観劇感想精選(34) 坂東玉三郎特別舞踊公演『阿国歌舞伎夢華&蜘蛛の拍子舞』
2007年5月23日 京都・四条南座にて観劇
午後1時から四条南座で、坂東玉三郎特別舞踊公演『阿国歌舞伎夢華&蜘蛛の拍子舞』を観る。出演は、坂東玉三郎の他、市川笑三郎、市川猿弥、市川段治郎、市川春猿ほか。本日が千穐楽である。
『阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)』は、タイトル通り出雲阿国を主役とした物語舞踊。京・四条河原で活躍中の出雲阿国(玉三郎)。阿国が踊り疲れて眠りに落ちると、亡き踊りの師で恋人でもあった名古屋山三(市川段治郎)が現れる……。
史実によると、阿国は男装の舞で倒錯の美を作り出したようだが、今回は男装の舞は無し。というより、男である玉三郎が女装して阿国を演じているのに、更に男装すると女装なんだかそのままなんだか、いや玉三郎は女形だからそのままではないのか、もう何だかわからなくなってしまうので史実を尊重する必要はないだろう。
玉三郎が良いのは当然として、笑三郎も良い。ただ、笑三郎は本当に女性のような声が出せるのでセリフも聞きたかったのだが、今回は女歌舞伎衆の一人ということでセリフはなし。残念。
『蜘蛛の拍子舞』は、壬生狂言でもおなじみの「土蜘蛛」を題材にした舞踊劇。
源頼光(市川笑三郎)は近頃原因不明の病に悩まされている。実はその原因は女郎蜘蛛の精(坂東玉三郎)の呪いであった……。
リアリズムからは最も遠い話であり、「そういうものだ」と思って見ていても結構笑える。
頼光のもとに突然若い女・妻菊(実は女郎蜘蛛の精)が現れる。頼光は当然怪しむのだが、何故か一緒に舞を舞い、「女、見事な舞だな」などと言っているのだから呑気なものである。
合間に蜘蛛の着ぐるみを着た役者(誰かはわからない)が現れるのだが、蜘蛛の着ぐるみが実にグロテスクで、子供向けのヒーローものドラマを見ているかのよう。
源頼光四天王のうち、渡辺綱、卜部季武、碓井貞光の3人は最初からいるのだが、坂田金時はラストにようやく登場する(演じるのは市川猿弥)。てっきり坂田金時が、正体を現した蜘蛛(玉三郎)を退治するのかと思ったら、金時は出てきただけで、直後に頼光があっさりと蜘蛛を刺し貫く。金時さん、あんた何しに出てきたんだい。
これは笑いを誘う技巧であったはずなのだけれど、客席からはほとんど笑いは聞こえず。
伝統芸能、そして憧れの玉三郎様の舞台ということで観客は澄ましているのだろうけれど(金時の「玉三郎に似た化け物を」というセリフでは笑いが起きた)、もっと笑ってもいいと思う。エンターテインメントなんだし。
玉三郎(や後見)が白糸(蜘蛛の糸である)を投げる姿は絵としても実に美しかった。
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