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2008年10月31日 (金)

中川右介 『カラヤンとフルトヴェングラー』(幻冬舎新書)

クラシック音楽界最高の地位と多くの人が認めるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者(音楽監督)。ハンス・フォン・ビューロー、アルトゥール・ニキシュという伝説の指揮者の跡を継いで三代目のベルリン・フィル首席指揮者となったヴィルヘルム・フルトヴェングラー。20世紀最高の指揮者と今でも目されているフルトヴェングラーであるが、生来の優柔不断さからナチス台頭期に身の振り方に苦悩する。その頃、ドイツ国内で話題になっている一人の青年指揮者がいた。彼の名はヘルベルト・フォン・カラヤン。オーストリアのザルツブルク出身のカラヤンは最初のポジションであるウルムの歌劇場では失敗したが、その後は着実にキャリアを重ねており、1938年、30歳の時には「奇蹟のカラヤン」との演奏会評を受けるまでになっていた。自分の息子のような年齢のカラヤンにフルトヴェングラーは脅威を抱く。

中川右介 『カラヤンとフルトヴェングラー』(幻冬舎新書)ナチス時代のドイツを舞台にベルリン・フィル首席指揮者の座を巡って巻き起こる様々な欲望と陰謀。その二人の主人公、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーとヘルベルト・カラヤン、そして第三の男ともいうべきセルジュ・チェリビダッケの活躍を時系列的に配した、中川右介の『カラヤンとフルトヴェングラー』(幻冬舎文庫)。カラヤンとフルトヴェングラーによるベルリン・フィル首席を巡るドラマはクラシックファンの間ではよく知られたものであり、この書物に書かれていること自体にはさほど新鮮味はないが、三人の心の葛藤を描くという「人間ドラマ」的切り口が巧みであり、権力や陰謀を描いたサスペンス小説のような面白さがある。

「『カラヤンとフルトヴェングラー』概要」
実演の実力では誰にも負けないフルトヴェングラー、しかし当時の録音技術では彼の演奏の素晴らしさを捉えることが不可能であることはフルトヴェングラーもよくわかっていた。そこへ現れたカラヤン。カラヤンはフルトヴェングラーとは逆に当時の録音技術に適した個性を持っており、そのことをカラヤン本人もフルトヴェングラーもよく知っていた。結果、22歳も年下のカラヤンにフルトヴェングラーは嫉妬にも似た感情を覚える。時あたかもナチス政権下。ナチスに反抗的であったフルトヴェングラーと、ナチス党員であったカラヤン。次第に立場が危うくなり、ベルリン・フィルの指揮台に立つ回数が減っていくフルトヴェングラーに対し、カラヤンは着実な歩みを見せていたが、ヒトラーの御前演奏でカラヤンは致命的なミスを犯し、ヒトラーに嫌われてしまった。こうしてベルリン・フィルの指揮者陣が手薄になっていく。そして、終戦直後、ナチスへの関与により公式活動を禁止されたフルトヴェングラーとカラヤンの不在期に一人の名もないルーマニア人若手指揮者がベルリン・フィルの演奏会で大成功する。そのルーマニア人若手指揮者の名はセルジュ・チェリビダッケといった。

中川右介 『カラヤンとフルトヴェングラー』(幻冬舎新書) 紀伊國屋書店BookWeb

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