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2008年7月26日 (土)

これまでに観た映画より(31) 「4人の食卓」

DVDで韓国映画「4人の食卓」を観る。「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョン主演のサイキック・ホラー。亡霊が現れたり、DVがあったり、飛び降り自殺や、小さな子供がバックしてきたトレーラーのタイヤに押しつぶされるなどショッキングな場面も多い。

中田秀夫監督や黒沢清監督、森田芳光監督の映画に作風が似ているがあるいは参考にしたのだろうか。うずまき模様は多分、アルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」へのオマージュだろう。

脚本は非常に良く練られている。主人公達が持つ心の暗部。それへの恐怖が絶妙に表現されている。

脚本・監督は韓国の新進女性画監督、イ・スヨン。
チョン・ジヒョンは「猟奇的な彼女」とは180度違う、心に闇を抱えた女性を全編ノーメイクで演じている。

チョン・ジヒョン演じるヨンの住むマンションの1階の広くて柱の林立する空間など、撮影場所の選び方も上手いと思う。

若干、演出よりも脚本が勝った感じがするが(例えば、母親が持つ「子供に喰い殺されるかも知れないという恐怖」や、それとは逆に子供が持つ「母乳を飲むことで母親から栄養を奪って殺してしまうかも知れないという恐怖」はまんまフロイトであり、理屈が強いように思う)良い作品だ。ショッキングな像で見るものを怖がらせるタイプのホラーではなく、心にじんわり染み込んでくるタイプの怖さを持つ映画。

ヨンは霊媒の能力の持ち主なのだが、もしも実際は単にナルコレプシーによる妄想癖を持つだけなのだとしたら、あるいはそちらの方が怖いかも知れない。どこまでが本当でどこまでが嘘なのか。あるいは本当よりも嘘の方が人間には重要なのかも知れないけれども。

他者から理解されない孤独感や、自らの存在によって他者が不幸になっていくのではという罪の意識が痛々しいほど良く出ている。
他者への愛情とそれに報いて貰えない憎しみ、それが「自分に問題があるのでは?」という自分への懐疑や憎しみへとフィードバックしていく。そしてその思いがまた他者へと…。どこまでいっても答えの出ない螺旋階段のような自意識の葛藤。あるいは劇中に出てくる渦巻き模様はそのメタファーなのか?

知ることは幸福なことなのかという問いかけがある。何度も繰り返されたテーマではあるがやはり考えさせられる。
ホラーではあるが、悲しい、この上なく悲しい人間ドラマがきちんと描き込まれており、好印象を持った。

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