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2011年2月23日 (水)

コンサートの記(63) 西本智実指揮 大阪音楽大学創立90周年記念演奏会

2006年3月3日 ザ・シンフォニーホールにて

大阪へ。ザ・シンフォニーホールで行われる、大阪音楽大学創立90周年記念演奏会を聴くためである。
曲目は、ブラームスの大学祝典序曲と、マーラーの交響曲第2番「復活」。指揮は大阪音大OGの西本智実。
女性指揮者の振るマーラーを聴くのは初めてで、それが楽しみでもある。
演奏は大阪音大の学生、教員、卒業生と、大阪音楽大学カレッジ・オペラハウス管弦楽団(プロオーケストラ)のメンバーからなる、創立90周年記念管弦楽団と、同じく学生とカレッジ・オペラハウス合唱団からなる、創立90周年記念合唱団。ソプラノ独唱・松田昌恵(大阪音大講師)、アルト独唱・荒田祐子(大阪音大助教授)。

午後5時から前売り券購入者に座席引換券が交付されるのだが、そのシステムにはどう考えても無理がある。キャパ数十名の小さなホールならわかるが、ザ・シンフォニーホールは2000人以上収容の大型ホールである。
ホールに着いてみると、案の定、人がホール入り口の階段を、列になって埋め尽くしている。そんなこんなでチケットを引き替えるまでに1時間近く並ぶ。席は大学側が無作為に選ぶ、って前売りの意味がないじゃないか。どうしてこんなシステムにしなくてはならないのか良くわからない。
二度手間である上に、寒空の下で延々と待たされるのは余り気持ちの良いものではない。しかも場合によっては開演時間が押す可能性がある。良いことなんて一つもないじゃないか。

というわけで、チケットシステムに大いに失望しつつホール内へ。開演時間が押すことはなかったが、隣りに座った母娘の会話を聞いていると、引き替えのために並んでいる人は開演直前までいたそうだ。なんだかなあ。

大阪音楽大学の関係者が仲間を連れて聴きに来ているので、開演直前まで、ホール内は会話のさざ波にひたされる。

ブラームスの大学祝典序曲。ヴァイオリンは全員女性。それが影響したのかどうか、一応弾けてはいるのだが、響きは薄く、たまに縦の線がずれそうになる。だがそれ以上に問題なのが管で、ホルンは音が不正確、トランペットは音が汚い。それに奏者の身振りが全員大きく、体をグルングルン回しながら吹いていて視覚的も気になる。指揮者が弱音を指示してもそれをきちんと出せないのでバランスも良くない。これでは西本も交通整理に徹して大事故が起きないようにするしかない。先が思いやられる演奏であった。

だが、後半のマーラーの交響曲第2番「復活」では、年配の奏者が要所要所に配される。どうやらブラームスは学生中心。マーラーはプロを多く揃えた陣容で臨むようである。
「復活」はブラームスとは比べものにならないほど良い出来。もちろん、臨時編成の、それも学生を多く加えた演奏だから限界はある。弦は少し非力だし、管もブラームスに比べると格段に良いが、それでも音外しはいくつもあった。
しかし、西本の指揮が素晴らしかった。まだ若いので、苦悩の表出はやや浅かったが、死への恐怖と、それとは対照的な彼岸への憧れを的確に描いていく。西本の指揮姿は、大植英次や佐渡裕といった、関西で活躍する他の指揮者(二人はレナード・バーンスタインの弟子である)の全身全霊没入型とは異なる非常に端正なものだ。力みも何もなく振り下ろした棒から内容を伴った凄まじい響きが引き出される。見た目は軽く振っているのにオケが大音量で鳴る様は非常に格好良い。

構築力も万全で、女性指揮者云々を抜きにしても優れたマーラーであった。オーケストラに多少足を引っ張られ気味ではあったが。

最近は、世界的に女性指揮者の活躍が目立ち始めており、エストニア出身のアヌ・タリなどは、「クラシック界のジャンヌ・ダルク」と呼ばれて人気のようだ。だが、アヌ・タリと西本智実と両方の実演に接しているから言えるのだが、現時点での実力は西本の方が上である。アヌ・タリに感じられた力みが西本からは全く感じられない、それでいてオケは西本の方が良く鳴る。圧勝である。

今日はオーケストラが万全ではなかったが、もし西本がプロのオーケストラでマーラーを振ったら、大植英次といい勝負なのではなかろうか。お世辞でも贔屓目でもなく本当にそう思う。

私も最初は西本を、「人気と話題先行の指揮者かな」と思っていたのだが、京都市交響楽団の演奏会と今日の演奏を聴いて、「むしろ実力に評価が追いついていないのでは」と、逆の考えを持つようになった。クラシック界では容姿の良さは逆にマイナス評価に繋がりやすい。専門家に「どうせアイドル的な人気だろう」という目で見られるからだが、西本の場合も、彼女の宝塚男役風の容貌に惑わされて、本当の才能と実力に気づいていない人も多いのかも知れない。

後記:西本智実は音楽性と得意レパートリーが大植英次と似ているので、女・大植英次なのではないかと個人的には思っています。

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