藤原智美 『検索バカ』(朝日新書)
養老孟司の『バカの壁』がベストセラーになってからというもの、「バカ」をタイトルにした書物が溢れているような感があり、中には著者自身が最も馬鹿であることを露呈してしまっている書物もありますが、本書『検索バカ』(朝日選書)は、タイトルとは裏腹に誠実に内容を持った本です。世の中の「バカ」本の中にもこうした書物がきちんとあるということです。
メッセージ自体に目新しいものはありません。情報化社会の中にあって、簡単に手に入れられる外的な情報ではなく、内的な思考を見直そうという趣旨の本です。
ネット社会の到来により、情報や知識は簡単に手に入れられるようになりましたが、そのことで却って情報や知識に振り回されて、己を空しくするという結果を招来していることは間違いありません。右から左へと情報は抜けていき、言葉や対話を深めることもない。地域社会は崩壊し、それを埋めるものとしてマニュアル化された情報が生まれましたが、それは所詮、意味を去勢された仕草のようなものでしかない。
これは藤原でなく、私の意見ですが、もし情報や知識を最上のものとしておくなら、最高の存在は、人間ではなく、知識が集められた「百科事典」ということになるだろうと思ってしまいます。書物が人間より尊い存在、それも何の思索も通さず知識だけを集めた「百科事典」を最上と尊ぶのは誰が考えても愚かしいことですが、困ったことに現代社会はそうなりつつあります。身体を経ていない言葉が、矢継ぎ早に繰り出されてあらゆるものを傷つけている。
藤原智美の『検索バカ』は考えることの尊さを説きます。多くの人がその重要さを当たり前のように認識してながら、現代社会に於いては失われつつある沈思黙考。『検索バカ』はそのタイトルや帯の文句の過激さとは真逆の温かみのある語り口で考え抜くことの重要さを我々に問いかけています。
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