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2008年9月11日 (木)

観劇感想精選(49) 燐光群 「ワールド・トレード・センター」

2007年11月11日 兵庫県伊丹市のAIホールにて観劇

午後2時より伊丹AIホールで、燐光群の公演「ワールド・トレード・センター」を観る。作・演出:坂手洋二。

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件、いわゆる9・11を描いた作品。「ワールド・トレード・センター」というタイトルだが、舞台となるのはマンハッタンのECS社という日本語新聞社の編集部である。

開場時に燐光群のメンバーである杉山英之さんが、無料パンフレットと公演チラシの束を客に手渡す役をしていたので、「今日は杉山さんは出ないのかな?」と思ったが、ちゃんと出演していた。

無料パンフレットによると、坂手洋二は、9・11当時、ニューヨークのミッドタウン、グランド・セントラル駅に近いところに編集部を持つ情報誌「OCS NEWS」で時評の連載を持っており、坂手は9・11当日に「OCS NEWS」編集部に社員の無事を確認する電話をかけたという。テレビのニュースではミッドタウンが攻撃されるのではという情報も流れていた。「OCS NEWS」編集部員は無事であり、そして彼らはミッドタウンの編集部から帰ろうとはしなかった。更にニューヨーク市内では当日、指輪ホテルの羊屋白玉氏がニューヨークと東京をインターネット回線で繋いだ日米同時ライブ上演を企画していた。坂手は羊屋に自分なりの助言をしたという。

その当時のことをモチーフにして書かれた劇である。坂手洋二の体験が元になっているが坂手本人はフィクションであることを強調している。

「ワールド・トレード・センター」というタイトルであるが、ワールド・トレード・センター(WTC)のあるマンハッタンのダウンダウンから少し離れたミッドタウンにある新聞社の編集部を舞台にするという設定がいい。坂手本人がニューヨークに寄るたび「OCN NEWS」社の編集部を訪れており、そこの雰囲気をよく知っていたということが発想の源にありプラスに作用したと思われるのだが、とにかく臨場感がある。私自身も新聞社の編集部員の一員としてその場にいるかのような臨場感だ。

WTCのノースタワーに飛行機が突っ込んだのを知って、WTCに近くまで取材に出たECS社の記者がサウスタワーに2機目が突っ込むのを目撃したのを編集部員に語るシーンもまた臨場感たっぷりである。

9・11当日のニューヨークの様々な場所を舞台にし、語り手を置くというスタイルも燐光群なら選択出来たはずだが、そうした場合はこのような臨場感を生むことは出来なかっただろう。

羊屋白玉氏の体験が元になった演劇に関する事柄の数々もなかなか効果的であった。

そしてWTCにハイジャックされた旅客機が突撃するという自爆テロが起きたという大きな物語、否、大きな事実に比重を置くのではなく、登場人物個々の話を充実させ、最後は9・11という歴史的事件を各々の小さな物語に収斂させる(コンパクトに畳み込み)という手法も良かったと思う。

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