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2008年4月 7日 (月)

矢島裕紀彦 野球花伝書vol.2『山田久志 投げる』(小学館文庫)

阪急ブレーブスのサブマリンエースとして通算284勝を挙げた山田久志。
野球花伝書vol.2『山田久志 投げる』(小学館文庫)は、その山田久志の投球の秘技に矢島裕紀彦がインタビューを通して迫った一冊。

矢島裕紀彦 『山田久志 投げる』 まず、タイトルが良い。『山田久志 投げる』。直球勝負で格好いい。もっとも、これは山田久志がプロのピッチャーだったからで、例えば、『安倍晋三 投げる』だったら別の意味が出てしまって格好悪くなるのだが。

そんなことはどうでもいいとして、通算284勝を挙げたピッチャーの投球に関する奥義はやはり興味深い。

まずは、山田個人が何故にアンダースローを選んだのか、アンダースローの好投手が少ないのは何故か、から始まり(山田は背が低く、ただバネがあったので、高校の頃にアンダースローにするよう監督に言われたのだという。山田自身は高校時代は野手で、送球の時に、下から投げると良い球が行くということは自覚していたようだ。アンダースローのピッチャーが少ないのは指導できる人がアマチュアに少ないというのが本当のところのようである)、速球派であった山田が、交わすピッチングを憶えてからのこと、バッターとの駆け引き、連打される時はどういう心理状態なのかについてにまで山田は語っていく。

やはりプロでも一流になるピッチャーとは凄いもので、山田は、試合後も自分がその日投げた球を全て記憶していて、帰り道に思い出しては、どうすべきだったかを考えていたとのこと(おかげで、信号が青になったのに気付かず、後ろの車からクラクションを鳴らされることがしょっちゅうだったという)。また次の登板までも、どういう投球をするか常にイメージトレーニングを行っており、ストライクを取りに行って取れた場合と取れなかった場合を考え、何球目で勝負するかといった、あらゆるパターンを想定するという。それでもバッターとの読みに負ける場合は往々にしてあり、そういう場合は、自軍のバッターにどういった球を待つのかを聞くなどして参考にし、常に相手の裏を掻くことを狙っていたという。プロでなくてもピッチャーならばそうしたイメージトレーニングは行うが、山田の場合はそれが徹底しており、だからこそ284という、今後、この数字に達するピッチャーが現れるのかどうかというほど多くの勝ち星を挙げ得たということになるのだろう。

この本に収められたインタビューは1998年頃に行われたもので、当時はフォーク全盛の時代だったのだが、山田はいずれチェンジアップの時代が来ると語っており、その山田の言葉通り、現在ではチェンジアップを投げないピッチャーの方が少数派の時代。こうした山田の読みの的確さに感心させられる書物である。

矢島裕紀彦 『山田久志 投げる』(小学館文庫) 紀伊國屋書店BookWeb

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