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2013年10月22日 (火)

これまでに観た映画より(57) 「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」

2013年9月22日 大阪・玉江橋のABCホールにて

午後1時から、大阪の玉江橋にあるABCホールで、第10回王立劇場の公演でもあり映画でもある「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明withドナインシタイン博士のひみつ学会2013」を観る。
観るとは書いたが実際は観ただけではないし、「公演でもあり映画でもある」とはどんなものを観たのかと思われる方もいらっしゃると思う。デルシネとは「出るシネマ」のことで、観客も映画の出演者として参加し、それを映画の幾つかのシーンに当てはめて、編集して出来た本編を完成版映画として観るというものである。関西は勿論、全国的に活躍している劇作家で演出家でもある後藤ひろひと(吉本所属)が脚本を書き、メガホンを取った作品であり、今年の春に行われた沖縄国際映画祭(吉本興業主催の映画祭である)で初公開されたものである。その時も沖縄の観客に演技して貰ってそれを編集して本編に組み入れてから上映している。

撮影に1時間、編集に1時間、上映時間も約1時間ほどなので、計3時間ほどの公演となる。編集の間は、後藤ひろひとが主宰を務める劇団であるPiper所属の舞台俳優である川下大洋(吉本所属)演じるドナインシタイン博士が、映画「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の主演女優である桜 稲垣早希、そして後藤ひろひとの古くからの知り合いで、以前は後藤が座長を務めていたこともある遊気舎の現在の座長である久保田浩(吉本所属)とのトークで繋ぐ(後藤は遊気舎の二代目座長、久保田は三代目座長となる)。

まずは、後藤ひろひとが登場し、デルシネの趣旨を説明する。チケットにも観客は映画に参加して貰う旨が書かれており、「当日は動きやすい格好でお越し下さい」というチケットに印刷された文章とは思えないようなものまで添えられている。後藤も「まあ、皆さんお分かりですよね」と言って、早速撮影開始。座席番号により5つのグループに分けられ、それぞれが撮影を行う。私が参加したグループの演技(というより動作)は、かなり楽で、「え? この程度でいいの?」と思ったほどだが、別のグループの中には体力を使うシーンがあるなど大変そうなものもあった。私も体を使う場合を想定して、普段穿いているチノパンではなく、スウェットパンツにしたし、上着は「どうせ出るなら目立とう」ということで、東京ヤクルトスワローズのビジター用レプリカユニフォームを着て行った。ただでさえ目立つが、関西にスワローズファンはほとんどいないので一層目立つ。ということで服装の準備は万端であったのだが、私のいたグループの場合は服装は特に動きやすいものである必要はなかった。スワローズのレプリカユニフォームが目立ったということだけが有意味である。

撮影の長いグループもいるので、私達のグループは劇場後方のスタッフ用ドアを開けたところにある廊下で待機。スタッフは吉本の若手芸人達であり、私のグループを担当した芸人さんは私も知っている人だった。というわけで、コンビ名と特技を挙げると「え?! よくご存じですね」と驚かれたので、「祇園花月の前説でよく見ますから」と正直に答えた。コンビ名を明かしてもいいのだが、彼らには実力で這い上がって欲しいし、ここに書いても彼らを知らない人が圧倒的多数であると思われるので、敢えてコンビ名は出さないでおく。

待ち時間が長いというので、芸人さんが特技を披露して場を盛り上げる。だが、まだ撮影が続いているので、「しりとりをしましょう」ということになり、「ただし、前の人が答えたものよりも大きなものを答えるという条件つきでやりましょう」というルールでしりとりスタート。私には「き」が回ってきたので、京都在住ということを示すために「京都市中京区」と答える。京都市の上京区、中京区、下京区の三区は面積がとても狭い。中京区の面積はわずか7・38㎢である。ちなみに、中京というのは、近代に入ってから作られた言葉で、それまでは京都には上京と下京しかなかった。中京というと普通は名古屋の別称を思い浮かべるだろう(ただし中京区は「なかぎょうく」と読み、名古屋を指す中京は「ちゅうきょう」と読む。読み方が違うだけでなく、中京区の場合は京を濁音つきで発音する)、その後、「九条」(京都にも大阪にも「九条」という場所はあり、共に広大であるが、正確な面積は不明である)と続くが、その次の人が「海」と思いっ切り拡げてしまう。ただ「瀬戸内海などの小さい海ということで」と続ける。もうそろそろ国名を出そうということになり、「ミャンマー」で、次は「ま」となる。アドバイスをする人がいたので、アフリカの「マリ」が挙がる。次は「り」で「流星群」と答えるが、「ん」が最後についたのでアウトとなる。だが、私が「『り』でありますよ。リゲル。オリオン座の」と言ったので、芸人さんも「格好いい言葉で終わりになりました」というが、先頭の人に「リゲルより大きなものは?」と続けるフリをする。フリなので、すぐにやめて劇場内を見に行き、「もう撮影、終わっているので入って大丈夫のようです」と言い、「『九条』の辺りでもう撮影は終わっていたようです」と冗談を飛ばす。

編集の間に、ドナインシタイン博士こと川下大洋による「後藤ひろひとの秘密を暴露せよ」という学会(?)が行われる。まずは、「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の主演女優である桜 稲垣早希が登場し、映画撮影時の後藤ひろひとについて語って貰う。早希ちゃんはクリーム色のジャケットに白くてふわふわした素材のミニスカート、黒いタイツという出で立ちである。

ちなみに早希ちゃんは昨日は東京ゲームショーに出ており、今日は大阪に戻ってこのトークに参加した後で再び東京に向かい、新宿で行われる劇団アニメ座の公演に出演という無茶苦茶なスケジュールで働いている。今年はよくわからないが、昨年、一昨年は年間の休みがトータルで1週間あるかないかだったはずである。

早希ちゃんは川下のことを「先生」と呼ぶ。NSC女性タレントコース時代のナレーションの先生が川下だったのだそうだ。早希ちゃんはNSC在学中からナレーターの仕事を貰っており、これは多分、異例中の異例だと思われるが、吉本も早希ちゃんから何かを感じ取っていたのだろうか。川下は早希ちゃんについて「君は非常に良い生徒だった。だが標準語はちょっと弱かった」と述懐し、早希ちゃんは「今でも少し」と答える。

早希ちゃんは「撮影が朝早くからだった」ということから話し始める。「朝の6時から深夜まで撮影が続いたので、いつもは整っている監督の鬚がボサボサになっていた」とのことである。映画の見所についてであるが、「私は刑事役をやらせて頂いたんですけど、ピストルを撃つシーンが気に入っている」という。ドナインシタイン博士が沖縄国際映画祭のレッドカーペットを歩いたのかという質問をすると、「歩きました、歩きました、3回も」と早希ちゃん。なんでも、「よしもとJOOKEY」を代表してプラカードを掲げて歩いた後で、今度はスポンサーであるNTTdocomoのプラカード係も担当(早希ちゃんの父親がNTTに勤務しているからかも知れない)、更に「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の主演女優としても歩いており、その間に休憩もなかったので、「終点についたらすぐスタートに戻って歩くを繰り返したので、きっとみんな『あいつまた歩いてるよ』思ったに違いないんですよ」と伝える。かなり決まり悪かったようである。
撮影中のエピソード。劇中では今いくよ・くるよが何故が受付嬢として働いており、早希ちゃん演じる女刑事と絡むシーンがあるのだが、いくよ・くるよの二人はカメラマン兼演出助手の人から、「セリフはどうでもいいんで、自由にやって下さい」と言われていたので、持ちネタである「どやさ!」をアドリブで入れたところ、演出助手の人から「今のはNGです」と言われ、いくよが思わず「?? どやさ…」とつぶやいたそうで、早希ちゃんは「いくよ師匠の渾身の『どやさ』を初めて聞くことが出来ました」と語った。


ドナインシタイン博士一人がステージ上に残り、まずはWikipediaに載っている後藤ひろひとの情報から検討する。後藤ひろひとは1969年、山形県生まれ。山形東高校から大阪外国語大学ヒンディー語学科に進学し、中退しているが、川下大洋演じるドナインシタイン博士は、「大阪外国語大学は今は大阪大学と合併したので、彼は労せずして大阪大学出身となったわけです」と説明する。ちなみに川下大洋は京都大学理学部卒で後藤ひろひとよりも高学歴である。川下は後藤と出会う前は、京大生と京大OB・OGからなる劇団「そとばこまち」にいた(京大の学生演劇サークルからスタートした「そとばこまち」であるが、現在の劇団「そとばこまち」は本拠地も大阪に移し、京大との関係は弱まっている)。
後藤ひろひとは、Wikipediaには本名・同じとあるが、ドナインシタイン博士によると、「同じではありません、うかんむりに片仮名のサ、その下に見るの『寬(かん)』という字の『ひろ』に『人』、で、『寛人』と書きます。だから、本当は『ひろと』のはずなんです。ただ、彼は高校生の時に、両親に「俺は『ひろひと』がいい、今日から『ひろひと』でいく」と言って、強引に改名したそうです。戸籍上はどうなっているのかはわかりませんが」とのことである。更に職業欄に、「劇作家」という文字が二度続けて書かれており、ドナインシタイン博士は、「これは劇作家であることを強調したいんでしょうか」と疑問を呈する。「本名も職業も訂正するなら早い者勝ちです。Wikipediaは誰でも編集出来ますから」とドナインシタイン博士は告げ、「ただし、訂正するなら一人一箇所だけにして下さい。編集する楽しみを独占してしまうのは良くないと思うので」とも付け加える。ちなみに、本名の方は観客として来ていた誰かが編集したようで、「後藤寛人」に変更されている。

ドナインシタイン博士は、後藤について最も驚いたこととして、出会ったから今に到るまで、顔が全く変わっていないということを挙げる。後藤の幼少期からの写真がスクリーンに映される。後藤は成長の早い子だったようで、幼稚園時代の写真を見て、ドナインシタイン博士は「もうすでに会社の二つや三つ経営しているような顔」と評する。その後も実年齢よりは上に見える写真が続く。高校生の時には生徒会長をやっていたそうで、その時の、壇上でのスピーチの際に撮られた写真がスクリーンに映る。そして大学生になって演劇を始めた頃の写真が出るのだが、本当に今と大して変わらない。確かに若いが、細部はそのまんまで変化がない。

Piper所属の俳優である、竹下宏太郎、腹筋善之介、山内圭哉によるビデオメッセージが映される。余り本気が感じられないメッセージばかりであるが、山内圭哉が後藤が、おなべ(女だが中身は男の人)のバーに出入りしているらしいということを明かす。

そして、後藤が二代目座長を務めた劇団・遊気舎の、三代目座長である久保田浩が二人目のゲストとして登場する。紺の背広姿で登場した久保田は後藤について「よくわからない」と述べる。久保田は大阪商業大学の出身であるが、大阪にある大学が合同で公演を行った際、稽古場に背広姿のおじさんが来て、稽古を見学していったそうである。後にそれが後藤ひろひとであり、久保田よりも年下だったことがわかるのだが、みな「あれはただ者じゃない」ということになり、後藤が劇団に最年少メンバーとして加わったときも使いっ走りをしていたのは最年少の後藤ではなくて一学年上の学生だったという。

その後、後藤と久保田が、舞台に出演し、共にブリーフ一丁という格好で、乳首などについたクラッカーを取り、尻や股間などに向かって破裂させるというしょうもないコントの場面がスクリーンに映されたのだが、久保田は「(後藤が)乳首からクラッカーを毟り取った時、痛そうにしてたでしょう。彼は敏感なんです、というよりいつも大袈裟に演技してるんです。あれ、取っても痛いわけありませんから」と語った。

そしていよいよ編集を終えた、9月22日昼の部・大阪版「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の上映が行われる。舞台挨拶をした後藤ひろひとは、自分も完成したものを観ていないという理由で、客席に下りて一列目の空いていた席に座り、客と一緒に映画を鑑賞する。
9月22日昼の部・大阪版「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」。脚本・監督:後藤ひろひと(スクリーンには「HIROHITO」ではなく、外国人風の名前がクレジットされていた)。出演:エル・シュリケン(正体は、今日も劇場スタッフとして働いていた吉本の若手芸人。名前は私も敢えて明かさない)、桜 稲垣早希、内場勝則(吉本新喜劇)、笑い飯・西田幸治、まちゃまちゃ、今いくよ・くるよ、ガリガリガリクソン、スマイル・ウーイェイよしたか、ローレンス・マックラウド(日本語吹き替え:多田野曜平)、藤崎マーケット・田崎佑一、小寺真理(つぼみ)、岡村隆史(カメオ出演)、ハリセンボン(カメオ出演)、宮村大助・花子(カメオ出演)、Mr.オクレ(カメオ出演)、坂田利夫(カメオ出演)、藤波辰爾(友情出演)、池乃めだか(吉本新喜劇)ほか。

「エル・シュリケンVS悪魔の発明」

街では人が突然行方不明になるという事件が続いている。今日も悪童子博士(内場勝則)の手下である二人組(ガリガリガリクソンとウーイェイよしたか)が特殊なパウダーを使って恋人とのデートを終えたばかりの女(小寺真理)を眠らせ、施設に送る(「なぜ女は走って逃げないのか」という疑問が浮かぶが、これはそういう理屈を先行させると楽しめない映画である)。
プロローグを終え、早希ちゃんが演じる南あかね警部補が目覚める場面から本格的に映画は始まる。寝起きということで早希ちゃんのすっぴんに近い顔を見ることも出来る(ほとんど変わらない)。
南警部補は異動になったのだが、新たな職場である警察署に行くと、今いくよ・くるよ演じる受付嬢から「そんな異動の話は入っていない」と言われ訝しむ。そこへ中年の男・安井(池乃めだか)が現れて、「南君、こっちだ」と言う。安井は警視庁の特別組織「草津温泉風呂吹き三人隊」の一人だという。「三人隊」というのはネーミングだけであり、実際は200名以上の人員からなる巨大組織である。アジトは何故かハリセンボンの楽屋を通り抜け、宮川大助・花子の家の居間にある押し入れの下から入ったところにある。

アジトで、南はエル・シュリケンという覆面の男と出会う。セリフ棒読みの男であるが(「※エル・シュリケンはプロの俳優ではありません」という字幕が出る)、筋肉質で頼りになりそうではある。

早速、捜査に出かけるシュリケンと南であったが、安井が悪童子博士の計画により爆死させられてしまう。悪童子博士の手下である二人も現れ、エル・シュリケンと闘う。中国人のホン(笑い飯・西田幸治)もシュリケンの味方として参戦。しかしホンは動きが鈍い(「※出演者に運動神経はありません」という字幕が出る)。シュリケンは苦戦するが、南が発砲し、手下に怪我を負わせたため、手下は逃げ去る。

安井の墓前で、安井を弔うシュリケンと南。シュリケンは「悪童子博士を絶対に倒す」と心に誓うのであった…

おふざけ映画であり、後藤ひろひと監督も役者に演技力は求めていない。上映終了後に後藤が語った通り、「『シベリア超特急』を遙かに超えるくだらなさ」を誇る(?)映画であるが、最初からB級映画狙いで行ったところは成功している。吉本の芸人を使ってシリアスなものを撮ろうと思っても、本職の俳優が出る映画に勝てるはずもないので、これぐらいで丁度良いのだ。

私であるが、意外に良く映っている。いつも人と違うことをしようと企んで(?)いるためか、アップで撮られたカットもある。私は映像に映るのを余り好まないので(街中でロケが行われていても、テレビカメラが嫌で逃げるタイプである)別に嬉しくも何ともないが。

芸人の演技であるが、早希ちゃんは贔屓目ではなく筋はいいと思う。拳銃を撃つシーンでは格好いいし、生まれながらの愛嬌とそれを生かす術を心得ている。勿論、ゴールデンタイムやプライムタイムで主役を張るだけの力量はないが、深夜のドラマ枠で彼女を主役で使ったら案外良いものが出来るかも知れない。演技の安定感でいうなら、軽演劇とはいえ、常に演じ続けてきた吉本新喜劇のメンバーが他を寄せ付けない。別格扱いでいいと思う。

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