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2008年8月30日 (土)

コンサートの記(18) 広上淳一指揮関西フィルハーモニー管弦楽団 いずみホール演奏会

2008年6月4日 大阪・京橋、いずみホールにて

午後7時から、大阪・京橋にある、いずみホールで、広上淳一指揮関西フィルハーモニー管弦楽団の演奏会を聴く。

曲目は、プッチーニの「交響的前奏曲」、田村響をソリストに迎えてのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、ベートーヴェンの交響曲第4番。

午後6時40分過ぎに、例によって関西フィル理事の西濱さんが登場し、広上淳一を迎えてのトークがある。広上は普段着に眼鏡という格好で登場、ベートーヴェンの交響曲第4番の魅力について、「一言でいうと渋い」「噛めば噛むほど味が出るスルメのような曲」だと語る。

広上は人生の節目節目でベートーヴェンの交響曲第4番を振っているそうで、1984年の第1回キリル・コンドラシン国際指揮者コンクール(広上は優勝を飾った)で最初に割り当てられた曲がベートーヴェンの交響曲第4番。5月に小澤征爾が体調不良で倒れ、水戸室内管弦楽団を振れなくなった時に、小澤本人から頼まれて水戸室内管相手に振ることになったのもベートーヴェンの交響曲第4番だという。今日の演奏会の曲目も、関西フィルの側からベートーヴェンの交響曲第4番を振って欲しいと頼まれたとのことだ。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のソリストを務める田村響は、高校を出て、ザルツブルク・モーツァルティウム音楽院に留学するためにオーストリアに旅立つ前日に、広上淳一指揮の関西フィルハーモニー管弦楽団と共演しており、今回、関西フィルと共演するにあたり、広上の指揮を希望したのは田村であるとのことである。

プッチーニの「交響的前奏曲」。ありきたりだけれど、「夢見るような」と形容するしかない美しい響きがホール一杯に拡がる。弦も管も関西フィルとは思えないほど滑らかにして煌びやか。流石は広上と思わせる美演であった。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のソリスト、田村響は1986年生まれ。「日本のデンマーク」こと愛知県安城市の出身である。1993年以降、日本国内の数多くのコンクールに参加。2001年に全日本学生音楽コンクール名古屋大会中学生部門で第1位。翌年には園田高弘賞ピアノコンクールで第1位に輝き、昨年はついにロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門での優勝を成し遂げた。

コンクールでの成績は当てにならないということが、クラシック音楽の世界では常識化している。しかしこの田村響というピアニスト、聴くのは初めてだがかなりの大物と見た。

田村響のピアノは打鍵が強いが、音が濁ることも乱暴になることもない。むしろ和音などは極めて美しく、ヴィルトゥオーゾ的テクニックから細やかな味までの幅広い技術も素晴らしい。前の方の席に座っていたのでペダリングにも注目してみたがかなり巧い。今年で22歳という若手だが、実演で聴いたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のソリストとしては最高クラスである。

顔も体も大きく、プロレスラーのような体型の田村だが、見かけとは正反対の繊細な味わいも持っている。

アンコールで弾いた、メンデルスゾーンの「甘い思い出」では、繊細さとロマンティシズムが発揮されたこれまた見事な演奏であった。

広上の伴奏は、プッチーニと打って変わってロシア的な仄暗い響きを関西フィルから引き出す。フルートの冴え冴えとした響き、濃厚な弦のうねりなど、ラフマニノフを聴く醍醐味を堪能させてくれる。

メインであるベートーヴェンの交響曲第4番。広上は時として大胆なデフォルメを行うが不自然な感じはしない。ティンパニの思い切った強打、アクセントの強調などが効果的で、熱い演奏を繰り広げる。

ただ、第1楽章では、関西フィルの弦楽群が、広上の棒に応え切れていないように聞こえた。広上はもっとバネを効かせた力強い響きを引き出したかったようだが、関西フィルの弦楽奏者は思ったよりも指の回りが悪く、音も柔らか過ぎて張りがなかった

オーケストラの実力は、こうした比較的シンプルな音型の部分でわかってしまうもののようだ。

第2楽章以降はハイレベルな演奏が繰り広げられただけに、第1楽章が不完全燃焼気味だったのが惜しまれる。

アンコールは、グリーグの『2つの悲しい旋律』より「過ぎた春」。弦楽のための音楽である。澄み切った音色で奏でられる旋律上に、哀感と優しさが花のようにポツリポツリと交互に咲いていく。
この手の曲を指揮させると広上は本当に上手い。

肝心のベートーヴェンの第1楽章の出来が惜しまれるが、充実した演奏会であった。

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