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2011年12月21日 (水)

コンサートの記(78) 河村尚子ピアノ・リサイタル2011京都

2011年10月26日 京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホールムラタ」にて

午後7時から、京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホールムラタ」で、今年30歳になる若手ピアニスト河村尚子(かわむら・ひさこ)のソロ・リサイタルに接する。
河村尚子は兵庫県西宮市の生まれ。父親の仕事の関係で幼くしてドイツに渡り、音楽教育もドイツで受ける。今もドイツのハノーファー在住である。2006年、ミュンヘン国際コンクール・ピアノ部門第2位、2007年のクララ・ハスキル国際コンクール・ピアノ部門で優勝を果たしている。
関西生まれということで、京都市交響楽団、大阪シンフォニカー交響楽団(現・大阪交響楽団)、関西フィルハーモニー管弦楽団などに客演。私も何度も実演に接しているが、ソロ・リサイタルに接するのは初めてである。

曲目は、J・S・バッハ/ブゾーニの「シャコンヌ」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」、ショパンの前奏曲嬰ハ短調とピアノ・ソナタ第3番という豪華なものである。

河村はグレーとピンクの混ざり合ったドレスで登場。私は下手側の席だったので、河村の手の動きが良く見える。何か魔法のようなものがかかっているんじゃないか思うほど俊敏に動く。実は河村尚子は愛らしい外見とは裏腹に魔女のような声の持ち主で、本当に魔法を使っていそうなところがある。

「シャコンヌ」。河村の奏でる音楽のスケールは大きく、音色はクリアである。ただ、低音を強調することで、人智を超えた音楽のように感じさせるなど、一筋縄ではいかないピアニストだ。

ベートーヴェンの「月光」。第1楽章は技巧的には簡単で、私でも独学で弾けたほどだが、河村は速めのテンポを採用し、他のピアニストが強めに弾くところを敢えて柔らかく弾いたりするなど、やはり個性的なピアノである。速めのテンポで幻想的な雰囲気を強調するということは並のピアニストでは思いつかないところである。普通は逆に遅くする。
アタッカで弾かれ始めた煌めくような音色の第2楽章を経て、やはりアタッカで疾風怒濤の第3楽章に突入。3つの楽章からなるソナタではなく、3楽章形式で書かれた一曲の幻想曲という解釈のようである。第3楽章でも音がクッキリしている。あれだけ速いパッセージで音が濁らないということは、ペダリングを含めた技術が抜群なのだろう。聴衆を圧倒して前半を終える。

後半。河村は衣装を変えることなく登場。ショパンの前奏曲嬰ハ短調では透明感ある音色を生かした独特の音楽世界を構築。
メインのショパン、ピアノ・ソナタ第3番では技術だけでなく、深い楽譜の読みを感じさせる見事な演奏を聴かせた。

アンコール。まず、シューマン/リストの「献呈」が弾かれる。その後、聴いたことのないピアノ曲が弾かれる。ロマンティックでウエットな音楽であったが、実は作曲者はリヒャルト・シュトラウスで、「さびしい泉のそばで」という曲であった。リヒャルト・シュトラウスは管弦楽法の天才で、そちらばかり注目されるため、ピアノ曲を聴く機会は滅多にないので、貴重な体験であった。

ラストはリストの「愛の夢」第3番。河村はサンソン・フランソワのような絶妙の歌い崩しを見せる。サンソン・フランソワにしてもファジル・サイにしても変人系のピアニストなので、そうでないピアニストを求めて河村に行き着いたのだが、河村は変人でこそないが、やはりフランソワとどこか繋がるところのある人で、私のピアニストの好みは実は変わらないということが確認出来た。ロマンティックでチャーミングな出来であった。

最後は、ピアノの蓋を閉じて終了。生地である西宮で行われたピアノ・リサイタルでも同じことをしていたのはわかっていたので、それを直に見ることが出来たのも楽しかった。

終演後、サイン会があり、買った輸入盤CDに河村のサインを入れて貰う。輸入盤は盤面が黒で、ライナーノーツも黒が基調のモノクロであり、仕方がないので、ライナーノーツの河村の顔写真(そこだけが白い)の部分にサインを入れて貰った。

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