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2008年11月 5日 (水)

川口マーン惠美 『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』(新潮選書)

20世紀前半を代表する指揮者ヴィルムヘルム・フルトヴェングラーと、20世紀後半に音楽界の頂点に君臨した指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者(音楽監督・芸術監督)の座を巡って時に醜いほどの確執を持った二人。

そんな二人の大指揮者が活躍したベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の元楽団員11名による14回のインタビューを収めたのが川口マーン惠美の『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』(新潮社選書)。タイトルは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の元首席ティンパニ奏者であるヴェルナー・テーリヒェンの著書『フルトヴェングラーかカラヤンか』(原題:『ティンパニの響き』)を意識したものだと思われます。ちなみにテーリヒェンの『フルトヴェングラーかカラヤンか』(音楽之友社)を、私は高校生の時に、高校の図書室で読んでいますが、今思うと、あの書物は高校生が読むには全く適していなかったと思います。

川口マーン惠美 『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』(新潮選書) 登場するのは、ヴェルナー・テーリヒェン(元首席ティンパニ)、ハンス・バスティアーン(元第一ヴァイオリン)、エーリッヒ・ハルトマン(元コントラバス)、ギュンター・ピークス(元首席ファゴット)、ディートリッヒ・ゲアハルト(元首席ヴィオラ)、カール・ライスター(元首席クラリネット)、ルドルフ・ヴァッツェル(インタビュー当時は現役のコントラバス奏者、2008年夏に定年退職)、ルドルフ・ヴァインスハイマー(元首席チェロ)、ライナー・ツェッペリッツ(元コントラバス)、エーバーハルト・フィンケ(元首席チェロ)、オズヴァルト・フォーグラー(元首席ティンパニ)。

フルトヴェングラーとカラヤンの二人の首席指揮者のもとで演奏したのは6人。あとの5人はカラヤンの指揮でのみ演奏経験のある人です。

フルトヴェングラーとの演奏経験のある人は、フルトヴェングラーを信奉しており、特にアンチ・カラヤンで知られるテーリヒェンは、フルトヴェングラーを絶賛する一方で、カラヤンの才能を全く認めないとの発言までしています。

一方で、カラヤンはフルトヴェングラーの後任として最適だったと認める人もいるなど、オーケストラプレーヤー個々の二人の指揮者への思いには大きな隔たりがあることもわかります。

カラヤンについての評価はフルトヴェングラーと違い、崇拝する人と特に何も感じていない人にわかれており、指揮者としても人間としても賛否両論の評価を受けたカラヤンらしい結果になっています。

クラシック音楽界の世界最高峰に位置するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏家達、その貴重な証言と魅力的な生き方に魅せられる一冊です。

川口マーン惠美 『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』(新潮選書) 紀伊國屋書店BookWeb

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