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2011年1月15日 (土)

観劇感想精選(77) 堀北真希主演「ジャンヌ・ダルク」

2010年12月27日 大阪の梅田芸術劇場メインホールにて観劇

午後7時から、梅田芸術劇場メインホールで、舞台「ジャンヌ・ダルク」を観る。脚本:中島かずき、演出:白井晃。
タイトルロールを演じるのは初舞台にして初主演の堀北真希。出演は、石黒英雄、山口馬木也、柴本幸、塩谷瞬、高杉真宙、青木健、上杉祥三、春海四方、田山涼成、六平直政、浅野温子、西岡徳馬、伊藤英明ほか。キャストの数は100人余りにのぼり、人海戦術を使った大がかりな演出が展開される。

舞台は奥行きがあり、舞台手前側と奥側の二カ所に正方形の穴が開いている。床がロープで立ち上がるようになっており、その際は穴は窓の役割を果たす。

開演と同時に、手前の穴から、ジャンヌ・ダルク(堀北真希)が登場。やがて舞台奥から兵士達が現れ、ジャンヌは兵士達の中で所在なげに佇む。やがて、膝から崩れ落ちるようにして倒れるジャンヌ。その背後では、シャルル7世(伊藤英明)が、「ジャンヌを殺したのは自分なのか」と嘆いている。

やがてジャンヌは立ち上がる、背後のスクリーンに、ここがドンレミ村であることが示され、ジャンヌは羊の番をしていた13歳の時に神の声を初めて聴いたとモノローグで伝える。百年戦争を戦うイングランド軍兵士がドンレミ村に押し寄せ、ジャンヌにも乱暴しようとする。その時、ジャンヌが抜いた刀が一人のイングランド兵士を突き刺す。フランス方の傭兵も現れ、ジャンヌは救われる。
そこへ、白い服を着た謎の少年が現れる。同時にジャンヌは「シャルル王太子を戴冠させるように」との神のお告げを聞く。

フランス宮廷にも、ジャンヌという少女が、シャルルに面会を求めているという噂が伝わる。ジャンヌが本当に神の使いなのかテストするため、玉座に別人を座らせ、家臣の中に紛れるシャルル。しかし、ジャンヌは玉座に座るのが王ではなく、誰が本当のシャルルなのかを見抜くという有名なエピソードが演じられる。神の声を告げると騙る悪魔というものがおり、その場合は処女ではないということで、処女検査なるものが行われ、ジャンヌが処女であることが確かめられて、ジャンヌはフランス軍を率いることを許される。戦場で次々に射られるイングランド兵の弓がジャンヌには全く当たらないということでイングランド軍からも怖れられるようになったジャンヌ。
ジャンヌが戦場で旗を振るようになってからフランス軍はイングランド軍に連戦連勝。シャルルは戴冠式を行って正式に即位し、フランス王シャルル7世となる。しかし、時を同じくして、ジャンヌは神の声を聞くことが出来なくなってしまう…

ジャンヌ・ダルクというと、ジャン・アヌイの「ひばり」や、シェイクスピアの「ヘンリー六世」思い出され、私は両方の舞台を観ている。「ひばり」では松たか子が、「ヘンリー六世」では大竹しのぶがジャンヌを演じていた(ともに蜷川幸雄演出)。

初舞台となる堀北真希であるが、最初から、観ているこちらが「最後まで保つのか?」と心配になるほどの熱演で飛ばす。声は良く通り、発音も明瞭である。
一方で、殺陣や立ち振る舞いにはキレが見られなかったが、これが疲労の蓄積によるものなのか、堀北の本来の運動神経によるものなのかは不明(後記:雑誌「AERA」での小林麻耶のインタビューによると、堀北真希は中学時代はバスケットボール部の副主将だったそうなので、運動神経は良いものと思われ、原因は疲労の蓄積と見た方が正解だろう)。ただ、その弱点を補って余りあるほどの表現力を堀北は見せ、初舞台としては上々の出来なのではないだろうか。
松たか子や大竹しのぶは、演技力に定評のある女優がその才能を羽ばたかせ、自信にも溢れたジャンヌであったが、堀北のジャンヌは見た目もどこか頼りなげで、内面に弱さを持ちつつも格好いいという、新たなジャンヌ像を創造するのに成功していたように思う。

人海戦術を用い、客席にも兵士役の俳優を配した第一幕は迫力こそあるがやや平凡で、ジャンヌが神の声を聞くことが出来なくなった第二幕の方が見応えがある。第二幕では、異端審問の場や火刑台では心理劇の要素があり、ジャンヌの出生の秘密や、シャルルとの関係、フランス王室の謀略などが次々に明らかになり、スリリングである。ただジャンヌが火あぶりの刑に処された後のエピローグは、中島の筆がややインスピレーションを欠き(おそらく最初から結末を考えて執筆したものと思われるが、その分、ありきたりのものになってしまったような気がする)、俳優の演技も綺麗事に見えてしまっていた。フランス軍の旗を何本も立てるなど、演出は迫力があっただけに、ここはちょっと残念だった。

音楽は良質のものが作曲されていたが、その用い方はやや疑問。牢獄のシーンでは音楽はいらなかったのではないだろうか。

堀北真希以外の俳優陣では、悩める王・シャルル7世を演じた伊藤英明が、立ち居振る舞いに気品が感じられて、王を見事に演じていたように思う。また外見が聖職者に見えないという難点はあるものの、役の持つ強引な面を際立たせた司教役の六平直政が意外にはまり役だった。その他の俳優は、型にはまりすぎていたり、役を作りすぎていたりと、欠点も目立つ。ただ、セリフの間合いはどの俳優も絶妙で、「さすがプロ」と感心させられる見事なアンサンブルが見られた。

良い芝居だとは思うが、「ひばり」に比べると数段落ちるかなというのが正直な感想である。物語としてはいいのだが、心理の描き方が「ひばり」に比べると足りないか、ありきたりだったように思う。

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