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2009年4月20日 (月)

コンサートの記(39) 藤岡幸夫指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団第201回定期演奏会

2008年4月29日 大阪のザ・シンフォニーホールにて

関西フィルハーモニー管弦楽団の第201回定期演奏会を聴きにザ・シンフォニーホールまで出かける。午後3時開演。今日の指揮は関西フィル首席指揮者の藤岡幸夫(ふじおか・さちお)。メインはショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。

「レニングラード」は演奏時間が70分前後の大作であり、内容も濃いので、これ1曲だけのプログラムでも十分なのだが、前半にモーツァルトのピアノ協奏曲第23番(ピアノ独奏:関本昌平)が組まれている。

関西フィルは、開演時間の20分前からプレトークをよく行っている。関西フィルの理事と事務局長を兼ねる西濱さんがユーモアを込めつつ毎回司会を担当。
今日のプレトークは、藤岡による「レニングラード」の曲目解説が主。第1楽章に出てくるちょいダサの「戦争の主題」を藤岡は独裁者へのからかいを込めたものとし、「『レニングラード』は軽いと思われがちだけれど、そうではない」として、第3楽章の異常な美しさを感じて欲しいとも述べた。

モーツァルトのピアノ協奏曲第23番のソリストである関本昌平の紹介も西濱さんがしていたが、関本が今年23歳だと聞いて藤岡は「そんなに若いの!?」驚いていた。藤岡は今年46歳だから、関本は藤岡の丁度半分の年齢ということになる。関本はオジサン顔なので、藤岡も23歳だとは思っていなかったようだ。「子供であってもおかしくないんだ。(自分には)子供はいないけれど」と藤岡。

今日の関西フィルの演奏会は満員御礼。ただし、関西フィルは多くの企業から援助を受けているため、開場前には企業関係者のためのチケット売り場に長い列が出来ていた。

企業関係者が多いため、コンサートを聴き慣れていない人も会場に多くいたと思われる。楽団員が出てくるたびに、中途半端な大きさの拍手が起きていた。

モーツァルトのピアノ協奏曲第23番。関本昌平のピアノは良く弾けているが、カッチリした弾き方で、音色変化の自在さもまだないため、第1楽章などは愉悦に乏しい。

その分、第2楽章の情感は見事で、ストレートな表現が「透明な悲しみ」とでもいうべき澄んだ哀感を際立たせていた。

藤岡指揮の関西フィルは響きがやや薄手に感じられたが、関西フィルの演奏はもともと淡泊な傾向があるので気にはならなかった。

ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。関西フィルの管は金管も木管も時折不安定になるが、弦は比較的安定しており、曲の力もあって薄さも感じさせない。

藤岡幸夫の指揮は内容主義。極めて高い集中力でオーケストラを導き、難しい場面でも要求は高く、フォルムが崩れそうになっても、オーケストラのアンサンブルを整えることよりショスタコーヴィチの音楽の内容を描くことを優先させる。

「レニングラード」は、日本よりも先にイギリスで指揮活動を始めた藤岡が日本デビューをする際に選んだ曲目だということで、当然、藤岡の思い入れは強く、情熱をオーケストラに叩きつけるような指揮を見せる。関西フィルの、というより日本人の肺活量ではこれ以上大きな音は無理なのではないかという場面でも藤岡は、「もっともっと」とブラスを煽る。ショスタコーヴィチの交響曲は人間業を超えたところがあるので、限界を超えた要求でも、それをしなければ本当の名演にはならないということなのだろう。

第1楽章が終わったところで、客席のあちこちから「凄い……」というつぶやきが漏れる。ショスタコーヴィチの音楽はコンサート初心者が思い描く「クラシック音楽」とは別次元にあるので、こうした反応も当然である。とにかく人を圧倒する音楽なのだ。

藤岡の激しい情熱と関西フィルの健闘により優れた演奏となった。演奏終了後、白人と黒人の聴衆が興奮の余り、「ホゥー!」という声を上げていたが、これも自然な反応に感じられる。

ショスタコーヴィチは音楽史上一二を争う天才作曲家ではあるが、モーツァルトの音楽の才能が「神の恩寵」を感じさせるとのは正反対に、──例えそれが人間が書いた音楽とは思えなくても──「神」のような外的存在ではなく、あくまで人間が作り上げた作品というスタンスが感じられる。人間のドラマが主題にあるためだが、その完成度は「人間が一人でここまでのものを作れるんだ」という可能性を示しており、ある意味、人類に希望を与える存在である。

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