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2008年2月 7日 (木)

観劇公演パンフレット(24) 「ビューティ・クィーン・オブ・リナーン」

「ビューティ・クィーン・オブ・リナーン」の公演パンフレットを紹介します。2008年1月4日、大阪・茶屋町のシアター・ドラマシティにて購入。
マーティン・マクドナー作、長塚圭史演出の公演です。
出演、大竹しのぶ、白石加代子、田中哲司、長塚圭史。

「ビューティ・クィーン・オブ・リナーン」公演パンフレット

パンフレットには、舞台となったリナーン(現地の発音により近い表記は「リーナン」)についての説明、アイルランド系イギリス人である作者のマーティン・マクドナーとアイルランド演劇について、「ビューティ・クィーン・オブ・リナーン」をより深く理解するための用語集、写真家の藤原新也によるアイルランド旅行のエッセイなどが載っています。

 

「ビューティ・クィーン・オブ・リナーン」概要と感想

午後7時より、シアター・ドラマシティで、「ビューティ・クィーン・オブ・リナーン」を観る。「ウィー・トーマス」で知られるイギリスのアイルランド系劇作家、マーティン・マクドナーの戯曲を、やはり「ウィー・トーマス」の長塚圭史(阿佐ヶ谷スパイダース)が演出。テキスト日本語訳:目黒条。
出演者は、大竹しのぶ、白石加代子、田中哲司、長塚圭史の4人だが、モーリーンを演じる大竹しのぶとマグを演じる白石加代子の2人が大きな比重を占め、男優2人の役はそれほど大きくはない。

マクドナーの戯曲で、タイトルが「ビューティ・クィーン・オブ・リナーン」とあっては、どう考えても陰惨な芝居である。また実際そうなのだが、ラストは暗さや惨めさもさることながら、寂しさが勝っているようにも見えた。

ストーリーは比較的単純で、新鮮味にも欠けるが、それだけに役者の腕がものをいうタイプの芝居である。

アイルランド、ゴールウェイ州の片田舎であるリナーンの丘の上にある家にマグ(白石加代子)とモーリーン(大竹しのぶ)の母娘が住んでいる。マグというの がまた偏屈な老女で、娘のモーリーンに歪んだ愛情を抱いており、結婚もさせず恋愛も御法度で家に置いたまま侍女か何かのように使う。ほとんど一日中肘掛け 椅子に座ったまま、娘に「あれをしろ」、「これをしろ」とうるさいマグ。モーリーンもそんな母親を苦々しく思っており、喧嘩が絶えない。

劇が始まってすぐに激しい母娘喧嘩が始まり、それが延々と続く。母親が娘を犬に対してするように罵れば、娘も母親に虐待まがいのことをする。異常な母娘関係である。

かっては「リナーン一の美女(ビューティ・クィーン・オブ・リナーン)」と呼ばれたこともあるモーリーンは、25歳の時にロンドンに出て掃除婦の仕事をし たことがあるが、ロンドンではアイリッシュは差別の対象であり、イギリス人に散々いじめられて、精神病院に入院した過去があった。以来、40歳になるこの 歳まで、モーリーンはリナーンに引っ込んだまま、母親の世話をしている。モーリーンも母を捨てて家を出たいと思っているのだが、出たところで、アイルラン ド人、それも英語ではなくアイルランド語しか自由に操れないモーリーンは、イギリスに行ってもアメリカに行っても未来が拓けないことは目に見えていた。
そんなある日、近くに住むレイ(長塚圭史)の兄で、今はロンドンの建設現場で働いているパト(田中哲司)が久しぶりにリナーンに帰ってくることになる。それを知ったモーリーンは心を躍らせるのだったが……。

大竹しのぶと白石加代子という二人の名優のぶつかり合いが見物の劇。ほとんど座ったままでありながら迫力満点の演技をする白石加代子も凄いが、様々な心理 状態を巧みに演じ分けてみせる大竹しのぶの妙技にも舌を巻く。どんな演技でくるかはだいたい予想出来るのだが、予想通りであってもこちらを納得させてしま う技量は流石である。

アイルランドが、「みんな出て行ってしまう場所」、「通過する場所」、「働き口がないので居続けたくてもいられない場所」、「景色は美しいが牢獄ような場 所」として描かれているが、私が生まれた千葉にしろ、今住んでいる京都にしろ、そうした要素は多分にある土地である。また「たとえ好きでなくてもアメリカ に頼らなければやっていけない国」としてはアイルランドは日本に通ずるものがある。それだけに遠い異国であるアイルランドでの話が、我がことのように痛切 に胸に響いた。

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