金聖響+玉木正之 『ベートーヴェンの交響曲』
講談社現代新書から出ている『ベートーヴェンの交響曲』を紹介します。1970年生まれの指揮者、金聖響(きむ・せいきょう)と玉木正之の共著。ですが、玉木正之は巻頭と巻末に金聖響との対談を行っているだけで、実質的には金聖響一人で書いた本です。
金聖響は大阪府池田市生まれ。在日韓国人三世です(特に関係はないですが、ベートーヴェンはオランダからのドイツ移民三世)。父親は大阪大学に学んだ物理学博士。母親は京都市立芸術大学声楽科の出身。
父親がアメリカの大学と企業での研究を行うことになったことと、「教育は日本よりもアメリカで受けさせたい」という両親の希望により14歳で渡米(日本でもインターナショナルスクールで学んでいたそうですが)。金聖響自身は子供の頃から音楽に興味を持っていましたが、「音楽家になるなんてとんでもない」という両親の反対もあり(聖響という名前は音楽とは関係がないそうです)、まずボストン大学の哲学科で学び、学士号を得て、両親を納得させ、その上でニューイングランド音楽院修士課程と、ウィーン国立音楽アカデミーで指揮を学びました。
夫人は女優のミムラさん。それ以前にも……、あ、これは別にいいですね。
金聖響はこの本で、ベートーヴェン交響曲、全9曲についての解説を行っています(彼は「解釈」という言葉が嫌いだそうなので、解説と書くことにします)。文章は口語調で読みやすく、本人曰く、「ベートーヴェンの交響曲ともっと親しくなりたい」という人のために書いたものだけに、深い音楽的知識がなくても楽しめるものになっています。
金聖響は、ピリオド・アプローチを積極的に行っている指揮者で、大指揮者の時代の「常識」を洗い直すという試みをこの本でも行っています。
文章にちょっとしたミスや、校正の間違い、金聖響の勘違い?(マーラーの交響曲第9番に関する下りなど)などもありますが、ベートーヴェンの交響曲をより身近に、より深く理解出来るようになるという、本書の目的は間違いなく達成されています。
巻末に、ベートーヴェン年譜つき。
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