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2008年10月 2日 (木)

コンサートの記(24) 広上淳一指揮大阪フィルハーモニー交響楽団 いずみホール特別演奏会

2008年3月27日 大阪・京橋 いずみホールにて

大阪へ。京橋の「いずみホール」で、広上淳一指揮大阪フィルハーモニー交響楽団の、いずみホール特別演奏会を聴く。午後7時開演。

ハイドンの交響曲第60番「うっかり者」、ショスタコーヴィチのバレエ組曲第1番より3曲とバレエ組曲第2番より2曲、バレエ組曲「ボルト」より3曲、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「プルチネルラ」というプログラム。

いずれも「型を崩したおかしみ」のある曲だが、そもそも型を知らないとそれを崩したおかしみもわからない。ということで通向けのプログラムである。

ホールによって固定客というのがいる。いずみホールのお客さんは大阪フィルの本拠地であるザ・シンフォニーホールに来るお客さんよりもお上品な人が多い。いずみホールの公演もザ・シンフォニーホールでの公演も両方聴けばいいと思うのだが、どういうわけか(もっともホールの雰囲気が好きか嫌いかが理由だろうと察しは付くのだが)複数のホールに通うという人は意外に少なかったりする。

これは東京でも同傾向で、例えばNHKホールのお客さんは男女ともに白髪の方が多く(NHK交響楽団の定期会員にはご年配の方が多いのでそうなるのだが)、紀尾井ホールは場所柄ゆえか、全身から「私、良家のお嬢さんです」オーラが出ている若い女性の聴衆が多かったりする。

今日のいずみホールは空席が目立った。せっかく面白い曲を面白い指揮者が振るのに。

広上淳一がいずみホールの指揮台に立つのはこれが初めてだという。「どうも、おまっとさんでした」とばかりにポンと一つ手を叩いて広上登場。

広上の振る大フィルは潤いのあるきめ細やかな音を出す。私が今日座ったのは前から三列目の左側だったので、ファーストヴァイオリンのニュアンスの変化がよくわかって興味深い。その分、視覚的には死角があって、と冗談を言ってしまうが、管楽器の奏者の顔はヴァイオリン奏者の陰になって見えず、今日は誰が吹いているのかわからなかったりする。

広上の指揮はユーモラスだが、強弱の付け方やニュアンスの変化のさせ方がよくわかり、見ていて大変勉強になる。
私は別に指揮者ではないので、勉強になっても、さほど得にはならないのだけれど。

ハイドンの交響曲第60番「うっかり者」は同名の劇付随音楽として書かれたものを6楽章の交響曲にまとめたという作品。第6楽章には、弦楽奏者達がチューニングをするという仕掛けがある。
第6楽章演奏開始前に、広上がコンサートマスターの長原幸太に「よろしくお願いします」と小声でいうのが聞こえたので何かやるなと思ったが、チューニングの場面で長原が立ち上がり、広上がそれに驚いて(驚いた振りをして)楽譜をめくって今どこの場面を演奏しているのかを探し、タオルで禿頭の冷や汗を拭うという演技をした。
笑った。井上道義もこうした演技をよくやるが、広上の方がずっと笑える。広上の方が井上より小柄で指揮姿もユーモラスだからだが、聴衆へのアピールを感じさせる井上に対して、広上は何よりも自分が楽しむためにやっているというのがわかるからでもある。

ショスタコーヴィチのバレエ組曲は、しかめっ面しておどけているような屈折したユーモアを特徴とする曲だが、広上はその屈折したユーモアという曲の内面と、堂々と鳴り渡る響きという曲の外面の両方を巧みに表現していた。大フィルの金管がかなり怪しかったのだけが難点である。

ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」は、イタリアのバロック時代の作曲家であるペルコレージらの曲をディアギレフの依頼によりストラヴィンスキーが編曲したもの。とはいえ、もっと単純な編曲を希望していたディアギレフの依頼を遙かに飛び越える仕掛けをストラヴィンスキーが施してしまったため、ストラヴィンスキーのオリジナル曲とされている。古典派以前の造形美をモチーフにしながら、本当の古典派以前の作曲家は絶対に使わない特異なオーケストレーションを用いているのが特徴。これも大人のユーモア感覚に溢れた作品だ。

大人のユーモア感覚に溢れた曲を、ユーモラスな大人である広上が振るのだから悪い演奏になるはずがない。

バレエ組曲「プルチネルラ」はメインの曲にしては軽いし、演奏時間も少し短いので、アンコールに何かやって欲しかったが、「プルチネルラ」は内容のみならず編成も独特で、同じ編成で出来る曲がないためか、アンコール演奏はなし。それでも楽しいコンサートだった。

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