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2013年9月16日 (月)

観劇感想精選(101) 野村萬斎演出 三島由紀夫「サド侯爵夫人」

2011年3月24日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて観劇

午後6時より梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで「サド侯爵夫人」を観る。作:三島由紀夫、演出:野村萬斎。出演:蒼井優、美波、神野三鈴、町田マリー、麻実れい、白石加代子。

三島由紀夫の代表的な戯曲の上演。全3幕、二度の幕間休憩各15分を含めて上演時間約3時間45分という大作である。また三島の作品だけに高度な文学的楚辞が散りばめられていて、普段耳にしない言葉や表現、過剰な装飾が多いため(擬バロック様式とでもいうべきものだ)、集中していないと、セリフやその意味が聞き取りにくいということになり、観客にも高いコンセントレーションが求められる。

第1幕は1772年、9月。第2幕は1778年、9月。第3幕は1790年、4月という時間設定。舞台はいずれもモントルイユ夫人(白石加代子)の屋敷の一室である。

『悪徳の栄え』、『美徳の不幸』などを著し、サディズムという言葉の語源ともなったサド侯爵(マルキ・ド・サド。正式名:ドナスィヤン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド)の夫人であるルネ(蒼井優)を主人公とした舞台である。サド侯爵本人が舞台上に姿を現すことはない。セリフが長く、演じ手の動きが少ないことでも知られる戯曲である。

役者の動きが少ないということは、アクションで魅せることはできないということであり、演出が難しくなる。野村萬斎は、照明を効果的に用いることでこの難点をクリアしてみせる。
舞台にはシャンデリアが吊るされているが、第1幕、第2幕の冒頭で、いずれも低い位置にあったシャンデリアを家政婦のシャルロット(町田マリー)が綱を使って引っ張り上げる(実際には裏方によって上げられる)というシーンが用意されていた。第3幕になってそれがどういう意味なのかがわかるようになっている。

サン・フォン伯爵夫人(麻実れい)とシミアーヌ男爵夫人(神野三鈴)がモントルイユ夫人の屋敷に呼ばれ、主にサン・フォン伯爵夫人によってサド侯爵の性癖と性的嗜好、そしてこれまでのいきさつが語られる第1幕。ルネの妹であるアンヌ(美波)がサド侯爵が釈放されるという情報をルネにもたらし、その後、ルネと、ルネの母親であるモントルイユ夫人の言葉による激しい応酬のある第2幕。ルネが修道院に入ることを決め、サド侯爵を礼賛し、意外な結末を迎える第3幕からなる芝居。第1幕と第3幕の間には18年もの隔たりがある。

映画や舞台などの演技で高い評価を得ている蒼井優の演技がまず素晴らしい。この人は理知型と憑依型の両方の演技が出来るという得難い女優で、頭で作った演技も、ラストのそれこそ憑りつかれたような表現もいずれも優れている。またバレエなども得意としているため、ちょっとした動きにもキレがある。二十代の舞台女優としてはトップレベルにあると思われる。

憑依型女優の代表格である白石加代子も明瞭なセリフとキッチリした演技を見せていて流石である。

サン・フォン伯爵夫人を演じた麻実れいの妖艶な演技も魅力的。他の女優達もいずれも好演であった。

言葉とイメージによる壮大な伽藍が形作られ(文学論、芸術論、人生論でもある)、それが現実によって一気に凍りつくという劇展開は巧みであり、三島の傑出した資質が垣間見える。

後にフランス国歌となった「ラ・マルセイエーズ」が流れる中でカーテンコール。多くの観客がスタンディングで女優たちを称えた。

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