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2013年6月 9日 (日)

指原莉乃 アイドル界の革命児

初めに記しておくが、私はAKBのファンではない。AKBのCDも持っていないし、ましてやグッズも所持していない。カラオケのレパートリーにAKBの曲は何曲か入れているが、それは確実に受けるからであって好きだから歌っているわけではない。AKBの楽曲は歌唱力はさほど必要とせず、聴き映えがするという音楽的には最も優れたものが多い。もっとも秋元康は歌詞の書きすぎで年々クオリティが下がっているのは否めないが。

そんなAKBファンでもない自分でも、メンバーの中には注目に値する人物が数名いることはわかる。いわゆる天才に分類される子もいる。天才というのはありふれた存在ではないため、私が本当の天才だと確信しているのは約1000倍といわれるオーディションを勝ち抜いた猛者揃いのAKBグループ中でも3人だけだ。才能のある順に、松井珠理奈、高橋みなみ、そして指原莉乃である。

今日は、AKB総選挙で1位になった指原莉乃について書いてみたい。

指原莉乃はAKBの中でも異色の存在だ。敢えて美人は揃えないという方針のAKBグループの中にあっても、指原は美人の部類からは遠い存在である。ただ、これまでもAKBの裏エースとしての活躍はあった。かつてのAKB48の二枚看板である前田敦子や大島優子さえ持てなかった、自分がメインのバラエティー番組を持っていたこと(「さしこのくせに」。関東ローカルのため私は見たことはない)、そして指原をモデルにした漫画が存在するなど、実質的にはこれまでもAKBの看板の一人だった。

指原の武器は何といってもAKB随一といわれるトーク力だ。バラエティ番組にはAKBの代表として参加することが多かった。バラエティ番組でアイドルというと、どちらかといえばお飾り的になることが多いのだが、指原の場合は自ら率先して笑いを取りにいっていた。

もちろん、これまでにも容姿よりもトーク力を武器にしてきたバラエティアイドル、いわゆるバラドルはいた。だが、指原はバラドルとも違う。全く新しいタイプのアイドルなのだ。

アイドルというと、多芸多才を売りにする場合も多いが、指原はトーク力以外には芸らしい芸は持っていない。アイドルオタクでアイドルには詳しいらしいが、それは武器にはならない。そんな指原の特徴はとにかくビビり、臆病であるということだ。そのためか秋元康がいうように「何をやってもことごとく駄目」であり、「へたれ」というアイドルらしからぬレッテルを張られることになる。しかし、指原が凄いのは「へたれアイドル」というニュージャンルを確立しつつあるということだ。「へたれアイドル」などと呼ばれるアイドルはこれまでの芸能史の中には存在しなかった。いや「へたれアイドル」に該当する人物は存在していたかもしれないが売れないアイドルとして終わっていた。しかし、指原は駄目な自分を隠さないことで、逆に男性の本能をくすぐるということに成功した。多くのAKBファンは思ったはずだ。「この子には俺がついていないと駄目だ」と。

しかし、指原はそれほど弱い存在ではないし、かといって強靭な精神力の持ち主でもない。

男性絡みのスキャンダルもネタにしてしまうほどの強かさを持ちながら、ネガティブ発言の数々で、「前へ前へ」というアイドルに必要とされる押しの強さが中和される。アイドルらしからぬ子がアイドルになっている。

もちろん、AKBグループの一員であったからこそ、現在の人気を勝ち得たのは事実だ。だが、AKBグループの中でも序列はあり、指原のようなタイプは普通なら総選挙で1位を獲れるとは考えにくい。しかし指原は1位を取るほどの人気を勝ち得た。

これまではアイドルと言えば顔が命であった。しかし指原はそんな常識をいとも簡単に覆してみせた。指原こそがアイドル界の革命児である。

昨今、容姿偏重主義が跳梁跋扈しているとしかいえないような勢いで浸透している。しかし指原はそんな風潮にアンチテーゼを掲げる。本人は無意識のうちに。

トーク力に秀でていること、己の弱さを隠さないこと、それでいて強かであること。この絶妙の「アンバランス」さこそが指原の魅力だ。

指原莉乃は英語が得意である。AKBのオーディションに合格出来なかったらアメリカに語学留学に行く予定だったと聞いている。一方、数学は大の苦手で一桁の計算でも間違うほどだ。学力でもアンバランスなのである。

しかし、そんなアンバランスな状態の人物に人は惹かれる。アンドリュー・ワイエスが敢えてバランスの悪い構図で画を描いたように、アンバランスさには「見ていなければ危うい」という気持ちを人々に抱かせ、結果として視線が対象物に向かうことになる。

そしてそれが計算されたものでないからこそ、指原は天才の称号に値するのである。
指原の持つ強さと弱さのアンバランスさは見ているものをハラハラさせる。そんな「放っておけない」駄目な子が人気を集める。優秀なサラリーマン製造のためにバランスの取れた人間になるよう教育を施された日本人に対して、指原はここでも無意識にアンチテーゼを掲げてみせる。とにかく指原というのは凄い存在なのだ。

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