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2011年7月 9日 (土)

観劇感想精選(80) 「琉球ロマネスク テンペスト」

2011年3月7日 大阪・上本町の新歌舞伎座にて観劇

午後6時30分より、大阪・上本町(うえほんまち)の新歌舞伎座で、「琉球ロマネスク テンペスト」を観る。新歌舞伎座は元は難波にあったのだが(現在も建物だけは残っている)そこを閉鎖し、上本町に移転して、再スタートしたばかりである。大阪城に間違われたこともあるという元の新歌舞伎座とは違い、新しい新歌舞伎座(というのも変な表現だが)はスタイリッシュなビルの上階部分にあって、外観は劇場という感じではない。

「琉球ロマネスク テンペスト」は、沖縄出身の作家・池上永一の小説を原作に、「フラガール」の羽原大介が脚本を手掛け、「トリック」の堤幸彦が演出した舞台である。音楽は「川の流れのように」の見岳章。
19世紀後半の琉球を舞台に琉球王朝の滅亡を描く叙事詩。上演時間は30分の休憩を除いて、2時間50分の大作である。

主演は、沖縄県出身で、若手トップにランクされる仲間由紀恵。出演は、山本耕史、福士誠治、安田顕、伊阪達也、野添義弘、大沢健、田鍋謙一郎、森山栄治、海老澤健次、兼崎健太郎、長渕文音、野際陽子(ナレーション。声のみの出演)、西岡德馬、生瀬勝久ほか。

仲間由紀恵3年ぶりの舞台である。キャストが前回の「ナツひとり」と重なっていたり、演出が堤幸彦というのが、仲間由紀恵が守りに入っているように見えて気になるところではある。

なお、この舞台で西岡德馬は、何と5役に挑戦する。もともとは2役だけだったのだが、西岡がどうしても他の役もやりたいということで、役が増えたとのこと。

まず、野際陽子のナレーションと、映像によりスタート。19世紀後半の、琉球。琉球王朝は清国に朝貢し、宗主国となって貰うと同時に、日本の薩摩藩にも属するという二重朝貢の形となって、不安定な状態が続いていた。真鶴(仲間由紀恵)はそんな琉球の現状を嘆いて子供の頃から勉学に励み、英語、オランダ語、ポルトガル語、マンダリンをマスターし、他の学問にも通ずるなど、英才ぶりを発揮。女であることを偽って名を孫寧温と変え、男として科試(こうし。清朝でいう科挙に当たる)に首席で通り、評定所筆者主取に抜擢される。

首里城に上がる前日、父親(西岡德馬)の前で琉球舞踊を舞う真鶴。これが女として最後の姿になると嘆息する父親、すると、父親に雷が落ち、父親は「ガジュマルの木に勾玉がある」ということを真鶴に伝えて絶命してしまう。真鶴が探し出したのは龍の勾玉。これは琉球王朝の正統な後継者であることを伝える重要な証拠であった。

首里城に上がった、真鶴こと孫寧温は、科試で次席になった喜舎場朝薫(安田顕)とともに、財政改革に乗り出し、徹底した倹約政策を打ち出す。

琉球王朝で高い位を持つ、予言者の聞得大王(きこえおおきみ。生瀬勝久)の在所も予算を削ることにするが、聞得大王は黙ってはいない。「髪の短い、白い服を着た女が『2位じゃ駄目なんですか』と言ったりすることになりますが、駄目なんです」と事業仕分けに反対する。聞得大王は「2011年弥生には春場所が中止になる」と予言するなど、時事ネタも取り入れる。

そんな中、尚育王(西岡德馬)が死去。尚泰王(伊阪達也)が即位する。

孫寧温と喜舎場朝薫は、薩摩藩に借金の願いに出向く。薩摩の道場一の腕利きである浅倉雅博(山本耕史)に、「60万石の薩摩が幕府の中の一藩なのに、12万石の琉球が独立国というのはおかしいんじゃないか」とあしらわれる二人。しかし、孫寧温と浅倉雅博はその後も関係を深めることになる。

琉球に視察にやって来た浅倉は、孫寧温と友人になる約束をする。その頃、清国の役人・徐丁孩(西岡德馬)が琉球に阿片を売りつけようとしていることを知った孫寧温は徐丁孩を問い詰めるが、逆に女であることを見抜かれてしまう。

国相として琉球に乗り込んできた徐丁孩に、死罪覚悟で斬りかかる孫寧温。浅倉も助けに入るが、崖の上から、孫寧温は身を挺して、徐丁孩とともに飛び降りる。徐丁孩は下まで落ちて、墜落死するが、孫寧温は勾玉を付けて首にかけていた紐が木に引っかかり、一命を取り留める。しかし、国相を殺したという罪は重く、喜舎場朝薫と浅倉雅博の嘆願により死罪は免れるが、八重山諸島に島流しとなる。

勾玉の存在を知った聞得大王は勾玉を奪い取ろうとするが、逆に地位を追われ、ユタ・真牛(もうし)に格下げとなってしまう。黒船がやって来ると予言する真牛。

八重山で、真鶴となって再び女性として暮らしていた孫寧温だが、踊っているところを、島の在番(西岡德馬)に、そこの「美しい隣人」と呼び止められ、女として首里城に登るよう勧められる。てっきり踊り子としての採用かと思った真鶴であるが、実は「あごむしられ」(側室)選びに参加させられたのだった。尚泰王のあごむしられに選ばれる真鶴。その頃、真牛の予言通り、アメリカ東インド海軍提督マシュー・ペリー(西岡德馬)が黒船を率いて琉球沖にやってくる。ペリーと折衝するためには、孫寧温の存在が必要になるのだが…

琉球王朝の悲劇を、真鶴と浅倉とのロマンスを絡めながら、壮大に描いた舞台。役者達はみな白熱しながらも余裕を持って演じており、プロの技に唸らされる。身長160cmと女優としては小柄ながら、琉球舞踊(師範代レベルの腕前)や、殺陣、良く通る声で存在感を出した仲間由紀恵の演技は流石。英語のセリフなどもこなす(残念ながらマンダリンは通じるレベルになっていはいなかった。やはり難しいのだろう)。「テンペスト」はNHKドラマとしても別収録され放送されるということでキャスティングされたと思われるNHKの顔・山本耕史も豪快にして凛々しい薩摩隼人を演じてみせる。

おかまで踊り子の、孫寧温の兄・孫嗣勇を演じる福士誠治の評判は余り良くないようだが、かなり健闘しているのではないだろうか。

ナレーションや映像、CGを多用した堤幸彦の舞台作りは好悪を分かつと思うが、エンターテインメントとしてはなかなかいいと思われる。

喜舎場朝薫を演じた安田顕もいい味を出しており、また、おそらく彼がいなかったら仲間由紀恵も出演をOKしなかったと思われる生瀬勝久の演技も格好良かった。

平和のために、美や教養を重んじよというメッセージも力強いものであったように思う。

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