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2009年12月29日 (火)

コンサートの記(53) 大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団 「第9シンフォニーの夕べ」2008 フェスティバルホールラストコンサート

2008年12月30日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時より、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団ほかによる演奏会「第9シンフォニーの夕べ」を聴く。

フェスティバルホールで公演が行われるのは、今日のこの演奏会で最後。今後、フェスティバルホールの入った新朝日ビルは取り壊され、2013年に新たなビルディングが完成して、その中に新しいフェスティバルホールが建てられることになっている。

1958年にオープン。日本で最初の本格的なクラシック音楽対応ホールであり、クラシックとポピュラー両方の聴衆から愛されてきたフェスティバルホール。カラヤンがここで演奏して気に入り、自身が設計にまで関与したザルツブルク祝祭劇場のモデルとして採用したことでも知られている。

そのフェスティバルホールも今日で半世紀の歴史に幕を下ろす。

大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー合唱団ほかによる、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」。

今日は最前列で聴くことになった。新しいホールだと、最前列といってもステージとの間に空間があるが、フェスティバルホールの場合は最前列というと、本当に膝がステージに着くほど前である。

左側のサイド、袖よりの席であり、第1ヴァイオリンの最後列の奏者の背中を見ながら聴くことになった。そのため、演奏中は指揮する大植の姿が、ヴァイオリン奏者達の陰に隠れて見えなかった。

フェスティバルホールの最前列は音響的にも苦しいということで、演奏自体を的確に把握することは困難でもある。

大植は、ベートーヴェンなどの古典派は比較的不得手としている。それでも北ドイツ放送ハノーファー・フィルとの来日公演でベートーヴェンの「英雄」を取り上げたときは、まずまずの演奏をしていた(これはDVDで観た)。

ハノーファー・フィルで聴いた大植のベートーヴェンは機能性重視で、音の構造を透かし彫りにするような演奏であった。しかし、朝比奈隆とともに、世界でも稀なほど重厚なベートーヴェンを長年に渡って演奏してきた大阪フィルのスタイルには、大植のベートーヴェンは合わない。以前接した、ベートーヴェンの交響曲第7番の演奏も成功とは言い難かった。

ただ、今日の第九は、弦楽の演奏にしなやかさが増しており、大植のスタイルに大フィルが近づきつつあるのを確認出来た。一方で、管、特に金管はフライングがあったり、気の抜けた音を出したりと、まだまだ問題ありである。

第4楽章で大植は、急激なリタルダンドにアッチェレランド、極端に長いパウゼなど、芝居がかった演奏を展開。これはさすがに芝居のしすぎ。不自然な演奏になってしまっていた。

今日の独唱者は、全員西洋人だったが、毎年第九を演奏する日本とは違い、西洋では第九は難曲ということもあって滅多に演奏されない。ということで、独唱者は全員、楽譜を手にしての歌唱であった(日本人独唱者は毎年のように歌っているため、暗譜で歌うのが普通である)。そのことも影響したのか、合唱と独唱、オーケストラが三者ともずれてしまう場面もあった。

それでも、ラストの過激なほどのアッチェレランドは効果的で帳尻を合わせた格好になる。「終わりよければ全てよし」とは今日の演奏のためにあるような言葉だ。

アンコールとして、フェイスティバールホールオープニング時に、朝比奈隆指揮関西交響楽団(大阪フィルの前身)によって演奏されたという、エルガーの「威風堂々」第1番が取り上げられる。大植は、客席に向かって拍手を要求。更に目の前の聴衆の手を取って立ち上がらせることで聴衆全員の起立を促し、プロムスのような熱狂を引き出す。派手なジャンプで演奏を終わらせ、引き上げる時には、フェスティバルホールの壁にキスして見せた大植。こうしたパフォーマンスを嫌う人もいると思うが、個人的には、大植のようなパフォーマンスが出来る男がフェスティバルホールのトリで良かったと思う。

大阪フィルハーモニー交響楽団のメンバーが引き上げた後で、大阪フィルハーモニー合唱団のメンバーが客席に出てきて「蛍の光」を歌う。聴衆達もみな「蛍の光」を口にする。勿論、私も歌った。映画「ビルマの竪琴」の登場人物になったような気分になった。そこにあるのは西洋的な「悲しみ」ではなく、日本的な「もののあわれ」に近い感情。私が日本人であることを再確認した。

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