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2013年5月 1日 (水)

コンサートの記(87) シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団演奏会大阪公演2012

2012年12月17日 NHK大阪ホールにて

午後7時から、大阪・谷町四丁目にあるNHK大阪ホールで、NHK交響楽団大阪公演を聴く。指揮者は、N響名誉音楽監督のシャルル・デュトワ。

 

プログラムは、ラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」(タイトルの訳はプログラムの表記に準拠)、サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番(ピアノ独奏:児玉桃)、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」。

 

関東にいたときは最も多くコンサートに接したシャルル・デュトワとN響のコンビであるが、京都に移住してから聴くのは二度目。前回は千葉への帰省中に東京・渋谷のNHKホールで聴いたので、関西で同コンビの演奏を聴くのは初めてである。関西に来てから、デュトワ指揮のコンサートはチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演を旧フェスティバルホールで、N響はスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮の京都コンサートホールでの演奏会を聴いている。

 

NHK大阪ホールは、NHK大阪局舎内に2001年に出来た多目的ホールで、設計は東京・渋谷にあるN響の本拠地・NHKホールをそのまま小ぶりにした感じである。多目的ホールだけにクラシックのコンサート会場としては音響面が不評で、クラシックのコンサート数自体が少ない。N響はほぼ毎年公演を行っており、日本センチュリー交響楽団も公演予定があるようだが、それ以外はポピュラー音楽の公演が目に付く。海外のオーケストラがここでコンサートを行ったのは、オープン記念に招待された韓国版NHK交響楽団で、NHKと友好関係にあるKBS交響楽団(ドミトリー・キタエンコ指揮)以外にあるのかどうかはわからない。私がNHK大阪ホールで聴いたコンサートはこれまでは全てポピュラーだったので、クラシックの演奏会をここで聴くのは初めてである。

 

なお、局舎の三階にあり、上がるにはエスカレーター二台とエレベーターが一台あるだけなので、開演時と終演後は混雑する。東京・池袋の東京芸術劇場や名古屋・栄の愛知県芸術劇場コンサートホールと同様である。

 

 

 

8年ぶりに接するN響のコンサート。その間にN響のメンバーも大きく変わった。磯辺(クラリネット)、松崎(ホルン)、津堅(トランペット)、百瀬(ティンパニ)などの古参メンバーが消え、若手が多くなったのは当たり前であるが、女性団員が少なくなり、新たに入った若い女性団員になぜか美人が多い。オーケストラの場合、カーテン越しのオーディションが原則なので顔採用は絶対にあり得ない(カーテンの向こうで演奏され、名前も性別も年齢も不明のまま審査される)。たまたま美人系が揃ったのだろうか。あるいは、容姿に自信のある女性奏者がオーケストラ界の東大ともいうべきN響を受けた結果か。

 

一方で、N響の顔となった茂木大輔(首席オーボエ奏者。エッセイストとしても著名で、ドラマ&映画「のだめカンタービレ」の音楽監修を務めたことで一段と知名度が上がった。「のだめカンタービレ」コンサートの主催者の一人でもあり、そこでは念願だった指揮者としても活躍している)、首席チェロ奏者の木越洋、元祖N響の美女・池田昭子(オーボエ奏者)などが健在である。
今日のコンサートマスターは、「マロ」の相性で親しまれている篠崎史紀。N響の普段の定期演奏会とは異なり、チェロが前列に来るアメリカ式現代配置での演奏である。

 

客席には、以前、N響の副指揮者を務めた岩村力も聴衆として座っていた。

 

 

 

「優雅で感傷的なワルツ」。N響の弦はしなやかで管の音も通りが良い。デュトワの指揮も強弱の付け方が絶妙、であったが、やはりホールの音響に問題があるようで、オーケストラの音が乾いて聞こえ、例えばザ・シンフォニーホールならもっと美しく響きはずの音が伝わってこないもどかしさがある。

 

児玉姉妹の妹、児玉桃(姉はピアニストの児玉麻里。児玉麻里が結婚したケント・ナガノは現在、かつてデュトワが長期政権を担ったモントリオール交響楽団の音楽監督である)のソロによる、サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番。ピアノソロによる出だしの後に来るオーケストラの二つの和音がモーツァルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」の冒頭にそっくりである。初演は準備不足のために大失敗だったとされる曲だが、刺激的でなかなか面白い。
児玉桃のピアノは徹底的に磨き抜かれた硬質のもので、技術も表現も盤石である。鍵盤を舐めるような弾き方をするピアニストの対極にあるものだ。
デュトワ指揮のN響の伴奏も力強い。

 

 

 

メインのリムスキー=コルサコフ作曲、交響組曲「シェエラザード」。デュトワの十八番の一つであり、DECCAにモントリオール交響楽団と録音したCDは史上トップランクの名演。デュトワはその後、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した、モントリオール響盤の更に上を行く超名演を録音している。

 

オーケストラの力強さ、また微妙にニュアンスを変えていくデュトワの巧みな音作り。ホールの音響とN響というドイツ音楽に特化し続けたプログラムを長く続けたオーケストラの影響もあって、録音を凌ほどの名演にはならなかったが、ライブとしては十分に納得のいく出来である。

 

アンコールは、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」から“行進曲”。「くるみ割り人形」はクリスマスを舞台にしたバレエだけに12月の演奏会に選ばれたのだろう。

 

最後に、デュトワはファンにはおなじみになった、客席に向かっての両手バイバイで退場。コンサートはお開きとなった。

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