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2008年6月25日 (水)

観劇感想精選(38) 第十八代目中村勘三郎襲名披露公演「野田版・研辰の討たれ」ほか

2005年7月7日 大阪・道頓堀の大阪松竹座にて観劇

大阪へ。道頓堀にある大阪松竹座で第十八代目中村勘三郎襲名披露公演を観るためだ。



松竹座は心斎橋駅となんば駅の中間にあり、どちらからもアクセスは良くないのだが、とりあえず通い慣れたなんば駅で降り、戎橋筋を北上する。少し早く着いたので道頓堀商店街をぶらぶらする。火災で焼失した中座の跡に建つビル、「セラヴィスクエア中座」に入ってみる。シバエモン(芝右衛門)という狸の姿をした神様の像が4階に祀られている。ユーモラスな像だが、客入れの神様とのことである。昔、中座に芝居好きの狸が通っていたのだが、正体がばれて殺されてしまった。ところがそれ以来、中座への客足がぱったりと絶えて閑古鳥が鳴く有り様。そこで狸の霊を祀ったところ再び中座は大入りとなったため、神様となったそうだ。
余談だがこのビルの2階に元横綱・若乃花こと花田勝氏の経営する「Chanko Dining 若」道頓堀店がある。

松竹座に入り口の前で待っていると、次第に劇場の前に人が増えてくる。午前の部を見終わった客が出てくる。その時、スコールに見舞われる。私は屋根の下にいたから濡れなかったのだが、外にいた人達が屋根の下へと集まりだしたため、満員電車さながらの混雑ぶりとなってしまう。遅れてのんびり劇場を出て来た人は外に出られず、外にいる人達はのんびり出て来た客達のために雨に濡れる。両方に不利益な状態となった。ちょっとした悲惨な光景である。

午後4時30分開演。まず襲名披露の口上を兼ねた、「宮島のだんまり」。口上以外は文字通り全てだんまり。衣装が皆、華やかである。

天井桟敷(通称:大向こう)に座っていたので、声を掛ける人がいるだろうと思っていたら、比較的若い女性が一人で連発。流石に回数が多すぎるように思う。

第二の演目は中村雁治郎(現・坂田藤十郎)らによる「大津絵道成寺」。物の怪などが沢山出てくるユニークな演目だ。この回は中年の男性が頻繁にかけ声を発する。「成駒屋」のことを「こまや」と言っていたから歌舞伎は何度も見て知っている方だろうと思う(屋号の頭を飛ばして発声すると舞台上では反響があるため、ちゃんと全ての音を発しているように聞こえるという)。ただタイミングがいいのかどうかはわからない。

メインは木村鏡花の作、平田兼三郎の脚色による本を基にした、野田秀樹:脚本・演出の「野田版・研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)」。
歌舞伎の主人公といえば、いなせな男女か悪党が定番だが、「研辰の討たれ」は剣を研ぐのが上手いために武士に取り立てられた元研ぎ屋の守山辰次(研辰)が主人公。当然、剣の腕は全くなく、それでいてお調子者のために周りの武士からは見下されているという弱い立場の男。そんな弱い研辰が、ある日、家老に剣術で散々に打ち負かされた怨みからちょっとした悪戯を仕掛ける。家老を脅かそうとしたのだが、やり過ぎたのか家老は脳卒中で死んでしまい、家老の息子二人に仇として追われるようになるという特異な演目である。

実は初演の時に収録された映像を私は観ており、今日生で観て、「実はこの歌舞伎は映像で見るのに向いているのでは」、という印象も受けた。セリフが聴き取り難い箇所があったし、生で同じことを何度も繰り返されると何故かしつこく感じてしまうのである。舞台では同じことを繰り返すケースを見慣れていないせいかも知れない。

とはいえ、迫力はやはり生で観る方が断然上。殺陣の場面は言うまでもないが、回転舞台の使い方の妙なども生でないと本当の面白さは伝わらないだろう。勘三郎演じる研辰が3階席に逃げ込んでくる場面も実際にその場にいてはじめて楽しめる。

ラストの紅葉のセットも生で見ると朱が滴るようで、目を楽しませると同時に悲壮美がより鮮烈になるのを感じる。

野田秀樹演出の切れは抜群で、野田という男の希有な才能を思い知らされる。ただ歌舞伎の劇場でやるとどうもしっくり来ないところもある。観客の雰囲気の違いもあるだろうし、野田色が強すぎるように思えるところもある。映像で見たときはそんなことは感じなかったのに。不思議なものである。

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