« コンサートの記(105) 大阪クラシック2013「大阪クラシック特別公演」&第71公演 | トップページ | 本田美奈子 「アメイジング・グレイス(Amazing Grace)」 »

2013年10月30日 (水)

笑いの林(9) ヒューマン中村単独ライブ「僕的には。」

2013年9月13日 大阪・道頓堀ZAZA HOUSEにて

午後7時から、道頓堀ZAZA HOUSEで、ヒューマン中村の単独ライブ「僕的には。」を観る。

R-1ぐらんぷり2013で準優勝したヒューマン中村は、石川県生まれの、今月で30歳になる若手ピン芸人。ヒューマン中村という芸名を付けたのは、R-1ぐらんぷり2013のチャンピオンである三浦マイルドである。フリップを使った芸には定評があり、私もフリップ芸は見たことがあるが、演目によって出来不出来の差が激しかったとはいえ、優れた演目は「秀逸」のレベルにあったのを覚えている。

今回は、中村が得意とするフリップ漫談、コント、録音された音声ドラマの再生などが行われる。

道頓堀ZAZA HOUSEはライブハウスであり、吉本の芸人がパフォーマンスする場所として設計されてはいないが、吉本がこのライブハウスと提携して、様々な催しを行っている。京都でもカラオケ&レストランのシダックス河原町三条店が吉本興業と提携し、「シダックスよしもとAnnex」として吉本興業所属のアイドルグループである新選組リアンやNMB48の研究生によるライブ、芸人による漫才やトークショー、吉本芸人が司会を務めるイベントなどを行っている

カーテンを左右に開いて登場したヒューマン中村が、「論争、多数決、正義、差別、色々な物事が取り上げられて、はっきりとものが言いにくくなった昨今。こういう風潮に反対して自由に発言してみるのもいいのではないかと思う。まあ、僕的には」というようなことを言って、単独ライブが始まる。

次に、50センチほど開かれたカーテンの間に墨で紙に書かれたお題が出され、同じ言葉がアナウンスされて、中村が答えていく。「優しい人」とは? に中村は「強い人のことだと思います」と言う。次は「強い人」、中村は「愛する人を守れること」と回答。「学校の勉強」には、「今から思うとちゃんとしておいた方がいいもの」、「数学」に「パズル」と答える。「多部未華子」については「あり」、「篠崎愛(後で調べたらグラビアアイドルであった)」には「お世話になってます」、「住田弁護士」については「なし」、「室伏選手の妹」と聞かれた時には、中村は「室伏選手の妹ってどんな顔だったかな?」と、ガラケーを出して画像検索するが、結論は「DNA的にはあり」だった。「プリンセス天功」には、「責められたい」と述べ、全てが終わった後で、「芸ではなく、自分の性癖を晒すとは(性癖と性的指向は別のものなので本来は誤用だが、まあ、良しとしよう)」と自嘲的に言って笑いを取る。

ヒューマン中村一人による芸。まずは、得意のフリップ芸でスタートする。「セーブポイント」というタイトル。野球のセーブポイントではなく、「この瞬間で時が止まったら良かったのに」と思うポイントで、ターニングポイントとも少し被る。「大学受験の前の日」(ちなみにヒューマン中村は大学には行っていない)、「プロポーズする瞬間」(ヒューマン中村は独身である)、「小学校3年生ぐらいの時」(中村によると、これまでの人生の中で一番、何も考えなくてもやっていけた時代だそうである)、「始めて(ママ。誤用であるがスタッフは誰も指摘しなかったのであろうか)の場所に自転車を駐める時」は盗まれる可能性が高いということで取り上げ、「受精する前」は他の精子に譲ってもいいとの思いもあるからで、「弟に無断でジャニーズのオーディションに応募する前」は落ちたら本人は傷つかないで弟だけが傷つくからとの理由による。更に「下痢の時におならをする瞬間」という尾籠なものもある。最後は、「NSCに入る前日」で笑いを取った。

漫談「合わない人」。
ヒューマン中村は、どうしても合わない人というのがいるそうだ。それは自分を大きく見せようとするタイプの人で、「元ヤンキーだった」とか「暴走族のヘッドだった」などと誇ってみせる種族だという。「そういうのに限って、ヤンキーではなく、ヤンキーの使いっ走りだったりする」と述べたが、この間、中村はホスト風の男と街ですれ違ったが、その時に肩がぶつかり、相手から「どこ見て歩いてんだ眼鏡」と雑言を吐かれたそうで、「ボコボコにしてやった。ボコボコだぞ、音速の右手で」と言うが、「地元だったらね。大阪は地元じゃないから」と結局、喧嘩はしなかったことを明かし、「自分のことを棚に上げる人も嫌いです」と自虐ネタで締めた。

次はコント「密室殺人」。中村が名探偵に扮して、犯人を当てるというドラマ。フリップ芸では達者なところを見せたヒューマン中村であるが、コントをするには演技力が足りない。悪く言うとダラダラと流れてしまう演技で、視覚的にも物語の流れからいっても良くない。上手い役者が芸人はほぼ全員そうだが、演技の流れの中でも美しいポーズでピッと動きを止める瞬間がある。一人芝居では特にそうだ。その方がメリハリがついて、芝居も演技も引き締まるのである。生来のものか、演出家から教わったのか、自分の頭で考え出した技術か、それぞれ得る機会は違っても、優れた演じ手というものは一様に、型に嵌まるのではなく、自分で型を創造している。そこが優秀な演者とそうでない人との境目である。
また、演技は細部に到るまで徹底した方がいい。首を頻繁に回して視線を泳がせるということをせず、ただ後ろに下がっただけで詰め寄られたという場面を表出するのは無理である。
また、開く間が怖いのか(音楽家などは、ピアノの演奏について、「悪魔が怖い」に掛けた「開く間が怖い」という言い方をする)、架空の人物である小野寺さんを指さした後で、すぐに小野寺さんの描写を語り始めてしまったが、架空の相手がいるということを観客に想像させるためには、間を少し開けた方がいい。それに、ここは美しい立ち姿決める絶好の機会でもある。

コントを終えて、中村は一旦退場し、ここから、ヒューマン中村が本を書き、中村に、尼神インター・誠子、バイク川崎バイク、守谷日和を加えた4人で録音した音声ドラマが流される。かなりコテコテのラブストーリーである。

フリップ漫談「最上級」。英語には最上級があるが日本語にはないので、日本語の最上級を作るというネタ。「空しい」を最上級にすると「真空しい」になるといった調子の漫談である。「速い」は「音速い」、「危うい」が「月末い」、「凄い」は「矢沢(永吉)い」と、形容詞が続くが、「形容詞以外でやってみよう」といいうことになり、「春夏秋冬」の答えが「パン祭」という某食品会社のフェアにヒントを得たものになった。

インターバル代わりの音声ドラマを挟んで、今度はフリップ漫談「メリーさん」。メリーさんという女の子から中村の携帯電話(ガラケーである)に電話が入る。メリーさんのセリフはフリップに書かれていて、それを中村は次々にめくっていく。「私、メリーさん。今、ゴミ処理場にいるの」、「私、メリーさん。今、工事現場にいるの」、「私、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの」と近づいてきて、「私、メリーさん、今あなたの後ろにいるの」と繋がる怪談風の展開であるが、メリーさんが中村に甘えたり、「私、メリーさん。資格がいるの」「フォークリフトの」と言って中村から「凄いね」と誉められたり、性的アプローチをしたりする。ゴミ処理場や工事現場はマリーさんがバイトをしているところだそうである。メリーさんは、「あなたにも夢を叶えて欲しい。アメリカに行くという」と話し、中村は渡米する決意を固める。中村がいったん退場した後で、「3年後」と字幕が出て、中村が再登場。携帯電話はスマートフォンに変わっている。メリーさんに電話して呼び出すが、メリーさんはフォークリフトに乗ってやって来るというオチであった。

また音声ドラマが来た後で、フリップ漫談「組み合わせると面白くなるもの」。「マークシート用紙」と書かれたフリップが出され、「大学試験で苦しめられた方も多いと思います。それを楽しくするには」、と出されたフリップには「色鉛筆24色」。「マークシートをどの色で塗ろうか考えると楽しい」と中村。「よくわからない虫」も「大人には見えない」となるとファンタジーになるという。「コンビニにたむろするヤンキー」と「新幹線への憧れ」。「ヤンキーが新幹線が通るたびに目を輝かせて立ち上がったらいい」と力説する。「メリケンサック」。「『メリケンサック』ってわかる方、いますか? 手袋のようになもので、指の部分に棘が付いている奴。危険ですが」「石鹸水。これをメリケンサックにつけて手を回すとシャボン玉が沢山出来る」。「ホラ貝」「これも石鹸水。ホラ貝から巨大なシャボン玉が出てきます」といったような内容であった。

音声ドラマと交互に中村の漫談は続く。「よっ、大統領!」という掛け声があるが、大統領が二人いた場合が困る。そこで新たな掛け声を創造しようという試み。「よっ、制作総指揮」!、「よっ、組合会長!」、「よっ、現場責任者!」、「よっ、鳥山明!」などの言葉を生み出す。

「間に『っ』を入れて強調してみる」では、「姉っ妹!」、「LUNAっSEA!」等々のネタをやる。ちなみに、中村は本当にLUNASEAが好きなようである。

「ゆるキャラになりそうな言葉」では、「ブータン」、「セサミン」などを挙げる。

「『お』を『魔』を変えると嫌なもの」。大抵のものは「魔」がついたら嫌なものになると思うが、中村はその中から、「魔母さん」、「魔風呂」、「魔京阪(関西以外の地域の方はご存じないと思うが、京阪電車に乗る人のことを「おけいはん」と関西では言うのである。言い出したのは他ならぬ京阪電鉄で、「京阪乗る人、おけいはん」というキャッチコピーまである(実際は「い」で終わると「はん」ではなくて「さん」になるので正確な関西弁ではない。谷崎潤一郎の小説『細雪』でも用いられているために全国的に有名だが、一番下の妹のことを「こいさん」という。「こいはん」とはいわないのである)」などをチョイスする。
これは逆に「魔」がつくものを「お」に変えると途端に間抜けになるというネタに出来るかも知れない、モーツァルトの歌劇「魔笛」は「お笛」に、「大魔神」は「大お人」(オジンである)、「魔性の女」が、「おしょうの女」。坊主の彼女か、餃子の王将で働いている女のようである。「魔女の宅急便」が「お女の宅急便」(汚女、つまり腐女子である)。「魔球」は「お球」で据えられてしまう。

次いで、「漢字の誤変換が漢(おとこ)らしくなるもの」。「シャボン玉」が「シャボン魂」。「ブドウ糖」が「武道闘」になる。

 

続いて、無言コント「ボール投げ」。中村がベンチ(パイプ椅子3脚を並べて表現した)に座っているとボールが転がってくる。最初はアンダースローで優しく投げ返していた中村であるが、ボールが次々と転がってくるので、オーバースローで思いっきり投げ返したり、蹴り返したり、リフティングをしてから横蹴りをしたり、最後はサッカーボールになってヘディングをしたりして返すようになる。

ラストは「ヒッチハイク」。「滋賀」と書かれたスケッチブックを持って中村は立つが、車は停まらない。そこで、「せめて京都まで」、「逆に大分」、「思い切って十勝」などとスケッチブックをめくって目的地を変える。「約束された場所」など宗教もネタにする。「SIGA」と「SEGA」のロゴ風のものを出したり、最後は「駐車場」などと書くが、そこにハングライダーのようなもので不時着した男がいる(サトシという名前であることが後にわかる)。中村はサトシとやり取りをしていったん、下手袖にはけるが、戻って来た時にはハングライダーはヤンキー達に囲まれているという設定になっている。「しばらくすればあいつらどっか行く」と中村はいって再び下手袖にはけるが、戻って来た時にはハングライダーごと消えている。見上げるとハングライダーが空を飛んでいる。ヤンキー達が空を飛べるというので、中村はあいつらに運転させ俺達が乗ればいいんじゃないかなと提案する。

ヒューマン中村はスケッチブックをめくって、「僕的には。」とタイトルを示し、それから次々にスケッチブックをめくって、「出演 ヒューマン中村」、「声の出演 尼神インター誠子」、「声の出演 バイク川崎バイク」、「声の出演 守谷日和」といった風に出演者から始まり、舞台スタッフまでの全員の名前を出して、最後の最後に「影響 宮崎駿」と出して笑いを取り、公演は幕となった。

R-ぐらんぷりで準優勝しただけあって、フリップネタはもう盤石であることが窺える。後は、コントの際の演技力を磨けば面白さは更に増すだろう。ただ、フリップ芸だけでも十分やって行けそうな感じは受けたので、あるいはコントは無理にやらなくてもいいかも知れない。音声ドラマを聴いても、物語性のあるものはどちらかというと苦手としているような印象は受けた。

|

« コンサートの記(105) 大阪クラシック2013「大阪クラシック特別公演」&第71公演 | トップページ | 本田美奈子 「アメイジング・グレイス(Amazing Grace)」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 笑いの林(9) ヒューマン中村単独ライブ「僕的には。」:

« コンサートの記(105) 大阪クラシック2013「大阪クラシック特別公演」&第71公演 | トップページ | 本田美奈子 「アメイジング・グレイス(Amazing Grace)」 »