹底していて、ほぼ全ての思考がセリフで語られ、語り手が誰で、相手が誰で、今何をしていて、ということまで語られる。リアリズムからは遠いが、わかりやすいのでこれでいいのだろう。作劇法に絶対などない。日本の作劇法が世界的に高い水準にあるわけでもない。そうしたことはこうした劇を観なければわからない。

6話全てが面白かった。とはいえ、私の心に一番フィットしたのは内田春菊の作品だったので、自分のメンタリティーはやはり日本的なのかと再確認することにもなった。

フィリピンの戯曲は、代理母や貧しい物売りによる殺人など、日本では扱いにくい題材を取り上げているのが面白い。また現代神話のようでもあり、ホラーの趣もある「アスワン~フィリピン吸血鬼の誕生~」は、出演者がストーリーを語るAバージョン(主役のアスワンを演じたのは宮本裕子)とコロスがストーリーを歌うBバージョン(アスワンを演じたのはアンジェリ・バヤニ)の2バージョンで上演された。コロスというギリシャ悲劇に用いられる手法を使ったBバージョンが現代劇的で(作者で出演もしていたロディ・ヴェラは「ミュージカルのような演出」と語っていた)、小劇場的な演出法によるAバージョンのセリフがギリシャ悲劇のそれのように聞こえるという逆転現象を感じたのも興味深い。

内田春菊の「フィリピンパブで幸せを」はコメディー。主役を演じるマイレス・カナピは達者な日本語によるセリフを披露(アフタートークで語っていたが、音を中心に記憶していて、日本語のセリフの全ての意味がわかっているわけではないとのことだった)。感心してしまう。

演劇に限らず、音楽でも美術でも日本人は欧米(更に限定すると西欧とアメリカ)の方ばかり向いてしまうが、もっとアジアやその他の地域の文化にも目を向けた方が良いと思う。何でもかんでも欧米が頂点にあるというのは幻想に過ぎないのだし。

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