大きな子供たちの帝国 若林亜紀 『公務員の異常な世界』(幻冬舎新書)
著者の若林亜紀は、民間の建設企業で3年間OLをした後、厚生労働省の外郭団体である研究所に転職。そこで、異常ともいえる公務員の厚遇をつぶさに見てきた人です。
『公務員の異常な世界 給料・手当・官舎・休暇』(幻冬舎新書)において若林は、一部の公務員達の常識外れの厚遇と意識を、敢えて丁寧な言葉を選ぶことにより、より辛辣に描写します。
子供でもおかしいと思うようなドグマ的世界観にとらわれている一部の公務員の姿は可笑しいやら腹立たしいやらで、こうした大きな子供が築き上げた帝国が根を張っている日本に住んでいることが情けなくもなります。
ただ、一部の公務員の意識が相当奇妙なのはもちろんとして、民間人や民間の企業は正常なのかというと、それもまた別の問題。公務員世界は治外法権かも知れませんが、第二次大戦後に国から厚遇された企業内にも治外法権らしきものが認められているのが日本の実情であり、問題のある公務員の存在が表面化するのと時を同じくして企業もモラル意識の欠如が浮き彫りになっていたりします。
話を広げすぎると収拾が付かなくなるので、公務員に話を限定しますが、著者の若林亜紀が最も問題視しているのは、公務員に自浄作用がないこと。問題を起こしても役所はつぶれないので指導が徹底されず、公務員達も公務員の常識でことを処理してしまうので、自浄作用はなかなか働きそうにありません。
GDP500兆円のうちの200兆円を税金や社会保険料として徴収している役所。しかし、役所で働く公務員の自己保身のために多額の金銭が無駄に流れてしまっています。
そして、更に問題だと思われるのは、公務員は決して珍しい職種ではないということ。ごく普通の人として社会で暮らしている公務員の意識が一般市民と大きくかけ離れているということは、日本の実情を正しく把握している人がほとんどいないのではないかという不安をも生みます。身内にしか通用しない子供じみた常識を振りかざす帝国が、市井の人々を覆うように繁栄しているということでもあるのです。
思い出すのは、村上春樹のエッセイ集『やがて哀しき外国語』に記されていた、アメリカ・プリンストンでの奇妙な日本人エリートの生態。
日本というのは「大きな子供たちの帝国」なのではないか、という疑念がふくらんでいきます。
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