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2013年7月10日 (水)

コンサートの記(94) 河村尚子ピアノ・リサイタル「河村尚子のバラード」西宮公演2013

2013年6月9日 兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて

午後2時から、西宮にある兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで、河村尚子(かわむら・ひさこ)のピアノ・リサイタル「河村尚子のバラード」を聴く。

河村尚子は1981年、西宮市生まれの若手女性ピアニスト(ピアニストの場合、大体、40歳ぐらいまでは若手の部類に入る)。そのため、今回は凱旋公演ともなるのだが、5歳の時に家族と共にドイツに移住、今に到るまでドイツ在住であるため、西宮時代の記憶はほとんどないと思われる。ドイツでは日本人学校に通っていたようで、ヴァイオリンの庄司紗耶香のようにドイツ語よりも日本語が苦手ということはないようだ。子供の頃の愛読書は「ドラえもん」であったというから、親しみも持てる。ルックスも特別な美人というわけではないが、「チャコ」と呼びたくなるような愛嬌がある。ドイツ育ちということを感じさせるのは一般的な日本人に比べて歩幅が広いということくらいである。
ハノーファー国立演劇音楽芸術大学、同大学院ソリストコースを修了。大学在学中にミュンヘン国際コンクール2位、クララ・ハスキル国際コンクールでは優勝に輝いている。現在ではソリスト活動の他に、ドイツの音楽大学の非常勤講師、そして日本でもこの春より東京音楽大学で特任講師を務めているようだ。

私が河村のピアノに初めて接したのは京都市交響楽団にソリストとして彼女が招かれた時。指揮は小林研一郎で、曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲だったと記憶している(後日、日記で詳細を調べる予定)。その際の河村の印象は、「とにかく楽しそうにピアノを弾く人」というものであった。

その後、京都市交響楽団の定期演奏会のソリスト(広上淳一の指揮で演奏したラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」はライブ録音が行われ、CD発売済みである)として、また京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホール・ムラタ」でのソロ・リサイタル、関西フィルハーモニー管弦楽団やオーケストラ・アンサンブル金沢のコンサートでのソリストとしての演奏に接している。関西出身ということが関係あるのかどうかはわからないが、関西でも多くコンサートに出演してくれるのはありがたい。

ピアノソロによるCDはショパンを弾いたアルバムが国内盤で2点出ているがいずれも名盤である。輸入盤のみのCDも2点あったが、現在は1点は廃盤となり、代わりにその音源を日本のレーベルが買い取って、音に改良を重ねた国内盤として再発売された。協奏曲のCDは協奏曲と名の付くものは現時点ではなし。オーケストラとの共演は前述の広上淳一指揮京都市交響楽団との「パガニーニの主題による狂詩曲」が京都市交響楽団自主制作盤として出ている。

河村尚子の演奏はどちらかというと個性派の部類に入る。サンソン・フランソワやグレン・グールド、ファジル・サイほどではないが、個性を全面に出し、彼女でなければ思いつかないであろうパッセージの歌い方をしたり、普通の奏者が強く弾く箇所を敢えて弱音で奏でたりする。京都でのピアノリサイタルではそれが顕著であったが、今回は曲目のためかそれほど明らかではなかった。

地元出身の期待のピアニストということで、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールは満員の盛況であった。演奏会終了後にはサイン会が行われることが決まっており(彼女の出演する演奏会は公演終了後にサイン会が行われることが比較的多い)、KOBELCO大ホール入り口の後方にある売店では特別にサイン色紙が売られていた。なお、サインを頂くには特に買い物をする必要はなく、無料で配られるパンフレットでもOKとのことだったが、ピアノ・リサイタルのパンフレットにありがちなことではあるが、安い紙を使ったペラペラのものであるため、サインを希望する多くの人は色紙やCDを購入していた。私も河村尚子のサインは京都と金沢で貰っているが、高音質化されたCDに興味があったので(彼女が21歳の頃に、初のレコーディングを行ったテイクが用いられている。なお同じ音源による輸入盤CDは京都でのソロ・リサイタルの時に購入しており、河村からサインも貰っている)購入し、サイン会に参加することに決める。

「河村尚子のバラード」というタイトル通り、後半のメインプログラムはショパンの「バラード」全4曲である。前半は、J・S・バッハの「平均律クラヴィーア曲集第2巻」より第12番、ベートーヴェンの「自作の主題による32の変奏曲」、ブラームスの「ピアノ小品集」作品118全6曲という、いかにも河村らしいというか、個性的な曲目が並ぶ。

今日の河村は鮮やかなグリーンのドレスで登場。女性演奏家の場合、前半と後半で衣装を変えるのはよくあることだが、河村は前後半ともに同じ衣装で通した。

J・S・バッハの「平均律クラヴィーア曲集第2巻」より第12番では、厳しく硬質の音色と、甘く柔らかな音色を同じに使い分けるという魔術的演奏を展開。メカニックは冴えに冴えており、おそらく技術面においては彼女に勝る日本人女性ピアニストは存在しないと思われる(表現面ではまた別である)。後半にはおなじみとなったノリノリの演奏となる。指の回転の速さはほとんどスピード違反級で人間業とは思えないところがある。

ベートーベンの「自作の主題による32の変奏曲」では変奏の数々を巧みな表現で描き分ける。

ブラームスの「ピアノ小品集」は6曲全て個性が異なるということもあって、河村の表現力の幅広さが、大バッハやベートーヴェンの作品よりもはっきりとわかる。

 

後半、ショパンのバラード4曲。いずれもスケールの大きな演奏であった。河村はフォルテは多くのピアニストと比べて強めに弾くが、他の多くのピアニストのようにエッジの立った音ではなく、どこか柔らかさが残る。弱音も他のピアニストより弱めに弾くが、広がりのある弱音であり、単に音を弱くしただけではない。

最も有名なバラード第4番では、ラスト付近で、鍵盤を強打した後、両手をピアノから素早く離して腰を左に捻り、体を斜め後ろに傾ける、つまりピアノにはじき飛ばされたように見えるという演劇的工夫を凝らしていた。

アンコール。河村は珍しい曲をアンコールで弾くことがあるが、第1曲目は誰もが一度は耳にしたことがあると思われるシューベルトの「楽興の時」第3曲であった。河村は体を揺らしながら楽しそうにピアノを弾く。

2曲目は美しいが聴いたことのない曲であった。コンサートスタッフも珍しい曲なので、曲目の確認に時間が掛かったようだが、J・S・バッハの「羊はやすらかに草をはみ」をペトリという人物がピアノ独奏用に編曲したものであることがわかった。

サイン会にはやはり地元出身のスターということもあって長蛇の列が出来たが、無事サインを貰うことが出来た。

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