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2008年7月 6日 (日)

コンサートの記(15) ヘルムート・ヴィンシャーマン指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第403回定期演奏会

2006年11月16日 大阪のザ・シンフォニーホールで

ザ・シンフォニーホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第403回定期演奏会を聴く。曲目は、J・S・バッハの「ブランデンブルク協奏曲」全曲。指揮者は、J・S・バッハのスペシャリストであるヘルムート・ヴィンシャーマン。

ヘルムート・ヴィンシャーマンはドイツ・ルール地方に生まれ、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)の首席奏者を務めたほどのオーボエの名手であるが、1960年にドイツ・バッハゾリステンを結成。以後、指揮者、バッハ研究家としても名を挙げていくことになる。一方で教育にも力を入れ、宮本文昭のオーボエの師としても有名だ。

「ブランデンブルク協奏曲」は全6曲からなる合奏曲集で、ブランデンブルク辺境伯に献呈されたことから「ブランデンブルク」の名が付いた。連作ではなく、立て続けに演奏されることを念頭に入れたものでもないので、各曲の編成はバラバラであり、1曲終わる毎にスタッフが椅子の数や配置を換え、ライブラリアンが楽譜を交換するので慌ただしい。

ヴィンシャーマンの指揮する演奏はCDでは聴いているが実演に接するのは初めて。ヴィンシャーマンの第一印象は、「おー、でかい」。かなりの高身長である。しかも痩せているので背の高さが一層目立つ。長身痩躯という言葉が肉体を纏って現れたかのようだ。全曲ノンタクトで振ったのだが、開かれた手の大きさにも驚かされる。ピアノの鍵盤上で手を広げたら「ド」から1オクターブ上の「ソ」まで届くのではないだろうか。

指揮姿は流麗とは言えず、いや流麗どころかむしろギクシャクした方だが、バッハのカッチリした音楽を指揮するには、案外こうした指揮スタイルの方が合っているのかも知れない。

当然ながら全てモダン楽器による演奏である。トランペットも現代のものを使う。ブランデンブルク協奏曲第2番は、トランペット、オーボエ、リコーダーがソロを務めるという編成だが、モダン楽器であるためトランペットの音が傑出して大きく、リコーダーの音は「聞こえないことはない」というほど弱く、アンバランスである。古楽器ならトランペットもその他の楽器も現在のものより音は小さいのでリコーダーが埋もれるということはないのだろうが、そうなるとシンフォニーホールのような大ホールで演奏するには全体の音が小さすぎるということになってしまう。ということで、大ホールで「ブランデンブルク協奏曲」が演奏されることは少ないのだが、そうした少ない機会に接することが出来るのは貴重でもある。

ヴィンシャーマンはバッハ演奏の大家だけに、作り出す音楽は細部まで計算され、かつ瑞々しいという理想的なものだ。大阪フィルの演奏も金管奏者の技術が不安定になる箇所もあったが、それでも十分なレベルに達している。

ヴィンシャーマンは1曲終わると誰よりも先に拍手して演奏者を讃える。また、何故か最前列の聴衆と握手を交わしたり、私が座ったポディウム席の聴衆にも手を振るなど、細やかな心配りをする人だ。全曲の演奏が終わって、「私とも握手をして」と求める前列の聴衆に向かい、手でバッテンを作って、「ダメー」とやってみせるなど、ユーモアのセンスにも富んでいる。

J・S・バッハの音楽は俗世間を忘れさせてくれる。優しさに満ちた旋律と極めて高い完成度。
バッハという人は人類の存在を全面的に肯定していたのだろう。お堅くて古い言葉になるが、その音楽は「人間讃歌」であり、神も含めた「森羅万象へのオード」でもある。
聴くだけで、「世界も人間も捨てたものじゃない」という気分にさせてくれるバッハの音楽は貴重だ。しかしそういう音楽を書いたバッハが「忘れられた音楽家」であった時代があったのだから歴史というのは不思議である。

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