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2008年1月27日 (日)

観劇公演パンフレット(23) マキノノゾミ演出「かもめ」

演劇好きなら知らぬ者のいないというほどの名作、アントン・チェーホフの「かもめ」。
2002年1月にマキノノゾミ演出で行われた「かもめ」の公演のパンフレットを紹介します。会場である新国立劇場小劇場にて購入。

マキノノゾミ演出「かもめ」パンフレット

東京・初台にある新国立劇場で行われた「シリーズ/チェーホフ・魂の仕事」の劈頭を飾る公演でした。出演は、三田和代(アルカージナ)、田中美里(ニーナ)、北村有起哉(トレープレフ)、益岡徹(トリゴーリン)、洪仁順(マーシャ)、坂本あきら(シャムラーエフ)、山野史人(ソーリン)、奥田達士(メドヴェジェンコ)、塩田朋子(ポリーナ)、なべきよしお(ヤーコフ)、鶴田忍(ドーリン)ほか。

テキストは、『コペンハーゲン』、『ノイズ・オフ(ノイゼズ・オフ)』などの戯曲で知られる、イギリスの演劇人、マイケル・フレインが英訳したテキストからの又訳を使用しています。日本語訳:小田島雄志。マイケル・フレイン&小田島雄志による『かもめ』は白水社から出版されています。

パンフレットには、マキノノゾミへのインタビュー、サンクトペテルブルクの演劇事情、「かもめ」初演大失敗に関する考察などが載っています。

田中美里のニーナ、北村有起哉のトレープレフがフレッシュで良い味わいの舞台でしたが、演出には若干の疑問もありました。

トレープレフという人物はいかにも芸術家肌で、嘘つきといいますか、なかなか本当のことを言いません。それを上手く把握していないと、「かもめ」の舞台は奥行きが出ないものになってしまいます。

ニーナも嘘をつきます。ニーナがついた最大の嘘は、ラストのトレープレフとの二人のシーンで語られる、「わたし、あの人(トリゴーリン)をまだ愛しているの」という言葉でしょう。これは嘘です。ある言葉を言い換えたものです。トレープレフを傷つけないように、それでいて本当に言いたいこともわかるようについた嘘です。トレープレフにもその嘘は察せられたことでしょう。

というわけで、ラストのトレープレフとニーナのシーンは心理的に非常にスリリングな場面です(ニーナが、何故トレープレフが劇作家でなく小説家になることを選んだのか全く理解していなかったということがわかる苦い可笑し味のある場面でもあるのですが)。

トレープレフとニーナの嘘がわからない人は、「かもめ」を観ても面白いとは思えないだろう、と私などは感じてしまうのですが、どうなのでしょう。

最後に解決されない謎が一つ。トレープレフはペンネームを使って小説を発表しています。しかしそのペンネームが劇中で明かされることは遂にありません。ただ確実なことが一つ。そのペンネームは、他の誰にもわからなくても、ニーナにだけは立ちどころに作者の正体がわかるものだったことは間違いないと思われます。

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