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2013年10月の17件の記事

2013年10月30日 (水)

笑いの林(9) ヒューマン中村単独ライブ「僕的には。」

2013年9月13日 大阪・道頓堀ZAZA HOUSEにて

午後7時から、道頓堀ZAZA HOUSEで、ヒューマン中村の単独ライブ「僕的には。」を観る。

R-1ぐらんぷり2013で準優勝したヒューマン中村は、石川県生まれの、今月で30歳になる若手ピン芸人。ヒューマン中村という芸名を付けたのは、R-1ぐらんぷり2013のチャンピオンである三浦マイルドである。フリップを使った芸には定評があり、私もフリップ芸は見たことがあるが、演目によって出来不出来の差が激しかったとはいえ、優れた演目は「秀逸」のレベルにあったのを覚えている。

今回は、中村が得意とするフリップ漫談、コント、録音された音声ドラマの再生などが行われる。

道頓堀ZAZA HOUSEはライブハウスであり、吉本の芸人がパフォーマンスする場所として設計されてはいないが、吉本がこのライブハウスと提携して、様々な催しを行っている。京都でもカラオケ&レストランのシダックス河原町三条店が吉本興業と提携し、「シダックスよしもとAnnex」として吉本興業所属のアイドルグループである新選組リアンやNMB48の研究生によるライブ、芸人による漫才やトークショー、吉本芸人が司会を務めるイベントなどを行っている

カーテンを左右に開いて登場したヒューマン中村が、「論争、多数決、正義、差別、色々な物事が取り上げられて、はっきりとものが言いにくくなった昨今。こういう風潮に反対して自由に発言してみるのもいいのではないかと思う。まあ、僕的には」というようなことを言って、単独ライブが始まる。

次に、50センチほど開かれたカーテンの間に墨で紙に書かれたお題が出され、同じ言葉がアナウンスされて、中村が答えていく。「優しい人」とは? に中村は「強い人のことだと思います」と言う。次は「強い人」、中村は「愛する人を守れること」と回答。「学校の勉強」には、「今から思うとちゃんとしておいた方がいいもの」、「数学」に「パズル」と答える。「多部未華子」については「あり」、「篠崎愛(後で調べたらグラビアアイドルであった)」には「お世話になってます」、「住田弁護士」については「なし」、「室伏選手の妹」と聞かれた時には、中村は「室伏選手の妹ってどんな顔だったかな?」と、ガラケーを出して画像検索するが、結論は「DNA的にはあり」だった。「プリンセス天功」には、「責められたい」と述べ、全てが終わった後で、「芸ではなく、自分の性癖を晒すとは(性癖と性的指向は別のものなので本来は誤用だが、まあ、良しとしよう)」と自嘲的に言って笑いを取る。

ヒューマン中村一人による芸。まずは、得意のフリップ芸でスタートする。「セーブポイント」というタイトル。野球のセーブポイントではなく、「この瞬間で時が止まったら良かったのに」と思うポイントで、ターニングポイントとも少し被る。「大学受験の前の日」(ちなみにヒューマン中村は大学には行っていない)、「プロポーズする瞬間」(ヒューマン中村は独身である)、「小学校3年生ぐらいの時」(中村によると、これまでの人生の中で一番、何も考えなくてもやっていけた時代だそうである)、「始めて(ママ。誤用であるがスタッフは誰も指摘しなかったのであろうか)の場所に自転車を駐める時」は盗まれる可能性が高いということで取り上げ、「受精する前」は他の精子に譲ってもいいとの思いもあるからで、「弟に無断でジャニーズのオーディションに応募する前」は落ちたら本人は傷つかないで弟だけが傷つくからとの理由による。更に「下痢の時におならをする瞬間」という尾籠なものもある。最後は、「NSCに入る前日」で笑いを取った。

漫談「合わない人」。
ヒューマン中村は、どうしても合わない人というのがいるそうだ。それは自分を大きく見せようとするタイプの人で、「元ヤンキーだった」とか「暴走族のヘッドだった」などと誇ってみせる種族だという。「そういうのに限って、ヤンキーではなく、ヤンキーの使いっ走りだったりする」と述べたが、この間、中村はホスト風の男と街ですれ違ったが、その時に肩がぶつかり、相手から「どこ見て歩いてんだ眼鏡」と雑言を吐かれたそうで、「ボコボコにしてやった。ボコボコだぞ、音速の右手で」と言うが、「地元だったらね。大阪は地元じゃないから」と結局、喧嘩はしなかったことを明かし、「自分のことを棚に上げる人も嫌いです」と自虐ネタで締めた。

次はコント「密室殺人」。中村が名探偵に扮して、犯人を当てるというドラマ。フリップ芸では達者なところを見せたヒューマン中村であるが、コントをするには演技力が足りない。悪く言うとダラダラと流れてしまう演技で、視覚的にも物語の流れからいっても良くない。上手い役者が芸人はほぼ全員そうだが、演技の流れの中でも美しいポーズでピッと動きを止める瞬間がある。一人芝居では特にそうだ。その方がメリハリがついて、芝居も演技も引き締まるのである。生来のものか、演出家から教わったのか、自分の頭で考え出した技術か、それぞれ得る機会は違っても、優れた演じ手というものは一様に、型に嵌まるのではなく、自分で型を創造している。そこが優秀な演者とそうでない人との境目である。
また、演技は細部に到るまで徹底した方がいい。首を頻繁に回して視線を泳がせるということをせず、ただ後ろに下がっただけで詰め寄られたという場面を表出するのは無理である。
また、開く間が怖いのか(音楽家などは、ピアノの演奏について、「悪魔が怖い」に掛けた「開く間が怖い」という言い方をする)、架空の人物である小野寺さんを指さした後で、すぐに小野寺さんの描写を語り始めてしまったが、架空の相手がいるということを観客に想像させるためには、間を少し開けた方がいい。それに、ここは美しい立ち姿決める絶好の機会でもある。

コントを終えて、中村は一旦退場し、ここから、ヒューマン中村が本を書き、中村に、尼神インター・誠子、バイク川崎バイク、守谷日和を加えた4人で録音した音声ドラマが流される。かなりコテコテのラブストーリーである。

フリップ漫談「最上級」。英語には最上級があるが日本語にはないので、日本語の最上級を作るというネタ。「空しい」を最上級にすると「真空しい」になるといった調子の漫談である。「速い」は「音速い」、「危うい」が「月末い」、「凄い」は「矢沢(永吉)い」と、形容詞が続くが、「形容詞以外でやってみよう」といいうことになり、「春夏秋冬」の答えが「パン祭」という某食品会社のフェアにヒントを得たものになった。

インターバル代わりの音声ドラマを挟んで、今度はフリップ漫談「メリーさん」。メリーさんという女の子から中村の携帯電話(ガラケーである)に電話が入る。メリーさんのセリフはフリップに書かれていて、それを中村は次々にめくっていく。「私、メリーさん。今、ゴミ処理場にいるの」、「私、メリーさん。今、工事現場にいるの」、「私、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの」と近づいてきて、「私、メリーさん、今あなたの後ろにいるの」と繋がる怪談風の展開であるが、メリーさんが中村に甘えたり、「私、メリーさん。資格がいるの」「フォークリフトの」と言って中村から「凄いね」と誉められたり、性的アプローチをしたりする。ゴミ処理場や工事現場はマリーさんがバイトをしているところだそうである。メリーさんは、「あなたにも夢を叶えて欲しい。アメリカに行くという」と話し、中村は渡米する決意を固める。中村がいったん退場した後で、「3年後」と字幕が出て、中村が再登場。携帯電話はスマートフォンに変わっている。メリーさんに電話して呼び出すが、メリーさんはフォークリフトに乗ってやって来るというオチであった。

また音声ドラマが来た後で、フリップ漫談「組み合わせると面白くなるもの」。「マークシート用紙」と書かれたフリップが出され、「大学試験で苦しめられた方も多いと思います。それを楽しくするには」、と出されたフリップには「色鉛筆24色」。「マークシートをどの色で塗ろうか考えると楽しい」と中村。「よくわからない虫」も「大人には見えない」となるとファンタジーになるという。「コンビニにたむろするヤンキー」と「新幹線への憧れ」。「ヤンキーが新幹線が通るたびに目を輝かせて立ち上がったらいい」と力説する。「メリケンサック」。「『メリケンサック』ってわかる方、いますか? 手袋のようになもので、指の部分に棘が付いている奴。危険ですが」「石鹸水。これをメリケンサックにつけて手を回すとシャボン玉が沢山出来る」。「ホラ貝」「これも石鹸水。ホラ貝から巨大なシャボン玉が出てきます」といったような内容であった。

音声ドラマと交互に中村の漫談は続く。「よっ、大統領!」という掛け声があるが、大統領が二人いた場合が困る。そこで新たな掛け声を創造しようという試み。「よっ、制作総指揮」!、「よっ、組合会長!」、「よっ、現場責任者!」、「よっ、鳥山明!」などの言葉を生み出す。

「間に『っ』を入れて強調してみる」では、「姉っ妹!」、「LUNAっSEA!」等々のネタをやる。ちなみに、中村は本当にLUNASEAが好きなようである。

「ゆるキャラになりそうな言葉」では、「ブータン」、「セサミン」などを挙げる。

「『お』を『魔』を変えると嫌なもの」。大抵のものは「魔」がついたら嫌なものになると思うが、中村はその中から、「魔母さん」、「魔風呂」、「魔京阪(関西以外の地域の方はご存じないと思うが、京阪電車に乗る人のことを「おけいはん」と関西では言うのである。言い出したのは他ならぬ京阪電鉄で、「京阪乗る人、おけいはん」というキャッチコピーまである(実際は「い」で終わると「はん」ではなくて「さん」になるので正確な関西弁ではない。谷崎潤一郎の小説『細雪』でも用いられているために全国的に有名だが、一番下の妹のことを「こいさん」という。「こいはん」とはいわないのである)」などをチョイスする。
これは逆に「魔」がつくものを「お」に変えると途端に間抜けになるというネタに出来るかも知れない、モーツァルトの歌劇「魔笛」は「お笛」に、「大魔神」は「大お人」(オジンである)、「魔性の女」が、「おしょうの女」。坊主の彼女か、餃子の王将で働いている女のようである。「魔女の宅急便」が「お女の宅急便」(汚女、つまり腐女子である)。「魔球」は「お球」で据えられてしまう。

次いで、「漢字の誤変換が漢(おとこ)らしくなるもの」。「シャボン玉」が「シャボン魂」。「ブドウ糖」が「武道闘」になる。

 

続いて、無言コント「ボール投げ」。中村がベンチ(パイプ椅子3脚を並べて表現した)に座っているとボールが転がってくる。最初はアンダースローで優しく投げ返していた中村であるが、ボールが次々と転がってくるので、オーバースローで思いっきり投げ返したり、蹴り返したり、リフティングをしてから横蹴りをしたり、最後はサッカーボールになってヘディングをしたりして返すようになる。

ラストは「ヒッチハイク」。「滋賀」と書かれたスケッチブックを持って中村は立つが、車は停まらない。そこで、「せめて京都まで」、「逆に大分」、「思い切って十勝」などとスケッチブックをめくって目的地を変える。「約束された場所」など宗教もネタにする。「SIGA」と「SEGA」のロゴ風のものを出したり、最後は「駐車場」などと書くが、そこにハングライダーのようなもので不時着した男がいる(サトシという名前であることが後にわかる)。中村はサトシとやり取りをしていったん、下手袖にはけるが、戻って来た時にはハングライダーはヤンキー達に囲まれているという設定になっている。「しばらくすればあいつらどっか行く」と中村はいって再び下手袖にはけるが、戻って来た時にはハングライダーごと消えている。見上げるとハングライダーが空を飛んでいる。ヤンキー達が空を飛べるというので、中村はあいつらに運転させ俺達が乗ればいいんじゃないかなと提案する。

ヒューマン中村はスケッチブックをめくって、「僕的には。」とタイトルを示し、それから次々にスケッチブックをめくって、「出演 ヒューマン中村」、「声の出演 尼神インター誠子」、「声の出演 バイク川崎バイク」、「声の出演 守谷日和」といった風に出演者から始まり、舞台スタッフまでの全員の名前を出して、最後の最後に「影響 宮崎駿」と出して笑いを取り、公演は幕となった。

R-ぐらんぷりで準優勝しただけあって、フリップネタはもう盤石であることが窺える。後は、コントの際の演技力を磨けば面白さは更に増すだろう。ただ、フリップ芸だけでも十分やって行けそうな感じは受けたので、あるいはコントは無理にやらなくてもいいかも知れない。音声ドラマを聴いても、物語性のあるものはどちらかというと苦手としているような印象は受けた。

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2013年10月28日 (月)

コンサートの記(105) 大阪クラシック2013「大阪クラシック特別公演」&第71公演

2013年9月12日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後1時30分から大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、「大阪クラシック特別公演」を聴く。

「大阪クラシック ~街にあふれる音楽~」は、毎年9月に大阪市の各所で、クラシック音楽の演奏が行われるというイベント。企画、立案、プロデュースを手掛けるのは大阪フィルハーモニー交響楽団の現在は桂冠指揮者である大植英次。大植英次が大阪フィルの音楽監督時代に始めたもので、大阪フィルを始め、日本センチュリー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団という在阪4プロオーケストラと、大阪音楽大学の学生オーケストラのメンバーが参加。普段は商用に使われているスペースを使って室内楽などを演奏する。今年は9月8日にスタート。14日の土曜日までの一週間、「大阪クラシック」は続く。

「大阪クラシック」にオーケストラとして参加するのは大植英次指揮の大阪フィルハーモニー交響楽団だけだが(大阪音楽大学管弦楽団との合同コンサートを含む)、それは今日に関しては午後7時30分からの夜の部で行われ、午後1時30分から行われるのは、ピアノと室内楽のためのコンサートである。

指揮者として著名になった大植英次であるが、若い頃は指揮よりもピアノの演奏に定評のある音楽家であった。桐朋学園大学を二十歳で中退してアメリカに渡り、バークリー・ミュージック・センター(バークリー音楽大学)の指揮者課程で学んでいる時、学生指揮者は常にオーケストラを振れるわけではないのでピアノ相手に指揮の練習をすることが多いのだが、「Oueはとにかくピアノが上手い」というので、仲間の指揮に合わせてピアノを弾くことが多かったという。師であるレナード・バーンスタイン(愛称はレニー)に認められたのも、大植がピアノを弾いているのをたまたま聴いたレニーが、「この若者には本物の音楽性がある」と気づき、大植に声を掛けたのが最初である。ちなみに当時、レニーは一時的に鬚を蓄えており、大植は話しかけてきた鬚のおじさんがレニーだとは気付かずに手で追い払う仕草をしてしまい、後でそれがレニーだったと知って真っ青になったという。ニューイングランド音楽院に進むことになったのも、大植がピアノを弾いている時に、ニューイングランド音楽院の関係者がたまたま通りかかり、大植のピアノ演奏を聴いて、「ニューイングランド音楽院に来なさい。試験は今の演奏で合格だ」と言われたためである。

日本でも大植は、大フィルの東日本大震災チャリティーコンサートの時にモーツァルトのピアノ協奏曲の弾き振りなどを行っているが、私はそれは聴いていないので、大植のピアノを聴くのは初めてになる。

モーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調より第2楽章の弦楽五重奏とピアノ版と、ベートーヴェンの交響曲第5番のピアノ3台版の演奏。

大植がグレーのマントのようなものを羽織って登場し、マイク片手にスピーチを行う。ただ、大植英次というのはとにかく滑舌の悪い人で、マイクを使っているのに何を喋っているのか聴き取るのは困難だったりする。

モーツァルトのピアノ協奏曲第21番より第2楽章の弦楽五重奏を担当する若者を紹介する時に、大植は老眼鏡を掛けて読み上げる。ヴァイオリン:井前慶子&山田聖華、ヴィオラ:阪部慎太郎、チェロ:藤原昌太郎、コントラバス:三井脩平という編成である。

大植自身は手を使っての指揮は行わないが、ヴァイオリンの井前慶子とアイコンタクトを取るなど、顔での指揮は行っていた。若者の演奏だけに少し小さくまとまっていたがそれは仕方ない。健闘していると思った。
大植英次のピアノは素直なもので、いかにもモーツァルトといった愛らしさにも欠けていない。

演奏終了後、大植は、「この曲はスウェーデン映画で有名になった」と語り、私はてっきり「短くも美しく燃え」(スウェーデン映画の代表作的存在。ラストシーンを北野武が自作で真似ていることでも有名である)だと思ったのだが、大植の語るストーリーを聞くと、どうやら別の映画のようである。

ベートーヴェンの交響曲第5番の3台のピアノによる演奏であるが、ベートーヴェン自身の筆記による、初演の前のピアノ版の譜面をオーストリアから取り寄せての演奏だそうである。ベートーヴェンは楽譜の書字の汚い人で読みにくく、それが故に、最初の版元であるブライトコプフ版の他に、ベートーヴェン直筆の譜面から再考したベーレンライター版などが出版されているわけだが、ベートーヴェンは交響曲第5番の初演後に手を加えており、手を加えていない状態でのピアノ演奏を行うのは大植曰く「ベートーヴェン本人以来」なのではないかとのことだ。大植は「これからベートーヴェンの交響曲第6番を演奏します」と言い、初演の際はベートーヴェンの現在の交響曲第5番が交響曲第6番、現在の交響曲第6番「田園」が交響曲第5番「田園」として初演された経緯を話す。二つの交響曲は同じ日の同じ演奏会(舞台はアン・デア・ウィーン劇場)で初演されている。交響曲の番号が入れ替わったのは、大植によると「ベートーヴェンが、後で多く手を加えたものを第5番として出すことにしたのではないか」とのことだ。

ピアノを演奏するのは大植の他に、末岡修一郎、保屋野美和。大植は老眼鏡を掛けての演奏。譜めくり人が大植には二人、他の奏者には一人ずつ付く。

まず、顕著なのは、第1楽章と第2楽章のラストが、現在使われている版よりも長いということだ。初演後に、ベートーヴェンが「冗長である」と感じて削った可能性が高い。更に第4楽章で、普通は「タッター、ジャジャジャジャン、タッター、ジャジャジャジャン、タッター、ジャジャジャジャン、タッター、ジャジャジャジャン、タッター、ジャジャジャジャン、タッター、ジャジャジャジャン」と続く場面があるのだが、ここが「タッター、タッター、タッター、タッター、タッター、タッター、タッター、タッター、タッター、タッター」とジャジャジャジャンで応えるのではなく、同じ音型で応えている(ベーレンライター版ではこちらが採用されているが、ベーレンライター版の楽譜を使用している演奏でも、実際に「タッター、タッター」とやっているのはCDではデイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏、生ではスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮NHK交響楽団の演奏しか聴いたことがない)。

大植を始めとするピアニストの腕も冴えており、学術的にも興味深い演奏であった。

大植英次は学生服のような出で立ちであるが、ビートルズの格好を真似たものらしい。更に大植はオノ・ヨーコからジョン・レノンが使用していたという眼鏡を貰っており、それを実際に掛けて見せたりする。

ビートルズはイギリスのバンドだというので、同じイギリスの作曲家であるホルストの「惑星」より“木星”の3台のピアノ版がアンコールで演奏される。良い演奏である。

更に大植は、末岡と保屋野に連弾で「ハンガリー舞曲」より第5番を演奏させる。大植本人は客席への拍手の指示係をしたり、一部ではピアノを弾いたりもする。

ラストは、大植英次によるピアノ独奏。レノン=マッカートニーの「イエスタデイ」(実際はポール・マッカートニーの作曲。ポールが寝ぼけてベットから転げ落ちた瞬間に全曲閃いた曲で、朝飯前に出来たことから、最初は「スクランブルエッグ」という借りタイトルが付けられた)。歌い崩しもあったが重厚な演奏であった。

アンコールも含めて上演時間約1時間のコンサート。そのためチケットも1000円と安めであった。

午後7時30分開演の、大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団による「大阪クラシック」第71公演。「永遠に語りつがれる愛の物語」というタイトルのコンサートで、チャイコフスキーのバレエ音楽「白鳥の湖」“終曲”より、ワーグナーの歌劇「ローエングリン」第3幕より、ベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」“ロメオただ一人”より、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕前奏曲、レナード・バーンスタインの交響舞曲(シンフォニック・ダンス)「ウエストサイド物語」より“サムフェア”、チャイコフスキーの幻想的序曲「ロメオとジュリエット」より、というプログラム。

大植登場。ヒョウ柄のラインの入った黒服での登場である。後で行われた大植の解説によると、ベートーヴェンが大植が今着ているような服装で演奏を行っていたという。

大植がマイクで解説を行うが、やはり滑舌が悪いので、よく聴き取れない。「ド…が、ホール…、音…、驚いて、ステ…、キスをした」という感じで、逸話から「ドミンゴがザ・シンフォニーホールの音響に驚いてステージにキスをした」という意味だろうと脳内変換する必要がある。マイク台があるため、今日の大植は指揮棒を取ったり、置いたりしながらの指揮であった。

今日の演奏会は渡辺美穂がコンサートミストレスを務める。渡辺のコンサートミストレスで大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏を聴くのは、おそらく若手指揮者・山田和樹のザ・シンフォニーホールデビュー公演の時以来だろう。京都市交響楽団もヴァイオリンに女性奏者が多いが、最近は大阪フィルもヴァイオリンに女性奏者が多い。今日は男性奏者は第1バイオリンに二人、第2ヴァイオリンには一人だけで、あとは全て女性である。音楽系の学部や学科にそもそも女性が多いということもある。日本の場合は男がギターやベース、ドラムといったロック系以外の楽器を演奏していると「男らしくない」と取られる風潮がまだ残っているのかも知れない。

大植は、音楽同士が様々な影響を受けて合っていることを解説する。オフレコの話もある。これは会場に来た人だけが聞ける特典である。

ワーグナーの歌劇「ローエングリン」第3幕より、とのみあったが、大植は「世界中で間違いなく一番演奏されている曲」と言って振り出す。「ワーグナーの結婚行進曲」であった。確かに世界一演奏されている曲であろう。花嫁がバージンロードを歩くときは必ずといっていいほどこの曲が流れる。

ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲は、ワーグナー自身が楽劇の終末部分を繋げた、楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と“愛の死”として演奏されることが多いが、今回は前奏曲だけが演奏される。

アンコールでは、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲が演奏される。大植は「世界最高の演奏です」と演奏前に語るが、確かに傑出した出来だ。ただ、そもそも「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲を演奏したり録音したりしている名指揮者は少ない。ヘルベルト・フォン・カラヤンは指揮しているが録音が古いということで、大植の言うとおり、世界最高と言っても過言ではない。

続いて、歌劇「ローエングリン」第3幕の前奏曲。大植はラストはチャイコフスキーの「白鳥の湖」風に編曲したものを演奏した。

最後は、ステージ下手端に置かれて、演奏もされていたピアノが中央に運ばれ、大植がピアノでアンコール曲を弾くことになる。大植は「残念なことに、昨年から『星空コンサート』(注:大阪城公園西の丸庭園で毎年行われていた野外コンサート)が出来なくなってしまったんです。大阪しちょ…、ゴホッ、ゴホッ」と大植は咳き込み、「そこで一人『星空コンサート』を行いたいと思います」述べて、「『星に願いを』」とタイトルを言ってから演奏する。最初にチャイコフスキーの序曲「1812年」からを演奏して、そこから「星に願いを」が弾かれる。繊細で甘いピアノであった

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2013年10月26日 (土)

観劇感想精選(102) 東京セレソンデラックス 「わらいのまち」

2011年10月20日 大阪・京橋のシアターBRAVA!にて観劇

午後7時から、大阪・京橋のシアターBRAVA!で、東京セレソンデラックスの公演「わらいのまち」を観る。作・演出・出演:宅間孝行。その他の出演者は、片桐仁、岡田義徳、西村直人、金子さやか、櫻井章喜、弓削智久、渋谷飛鳥、松岡依都美、伊藤高史、佑希梨奈、小谷早弥花、菊池優、田畑智子、柴田理恵。

東京セレソンデラックス「わらいのまち」

宅間孝行が10年前に書いたシチュエーションコメディ「JOKER」を「わらいのまち」と改題しての再演である。大阪が笑いの街であることはわかっているだろうから、セレソンのメンバーも東京公演以上に頑張って、絶対に本気で笑いを取りに来るはずである。

出来は途轍もなく良かった。出演者全員が勘違いをするという「間違いの喜劇」の手法で書かれているが、同じ手法でこれほど緻密で完成度の高い本による日本のコメディ作品の上演を観るのは、三谷幸喜の「君となら」以来である。

宅間孝行はアドリブも抜群で、「この間、建設の職場に初めてイギリス人が来たの。でさあ、試すことにしたんだよ。『ピザって10回言ってみて』って。で、『ここ(肘を指す)は何?』と聞くと、日本人はみんな膝って言っちゃうんだよね。ここ。膝じゃなくて肘だから。で、イギリス人も間違えるかなあと思って聞いたら、相手は『ピッザ、ピッザ、ピッザ』と10回言って、『じゃあ、ここは?』と聞いたら『エルボー!』」、「この間、中華料理店に行ったら、シスターが集団で来てたの。で、何を注文するのかなと見てたら(祈りのポースをして)『かにたま(神様に掛けた駄洒落)』」と即興でやって、客席のみならず共演者も笑わせようとする(共演者は笑ってはいけないという決まりになっているようで、みんな必死で笑いをこらえている)。他の役者達も相手がセリフを噛んだりするとそのままの形で返すなど、芸達者が揃っている。宅間孝行は敢えて台本にセリフを書かないで、役者に任せている場面もあり、そこでも笑いを取っていた。

結構、重要な役割を担う渋谷飛鳥は、当初は出演予定ではなく代役だそうだが、それを感じさせない見事な演技を見せていた。

田畑智子が美味しい酒として勧めていたのは「京都の老舗料亭・鳥居本の酒」であるが、京都の老舗料亭・鳥居本というのは田畑智子の実家である。京都の人はほとんどが知っている。今回は関西での公演ということで、特別に入れられたセリフであろうと思われ、確かに笑いを取っていた。というよりも私も笑っていた。

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2013年10月25日 (金)

これまでに観た映画より(58) 「ブラック・スワン」

Blu-rayで、アメリカ映画「ブラック・スワン」を観る。ナタリー・ポートマン主演作。ダーレン・アロノフスキー監督作品。この映画でナタリー・ポートマンは2010年のアカデミー主演女優賞と、ゴールデングローブ女優賞を受賞している。

セルのBlu-rayは観ているが、レンタルのBlu-rayディスクを観るのは初めてである。最近はBlu-rayとDVDが同時に発売されるケースが多いので、今後はレンタルBlu-rayも増えていくことだろう。

「ブラック・スワン」は、ニューヨークのバレエ・カンパニーを舞台にした心理サスペンスホラーである。

トマ・ルロワ(ヴァンサン・カッセル)が率いるニューヨークのダンスカンパニー。長年、プリマドンナを張ってきたベスが引退することになり、新演出による「白鳥の湖」のヒロインを選ぶことになる。ニナ(ナタリー・ポートマン)はその筆頭候補であるが、新演出では白鳥と黒鳥(ブラック・スワン)の両方を踊ることになっており、清純な白鳥を踊るのにニナは申し分ないが、精密な機械のようなダンスであり、蠱惑的な黒鳥を舞うにはエモーショナルな部分が足りない。ニナにはヒロインになる夢があるが、そのうちに、自分のドッペルゲンガーや幻覚などを頻繁に見るようになる。トマを誘惑し、失敗するもなんとかヒロインの座を射止めたニナ。しかし、幻覚などの症状は重くなっていく…

憑依型の演者の心理を巧みに突いた心理劇である。見終わった後に残るものは少ないが、観ている間は、ナタリー・ポートマン演じるニナの心理もなんとなくではあるがわかり、のめり込むことが出来る。

傑出した映画ではないかも知れないが、心理サスペンスホラーとしてはなかなか上手く出来た作品だと思う。

バレエダンスを吹き替えなしで演じきったナタリー・ポートマンには「ブラーヴァ!」である。

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2013年10月24日 (木)

コンサートの記(104) ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団大阪公演2013

2013年9月14日 大阪・谷町のNHK大阪ホールにて

午後4時30分から、大阪・谷町にあるNHK大阪ホールで、NHK交響楽団演奏会大阪公演を聴く。指揮はN響名誉指揮者のヘルベルト・ブロムシュテット。高校時代から好きな指揮者であったが、大学2年生の時分に、初めて生でNHK交響楽団の演奏会を聴いた時の指揮者がブロムシュテットであった。1995年9月のNHKホール。土曜日、午後2時15分開演の定期演奏会。メインは、ムソルグスキー作曲、ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」で、それまでも、またそれ以降も、ブロムシュテット指揮NHK交響楽団の演奏を超える「展覧会の絵」には、CDでもコンサートでも出会ったことはない。ということもあって大好きで、プロフィールの「好きな指揮者」でも一番最初に名前を挙げている。京都コンサートホールでブロムシュテット指揮の演奏会を聴くチャンスは二度あったのだが、いずれも病気で会場に行けず、悔しい思いをした。

関西に来てから、関西でブロムシュテット指揮の演奏会を聴くのは二度目。前回はザ・シンフォニーホールでのチェコ・フィルハーモニー管弦楽団来日演奏会でブロムシュテットが指揮台に立ち、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」とブラームスの交響曲第1番を演奏している。透明感のある美演だったことを覚えている。私自身はちょっと心に迷いがあった時期だったのだが、ブロムシュテット指揮の演奏を聴いて「そんな小さなことで悩むことはない」と吹っ切ることが出来た。ありがたい指揮者である。

ヘルベルト・ブロムシュテットは、1927年、アメリカ生まれ、スウェーデン育ち。スウェーデン人ではあるが、現在はアメリカ国籍の指揮者である。両親はスウェーデン人の宣教師で、宣教先のアメリカ合衆国マサチューセッツ州スプリングフィールドで生を受けている。両親は幼いブロムシュテットを連れて程なくスウェーデンに帰国。ブロムシュテットはストックホルム王立音楽院とウプサラ大学(北欧最古の歴史を持つスウェーデンの名門大学である)に学び、更に渡米してニューヨークのジュリアード音楽院でも指揮を専攻している。タングルウッドではレナード・バーンスタインに師事し、1953年にクーセヴィツキー賞を受賞。翌1954年にロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してデビュー。特筆すべきは、2~3年で首席指揮者をコロコロ変えるシュターツカペレ・ドレスデンで、10年間という長期政権を保持したことである。この時代に、当時の東ドイツの国営レーベルであったドイツ・シャルプラッテンと日本のDENONレーベルとの協力により、「ベートーヴェン交響曲全集」などを完成させて、日本でも知名度を上げている(ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンのドイツ・シャルプラッテンのCDは必ず海外盤を買って聴いて欲しい。日本盤は音の美しさばかりを追求したマスタリングであるため、ブロムシュテットの情熱的な音楽作りがまるで伝わってこない)。

1985年から1995年までサンフランシスコ交響楽団(サンフランシスコ・シンフォニー)の音楽監督を務め、国内外の多くの音楽専門誌から決定盤とまでいわれた「ニールセン交響曲全集」(DECCA)を完成。更に「シベリウス交響曲全集」や、グリーグの劇附随音楽「ペール・ギュント」より抜粋(いずれもDECCA)などの、北欧音楽の名盤を作成している。

1996年からはハンブルクの北ドイツ放送交響楽団(NDR交響楽団)の音楽監督をしていたが、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスター(「楽長、楽団長」という意味。音楽監督のことをライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は「上司ではなく同士」と認識しているため、このような独特の呼び方をする)に推薦されたため、任期を全うすることなく北ドイツ放送交響楽団を去り、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターに1998年に就任、2005年まで務めた。

NHK交響楽団との初共演は1981年で、1985年に名誉指揮者の称号を贈られている。楽団によって名誉指揮者の意味は異なるが、NHK交響楽団の名誉指揮者はN響と特別な関係にある外国人指揮者という意味で用いられている。名誉指揮者の称号を保持している人間が亡くなると、当人の名誉指揮者の称号は返上される。
私が、NHK交響楽団の演奏会に通い始めた頃には、名誉指揮者は4人いたが、オトマール・スウィトナーは病気で、もうN響のステージに立つことはなく(病名は死後にパーキンソン病であったと明かされた)、ホルスト・シュタインは実演に接する機会がないまま1999年に事実上の引退状態となり、2008年に他界。ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮のN響演奏は、ロベルト・シューマンの交響曲第3番「ライン」がメインの定期演奏会を聴くことが出来た(素晴らしかった)が、彼も高齢を理由に2006年に引退を宣言、今年2月に逝去した。ということで、N響の名誉指揮者は現在、ブロムシュテットただ一人である(他に、名誉音楽監督にシャルル・デュトワ、桂冠指揮者にウラディーミル・アシュケナージ、名誉客演指揮者にアンドレ・プレヴィンがいる。2015年からはパーヴォ・ヤルヴィが首席指揮者に就任する予定。日本人指揮者の場合は名誉指揮者ではなく正指揮者と呼ばれ、現在は外山雄三、尾高忠明の二人体制である)。

今年、86歳というブロムシュテット。同じ1927年生まれのサー・コリン・デイヴィスが今年の4月に鬼籍に入り、1920年代生まれの指揮者も徐々に少なくなってきている。

オール・ブラームス・プログラム。東京では、ブロムシュテットが指揮するNHK交響楽団の9月定期演奏会において、「ブラームス交響曲全曲演奏会」が進行中であり、月に3度ある定期演奏会のうちの1つと同じプログラムを携えて大阪に乗り込んできた。前半が、大学祝典序曲、ハイドンの主題による変奏曲。後半が交響曲第1番である。

5月に東京・溜池のサントリーホールで聴いて以来のN響。メンバーの顔ぶれも私が定期会員だった頃とは大分変わった。昨年のN響大阪演奏会の時には演奏していた首席オーボエ奏者の茂木大輔が5月に続いて今日も降り番だったので、知っている顔は、コンサートマスターの堀正文、フォアシュピーラーの酒井敏彦、第2ヴァイオリン次席奏者の大林修子、首席チェロ奏者の藤森亮一、首席フルート奏者の神田寛明の5名だけである。

ヴァイオリン両翼、チェロは舞台下手側、コントラバスが舞台下手奥という古典配置を採用している。

NHK大阪ホールは比較的新しいホールだが、多目的ホールであり、クラシックの演奏会には余り向いていない。ただ、今日の演奏は、響きの悪さをものともしない力強さがN響にはあった。

1曲目である大学祝典序曲からエンジン全開。弦楽奏者達は、おそらくリハーサルでブロムシュテットからいつもより強く弾くよう言われたのであろう。ボウイングが普段より機敏であり、特にチェロは体を揺すりながらの激しい演奏を展開する。強い音を出しても濁らないのは流石N響であり、ブロムシュテットの端正な指揮もプラスに働いているのだろう。

「穏健派」と思われがちなブロムシュテットであるが、実演を何度も聴いたことのある私からすると「どこが穏健派なんだ?」ということになる。今日も情熱の迸りが見えるような熱い音楽を作り出していた。小林研一郎のようにウンウン唸りながら大きな身振り手振りをする指揮者だけが情熱的というわけではないのである。

ハイドンの主題による変奏曲も、造形美の光る佳演。ブロムシュテットが楽曲分析(アナリーゼ)を丁寧に行ったためだと思われるが、聴いていて内容が非常にわかりやすい。そしてドイツものを演奏している時のN響はやはりスーパーオーケストラだ。

後半。交響曲第1番。前回聴いたブロムシュテット指揮の演奏会(前述のチェコ・フィルハーニー管弦楽団を指揮したもの)もメインはブラームスの交響曲第1番だったので、コンサートが始まる前は「出来れば違う曲が聴きたかった」と思っていたが、前半の出来を聴いて、「N響となら、チェコ・フィルの時とまた違ったブラ1が聴けるだろう」と期待が高まる。

演奏開始。非常に格好良い序奏でこの曲は始まるが、ブロムシュテットとN響は、遅からず速からず、強からず弱からずという理想的な演奏を聴かせる。弦も管もエッジがキリリと立っており、音は澄んでいて温かい。8分の6拍子であるが、実際に6拍子を振ると指揮者にとって大変な負担となるので、通分した4分の3拍子としてブロムシュテットは振っていた。

第2楽章の抒情美、第3楽章の軽快さも見事だったが、最終楽章は冒頭から堂々とした威容を見せ、まさに王道を音楽が歩んでいく。弦も管もティンパニも、時に思い切った強奏をする。これがブロムシュテットだ。

充実した演奏会であった。老いを微塵も感じさせないブロムシュテット。18年前に初めて生で見た時と比べて変わったのは髪の色ぐらいである。時は経ったが、彼の心は永遠に青年のままだ。

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コンサートの記(103) 広上淳一指揮京都市交響楽団 「京都の秋音楽祭」開会記念コンサート2013

2013年9月15日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、「京都の秋音楽祭」開会記念コンサートを聴く。広上淳一指揮京都市交響楽団による演奏会。

プログラムは、ジョン・ウィリアムズの「リバティ・ファンファーレ」、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番(ヴァイオリン独奏:松田理奈)、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)。

全て京都市の姉妹都市とゆかりのある音楽が選ばれており、ジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグの映画音楽の作曲家として有名なジョン・ウィリアムズは京都のアメリカにおける姉妹都市・ボストンのボストン・ポップス・オーケストラ(ボストン交響楽団の首席奏者を除く面々で構成され、映画音楽やポピュラーソングのオーケストラ編曲版、ルロイ・アンダーソンなどのライトクラシックを演奏する)の常任指揮者を13年に渡って務め、現在は同楽団の桂冠指揮者である。

ブルッフはドイツにおける姉妹都市・ケルン生まれの作曲家であり、ムソルグスキーの「展覧会の絵」はウクライナにおける姉妹都市のキエフの名が入った「キエフの大門」という壮麗な曲で終わる。またオーケストラ編曲したラヴェルはフランスにおける姉妹都市・パリで活動した作曲家である。

「京都の秋音楽祭」開会記念コンサートの行われる日は、例年だと大抵は晴れているのだが、今日は台風の影響もあって雨。雨は夜に入ると土砂降りに、そして嵐へと変わることになる。

京都市交響楽団のメンバーがステージ上に揃い、チューニングを終えたところで(今日のコンサートマスターは泉原隆志。渡邊穣は今日は降り番であった)、門川大作京都市長(一応、京都市交響楽団の楽団長でもある)が登場し、開会の辞を述べる。「本日はお足元のよろしくない中、お越し下さりありがというございます」と無難な言葉で始めるが、「東京オリンピックの開催が決定致しました。『お・も・て・な・し』」と、オリンピック誘致のために滝川クリステルが行ったスピーチとポーズを真似し(「お・も・て・な・し」はパロディーも含めて様々な人が使っており、「アベノミクス」、「今でしょ!」、「じぇじぇ」などと並ぶ流行語大賞の有力候補である)「京都は『おもてなし』の本場でございます。これまでも京都おもてなし情報館というサイトや京都観光おもてなし大使などを設置して参りましたが、外国人の方々に『おもてなし』の意味を説明するのは難しかったのです。それが今回、一気に有名になりまして、『先見の明がある』などと言われて嬉しい限りでございます。京都が観光都市、文化芸術都市として更に発展していくことを望みます。東京ではオリンピック、京都では文化と芸術。このようになれば幸いでございます」というような言葉を述べ、「それでは1曲目、ジョン・ウィリアムズの『リバティ・ファンファーレ』。よろしくお願い致します」と言って退場する。

広上が登場し、ジョン・ウィリアムズの「リバティ・ファンファーレ」。広上は後ろに残っていた髪を全て剃って、坊主頭にしている。今日も全編ノンタクトでの指揮であった。
「リバティ・ファンファーレ」は、ジョン・ウィリアムズが自由の女神建立100周年を祝うために作曲し、1986年7月4日の独立記念日に初演されたファンファーレ。今日は前から4列目の席で(「京都の秋音楽祭」開会記念コンサートはどの席も一律2000円であり、チケットぴあで券を買ったので、自分で席は選べないのである)、音が良く聞こえるのか不安であったが、そこは広上淳一。以前、自身が指揮する回でない演奏会でも京都コンサートホールの音響をチェックするためにホールに来ていたことがわかっているが、どの席にも音が届くように、力強い演奏をしてくれた。
「リバティ・ファンファーレ」であるが、いかにもジョン・ウィリアムズらしい格好いい曲である。京響は弦も管もパワフルで、昨日聴いたNHK交響楽団に勝るとも劣らない水準に達した実力を見せつける(もっとも、昨日のN響は残響のほとんどないNHK大阪ホールでの演奏、京響は音響の評判は余り良くないが残響2秒はあるクラシック音楽専用ホールを使っているので、そこは考慮に入れる必要はある。それでも京響の現在の水準は日本のオーケストラの中で最上の部類に入るのは間違いない)。

ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。ヴァイオリン独奏の松田理奈は美貌の技巧派ヴァイオリニストとして人気上昇中の演奏家である。なお、AKBグループのファンの方がこの文章を読むケースを想定して書いておくが、「松田理奈」である。「松井玲奈」ではないので要注意。似た名前だが別人である。
彼女の実演に接するのは二度目。前回は6月の山形交響楽団大阪演奏会で、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番のソリストとして登場した際に聴いている。その時はステージのサイド側にある席だったので、彼女の顔をよく見ることは出来なかったのだが、今日は間近で見られる。よく見ると違うのだが、パッと見は女優の新垣結衣に似ている。今日は黒のドレスで登場した。なお、彼女のCDを買うと演奏会終了後にサイン会に参加出来るというので、私もCDを買った。松田がリリースしたCDは4枚あるが、そのうち3枚は購入済みなので、まだ買っていないセカンドアルバムを選ぶ。サイン会の際に間近で接してわかったのだが、美人系というより可愛い系の人であった。

実力が認められ、名器ジローラモ・アマティを貸与された松田理奈。潤い豊かな音色で、難しいと思われるパッセージも楽々弾いていく。弾いている間はずっと目を閉じるというスタイルであるようだ。彼女がまだ学生であった頃に録音されたファーストアルバムを聴いた感想は「確かに腕は立つけれど一本調子」というものであったが、今では引き出しが沢山ある。広上指揮する京都市交響楽団もソリストが名手だというので、遠慮の一切ない豪快な伴奏を聴かせる。
第3楽章に入ると松田は笑顔を見せ、超絶技巧のパートを楽しそうに弾いていく。メカニックが優れており、余裕があるから楽しそうに弾けるのだろうが、松田やピアニストの河村尚子のように楽しげに演奏されると、聴いているこちらもまた楽しい気分になる。

ソロ、伴奏ともに優れた演奏であり、演奏終了後、多くの人が松田に「ブラボー」を叫ぶ。女性なので、イタリア語では「a」で終わるものに変わり、正確には「ブラーヴァ」なのであるが、こうした変格が日本に根付くにはまだ時間がかかりそうだ。

松田はアンコールとして、クライスラーの「前奏曲とアレグロ」より“アレグロ”を演奏する。快調な滑り出しと思ったが、松田は演奏をすぐに止めて、「すみません、もう一度」といってチューニングしてから再度弾き出す。音を外したというわけではなさそうなので、ヴァイオリンの調が狂っていたか、演奏に納得出来なかったのであろう。
二度目の演奏は超絶技巧を次から次へと繰り出す情熱的なものであった。演奏終了後に松田は再び喝采を浴びる。

後半、ムソルグスキー作曲、ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」。今日の京響は、自慢の金管パートがいささか不調であったが、弦も管も力感と自信に満ち、堂々とした演奏を展開する。聴き手にイメージを喚起させる力も十分だ。

広上の指揮は今日もユニーク。ボクサーのようにパンチを繰り出したかと思うと、体をクネクネさせながら踊ってみせたりする。ただ、指揮姿通りの音楽を京響から引き出すのは流石である。

各曲の描き分けも広上と京響は優れており、特に「ブィドロ」での迫力や、終曲である「キエフの大門」での圧倒的スケールは「凄まじい」の一言である。

今日も名演を示した広上と京響。「京都の秋音楽祭」のオープニングを飾るのに相応しい出来となった。

広上は客席に礼を述べた後で、「『半沢直樹』は今日が最終回です」と言って聴衆を笑わせる(広上は以前にも、「半沢直樹」の話をしており、かなり好きらしい)。「『倍返し』という言葉が流行っていますが、私どもも、お客様方の熱意を『倍返し』したい、で、いつやるのか『今でしょ!』」と、門川市長に負けじとばかりに流行語大賞候補の言葉を立て続けに並べる。「では20倍返しということで」と、アンコールに選んだのはブラームスの「ハンガリー舞曲」第6番。曲の性格を着実に把握した巧みな演奏であった。

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2013年10月23日 (水)

もし半沢直樹が日本人でなかったら

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パーヴォ・ヤルヴィ&パリ管弦楽団 「I love my job!」

パリ管弦楽団がYouTubeで配信している「I love my job!」。パーヴォ・ヤルヴィが指揮するマーラーの交響曲第1番「巨人」ほかのリハーサルやインタビュー(英語、フランス語字幕付き&フランス語、英語字幕付き)を聴くことが出来ます。パーヴォの歌いながら行うリハーサル風景は面白いです。

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2013年10月22日 (火)

これまでに観た映画より(57) 「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」

2013年9月22日 大阪・玉江橋のABCホールにて

午後1時から、大阪の玉江橋にあるABCホールで、第10回王立劇場の公演でもあり映画でもある「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明withドナインシタイン博士のひみつ学会2013」を観る。
観るとは書いたが実際は観ただけではないし、「公演でもあり映画でもある」とはどんなものを観たのかと思われる方もいらっしゃると思う。デルシネとは「出るシネマ」のことで、観客も映画の出演者として参加し、それを映画の幾つかのシーンに当てはめて、編集して出来た本編を完成版映画として観るというものである。関西は勿論、全国的に活躍している劇作家で演出家でもある後藤ひろひと(吉本所属)が脚本を書き、メガホンを取った作品であり、今年の春に行われた沖縄国際映画祭(吉本興業主催の映画祭である)で初公開されたものである。その時も沖縄の観客に演技して貰ってそれを編集して本編に組み入れてから上映している。

撮影に1時間、編集に1時間、上映時間も約1時間ほどなので、計3時間ほどの公演となる。編集の間は、後藤ひろひとが主宰を務める劇団であるPiper所属の舞台俳優である川下大洋(吉本所属)演じるドナインシタイン博士が、映画「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の主演女優である桜 稲垣早希、そして後藤ひろひとの古くからの知り合いで、以前は後藤が座長を務めていたこともある遊気舎の現在の座長である久保田浩(吉本所属)とのトークで繋ぐ(後藤は遊気舎の二代目座長、久保田は三代目座長となる)。

まずは、後藤ひろひとが登場し、デルシネの趣旨を説明する。チケットにも観客は映画に参加して貰う旨が書かれており、「当日は動きやすい格好でお越し下さい」というチケットに印刷された文章とは思えないようなものまで添えられている。後藤も「まあ、皆さんお分かりですよね」と言って、早速撮影開始。座席番号により5つのグループに分けられ、それぞれが撮影を行う。私が参加したグループの演技(というより動作)は、かなり楽で、「え? この程度でいいの?」と思ったほどだが、別のグループの中には体力を使うシーンがあるなど大変そうなものもあった。私も体を使う場合を想定して、普段穿いているチノパンではなく、スウェットパンツにしたし、上着は「どうせ出るなら目立とう」ということで、東京ヤクルトスワローズのビジター用レプリカユニフォームを着て行った。ただでさえ目立つが、関西にスワローズファンはほとんどいないので一層目立つ。ということで服装の準備は万端であったのだが、私のいたグループの場合は服装は特に動きやすいものである必要はなかった。スワローズのレプリカユニフォームが目立ったということだけが有意味である。

撮影の長いグループもいるので、私達のグループは劇場後方のスタッフ用ドアを開けたところにある廊下で待機。スタッフは吉本の若手芸人達であり、私のグループを担当した芸人さんは私も知っている人だった。というわけで、コンビ名と特技を挙げると「え?! よくご存じですね」と驚かれたので、「祇園花月の前説でよく見ますから」と正直に答えた。コンビ名を明かしてもいいのだが、彼らには実力で這い上がって欲しいし、ここに書いても彼らを知らない人が圧倒的多数であると思われるので、敢えてコンビ名は出さないでおく。

待ち時間が長いというので、芸人さんが特技を披露して場を盛り上げる。だが、まだ撮影が続いているので、「しりとりをしましょう」ということになり、「ただし、前の人が答えたものよりも大きなものを答えるという条件つきでやりましょう」というルールでしりとりスタート。私には「き」が回ってきたので、京都在住ということを示すために「京都市中京区」と答える。京都市の上京区、中京区、下京区の三区は面積がとても狭い。中京区の面積はわずか7・38㎢である。ちなみに、中京というのは、近代に入ってから作られた言葉で、それまでは京都には上京と下京しかなかった。中京というと普通は名古屋の別称を思い浮かべるだろう(ただし中京区は「なかぎょうく」と読み、名古屋を指す中京は「ちゅうきょう」と読む。読み方が違うだけでなく、中京区の場合は京を濁音つきで発音する)、その後、「九条」(京都にも大阪にも「九条」という場所はあり、共に広大であるが、正確な面積は不明である)と続くが、その次の人が「海」と思いっ切り拡げてしまう。ただ「瀬戸内海などの小さい海ということで」と続ける。もうそろそろ国名を出そうということになり、「ミャンマー」で、次は「ま」となる。アドバイスをする人がいたので、アフリカの「マリ」が挙がる。次は「り」で「流星群」と答えるが、「ん」が最後についたのでアウトとなる。だが、私が「『り』でありますよ。リゲル。オリオン座の」と言ったので、芸人さんも「格好いい言葉で終わりになりました」というが、先頭の人に「リゲルより大きなものは?」と続けるフリをする。フリなので、すぐにやめて劇場内を見に行き、「もう撮影、終わっているので入って大丈夫のようです」と言い、「『九条』の辺りでもう撮影は終わっていたようです」と冗談を飛ばす。

編集の間に、ドナインシタイン博士こと川下大洋による「後藤ひろひとの秘密を暴露せよ」という学会(?)が行われる。まずは、「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の主演女優である桜 稲垣早希が登場し、映画撮影時の後藤ひろひとについて語って貰う。早希ちゃんはクリーム色のジャケットに白くてふわふわした素材のミニスカート、黒いタイツという出で立ちである。

ちなみに早希ちゃんは昨日は東京ゲームショーに出ており、今日は大阪に戻ってこのトークに参加した後で再び東京に向かい、新宿で行われる劇団アニメ座の公演に出演という無茶苦茶なスケジュールで働いている。今年はよくわからないが、昨年、一昨年は年間の休みがトータルで1週間あるかないかだったはずである。

早希ちゃんは川下のことを「先生」と呼ぶ。NSC女性タレントコース時代のナレーションの先生が川下だったのだそうだ。早希ちゃんはNSC在学中からナレーターの仕事を貰っており、これは多分、異例中の異例だと思われるが、吉本も早希ちゃんから何かを感じ取っていたのだろうか。川下は早希ちゃんについて「君は非常に良い生徒だった。だが標準語はちょっと弱かった」と述懐し、早希ちゃんは「今でも少し」と答える。

早希ちゃんは「撮影が朝早くからだった」ということから話し始める。「朝の6時から深夜まで撮影が続いたので、いつもは整っている監督の鬚がボサボサになっていた」とのことである。映画の見所についてであるが、「私は刑事役をやらせて頂いたんですけど、ピストルを撃つシーンが気に入っている」という。ドナインシタイン博士が沖縄国際映画祭のレッドカーペットを歩いたのかという質問をすると、「歩きました、歩きました、3回も」と早希ちゃん。なんでも、「よしもとJOOKEY」を代表してプラカードを掲げて歩いた後で、今度はスポンサーであるNTTdocomoのプラカード係も担当(早希ちゃんの父親がNTTに勤務しているからかも知れない)、更に「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の主演女優としても歩いており、その間に休憩もなかったので、「終点についたらすぐスタートに戻って歩くを繰り返したので、きっとみんな『あいつまた歩いてるよ』思ったに違いないんですよ」と伝える。かなり決まり悪かったようである。
撮影中のエピソード。劇中では今いくよ・くるよが何故が受付嬢として働いており、早希ちゃん演じる女刑事と絡むシーンがあるのだが、いくよ・くるよの二人はカメラマン兼演出助手の人から、「セリフはどうでもいいんで、自由にやって下さい」と言われていたので、持ちネタである「どやさ!」をアドリブで入れたところ、演出助手の人から「今のはNGです」と言われ、いくよが思わず「?? どやさ…」とつぶやいたそうで、早希ちゃんは「いくよ師匠の渾身の『どやさ』を初めて聞くことが出来ました」と語った。


ドナインシタイン博士一人がステージ上に残り、まずはWikipediaに載っている後藤ひろひとの情報から検討する。後藤ひろひとは1969年、山形県生まれ。山形東高校から大阪外国語大学ヒンディー語学科に進学し、中退しているが、川下大洋演じるドナインシタイン博士は、「大阪外国語大学は今は大阪大学と合併したので、彼は労せずして大阪大学出身となったわけです」と説明する。ちなみに川下大洋は京都大学理学部卒で後藤ひろひとよりも高学歴である。川下は後藤と出会う前は、京大生と京大OB・OGからなる劇団「そとばこまち」にいた(京大の学生演劇サークルからスタートした「そとばこまち」であるが、現在の劇団「そとばこまち」は本拠地も大阪に移し、京大との関係は弱まっている)。
後藤ひろひとは、Wikipediaには本名・同じとあるが、ドナインシタイン博士によると、「同じではありません、うかんむりに片仮名のサ、その下に見るの『寬(かん)』という字の『ひろ』に『人』、で、『寛人』と書きます。だから、本当は『ひろと』のはずなんです。ただ、彼は高校生の時に、両親に「俺は『ひろひと』がいい、今日から『ひろひと』でいく」と言って、強引に改名したそうです。戸籍上はどうなっているのかはわかりませんが」とのことである。更に職業欄に、「劇作家」という文字が二度続けて書かれており、ドナインシタイン博士は、「これは劇作家であることを強調したいんでしょうか」と疑問を呈する。「本名も職業も訂正するなら早い者勝ちです。Wikipediaは誰でも編集出来ますから」とドナインシタイン博士は告げ、「ただし、訂正するなら一人一箇所だけにして下さい。編集する楽しみを独占してしまうのは良くないと思うので」とも付け加える。ちなみに、本名の方は観客として来ていた誰かが編集したようで、「後藤寛人」に変更されている。

ドナインシタイン博士は、後藤について最も驚いたこととして、出会ったから今に到るまで、顔が全く変わっていないということを挙げる。後藤の幼少期からの写真がスクリーンに映される。後藤は成長の早い子だったようで、幼稚園時代の写真を見て、ドナインシタイン博士は「もうすでに会社の二つや三つ経営しているような顔」と評する。その後も実年齢よりは上に見える写真が続く。高校生の時には生徒会長をやっていたそうで、その時の、壇上でのスピーチの際に撮られた写真がスクリーンに映る。そして大学生になって演劇を始めた頃の写真が出るのだが、本当に今と大して変わらない。確かに若いが、細部はそのまんまで変化がない。

Piper所属の俳優である、竹下宏太郎、腹筋善之介、山内圭哉によるビデオメッセージが映される。余り本気が感じられないメッセージばかりであるが、山内圭哉が後藤が、おなべ(女だが中身は男の人)のバーに出入りしているらしいということを明かす。

そして、後藤が二代目座長を務めた劇団・遊気舎の、三代目座長である久保田浩が二人目のゲストとして登場する。紺の背広姿で登場した久保田は後藤について「よくわからない」と述べる。久保田は大阪商業大学の出身であるが、大阪にある大学が合同で公演を行った際、稽古場に背広姿のおじさんが来て、稽古を見学していったそうである。後にそれが後藤ひろひとであり、久保田よりも年下だったことがわかるのだが、みな「あれはただ者じゃない」ということになり、後藤が劇団に最年少メンバーとして加わったときも使いっ走りをしていたのは最年少の後藤ではなくて一学年上の学生だったという。

その後、後藤と久保田が、舞台に出演し、共にブリーフ一丁という格好で、乳首などについたクラッカーを取り、尻や股間などに向かって破裂させるというしょうもないコントの場面がスクリーンに映されたのだが、久保田は「(後藤が)乳首からクラッカーを毟り取った時、痛そうにしてたでしょう。彼は敏感なんです、というよりいつも大袈裟に演技してるんです。あれ、取っても痛いわけありませんから」と語った。

そしていよいよ編集を終えた、9月22日昼の部・大阪版「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」の上映が行われる。舞台挨拶をした後藤ひろひとは、自分も完成したものを観ていないという理由で、客席に下りて一列目の空いていた席に座り、客と一緒に映画を鑑賞する。
9月22日昼の部・大阪版「デルシネ エル・シュリケンVS悪魔の発明」。脚本・監督:後藤ひろひと(スクリーンには「HIROHITO」ではなく、外国人風の名前がクレジットされていた)。出演:エル・シュリケン(正体は、今日も劇場スタッフとして働いていた吉本の若手芸人。名前は私も敢えて明かさない)、桜 稲垣早希、内場勝則(吉本新喜劇)、笑い飯・西田幸治、まちゃまちゃ、今いくよ・くるよ、ガリガリガリクソン、スマイル・ウーイェイよしたか、ローレンス・マックラウド(日本語吹き替え:多田野曜平)、藤崎マーケット・田崎佑一、小寺真理(つぼみ)、岡村隆史(カメオ出演)、ハリセンボン(カメオ出演)、宮村大助・花子(カメオ出演)、Mr.オクレ(カメオ出演)、坂田利夫(カメオ出演)、藤波辰爾(友情出演)、池乃めだか(吉本新喜劇)ほか。

「エル・シュリケンVS悪魔の発明」

街では人が突然行方不明になるという事件が続いている。今日も悪童子博士(内場勝則)の手下である二人組(ガリガリガリクソンとウーイェイよしたか)が特殊なパウダーを使って恋人とのデートを終えたばかりの女(小寺真理)を眠らせ、施設に送る(「なぜ女は走って逃げないのか」という疑問が浮かぶが、これはそういう理屈を先行させると楽しめない映画である)。
プロローグを終え、早希ちゃんが演じる南あかね警部補が目覚める場面から本格的に映画は始まる。寝起きということで早希ちゃんのすっぴんに近い顔を見ることも出来る(ほとんど変わらない)。
南警部補は異動になったのだが、新たな職場である警察署に行くと、今いくよ・くるよ演じる受付嬢から「そんな異動の話は入っていない」と言われ訝しむ。そこへ中年の男・安井(池乃めだか)が現れて、「南君、こっちだ」と言う。安井は警視庁の特別組織「草津温泉風呂吹き三人隊」の一人だという。「三人隊」というのはネーミングだけであり、実際は200名以上の人員からなる巨大組織である。アジトは何故かハリセンボンの楽屋を通り抜け、宮川大助・花子の家の居間にある押し入れの下から入ったところにある。

アジトで、南はエル・シュリケンという覆面の男と出会う。セリフ棒読みの男であるが(「※エル・シュリケンはプロの俳優ではありません」という字幕が出る)、筋肉質で頼りになりそうではある。

早速、捜査に出かけるシュリケンと南であったが、安井が悪童子博士の計画により爆死させられてしまう。悪童子博士の手下である二人も現れ、エル・シュリケンと闘う。中国人のホン(笑い飯・西田幸治)もシュリケンの味方として参戦。しかしホンは動きが鈍い(「※出演者に運動神経はありません」という字幕が出る)。シュリケンは苦戦するが、南が発砲し、手下に怪我を負わせたため、手下は逃げ去る。

安井の墓前で、安井を弔うシュリケンと南。シュリケンは「悪童子博士を絶対に倒す」と心に誓うのであった…

おふざけ映画であり、後藤ひろひと監督も役者に演技力は求めていない。上映終了後に後藤が語った通り、「『シベリア超特急』を遙かに超えるくだらなさ」を誇る(?)映画であるが、最初からB級映画狙いで行ったところは成功している。吉本の芸人を使ってシリアスなものを撮ろうと思っても、本職の俳優が出る映画に勝てるはずもないので、これぐらいで丁度良いのだ。

私であるが、意外に良く映っている。いつも人と違うことをしようと企んで(?)いるためか、アップで撮られたカットもある。私は映像に映るのを余り好まないので(街中でロケが行われていても、テレビカメラが嫌で逃げるタイプである)別に嬉しくも何ともないが。

芸人の演技であるが、早希ちゃんは贔屓目ではなく筋はいいと思う。拳銃を撃つシーンでは格好いいし、生まれながらの愛嬌とそれを生かす術を心得ている。勿論、ゴールデンタイムやプライムタイムで主役を張るだけの力量はないが、深夜のドラマ枠で彼女を主役で使ったら案外良いものが出来るかも知れない。演技の安定感でいうなら、軽演劇とはいえ、常に演じ続けてきた吉本新喜劇のメンバーが他を寄せ付けない。別格扱いでいいと思う。

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2013年10月20日 (日)

アレクサンドラ・スム 天才現る!

京都市交響楽団の第573回定期演奏会で、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のソリストとして登場したアレクサンドラ・スム(Alexandra SOUMM)。

アレクサンドラ・スム
京都市交響楽団第573回定期演奏会公演パンフレットより


1989年、モスクワ生まれ。ウィーン音楽院とグラーツ音楽大学に学び、パリを拠点に活躍する若手女流ヴァイオリニストであるが、技術、音色、表現の3つともに絶品。琥珀のような独特の煌めきに満ちた音で、一音たりとも流すことなく、天翔けるような快演を聞かせる。

彼女に匹敵する天才は少なくとも女性ヴァイオリニストとしてはヒラリー・ハーンぐらいしか思いつかない。まさに逸材中の逸材、天才中の天才ヴァイオリニストである。

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2013年10月16日 (水)

コンサートの記(102) 矢崎彦太郎指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団第249回定期演奏会

2013年7月18日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、ザ・シンフォニーホールで、関西フィルハーモニー管弦楽団の第249回定期公演を聴く。今日の指揮者は、日本人の指揮者としては珍しいフランス音楽のスペシャリスト、矢崎彦太郎。オール・フランス・プログラムである。

矢崎彦太郎は、上智大学で数学を学んだ後、東京藝術大学の指揮科に再入学したという経歴を持つ。音楽と数学の関連の深さは指摘されており、指揮者では、二人とも故人だが、エルネスト・アンセルメやジャン=フランソワ・パイヤールなどが指揮者であると同時に数学者でもあった。クセナキスのように数学の理論を音楽に持ち込んだ作曲家もいる。

矢崎のコンクール歴はブザンソン国際指揮者コンクール入賞だけであり、これまで有名オーケストラのシェフになったという経歴も持たず、録音も少ないが、フランス政府から「芸術文化勲章シュヴァリエ」と「オフィシエ勲章」を受勲している。

本格的な指揮者デビューは、1975年にイギリスのボーンマス交響楽団を指揮した時で、1979年から現在までパリ在住。日本デビューはパリに本拠を定めた後であった。

矢崎彦太郎指揮関西フィルハーモニー管弦楽団第249回定期演奏会

 

曲目は、前半が、共にプーランク作品で、バレエ音楽「牝鹿」組曲と、「オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲」(オルガン独奏:青木早希。ティンパニ独演は関西フィルの首席ティンパニ奏者、エリック・パケラ)。プーランクは今年が没後50年に当たり、それを記念してのプログラムである。

後半は、ショーソンの交響曲変ロ短調。フランクの交響曲ニ短調と共に、フランスを代表する交響曲であるが(フランクは正確にはベルギー・ドイツ語圏の出身でパリで活動した作曲家である)、演奏機会はフランクのそれに比べると少ない。ということで貴重な演奏会である。

関西フィルは、開演前に指揮者がプレトークを行うのが恒例であるが、今回は矢崎はプレトークではなく、後半開始前の休憩時間を利用してトークを行った。矢崎は長い白髪に眼鏡がトレードマークであったが、レーシックを行ったのか、今日は眼鏡をせず、前半はポケットサイズのスコアを見ながらの指揮であった。眼鏡を掛けていない矢崎彦太郎は、尾高忠明にそっくりである(尾高さんも眼鏡の愛用者であったが、レーシックを受けて、今では眼鏡なしで活動している)。

アメリカ式現代配置での演奏。


プーランクの「牝鹿」。実際には若い女性達を讃美するバレエ曲で、牝鹿を描いたものではない。「牝鹿」は「可愛い女の子」を指すフランスにおけるスラングであるという。

関西フィルハーモニー管弦楽団は、あっさりとした演奏をするオーケストラで、ドイツものだと物足りない時もあるが、フランスものの場合は、重厚さに欠けるという欠点がマイナスにはならない。
「パリのモーツァルト」とも呼ばれたフランシス・プーランクは、フランス六人組(ミヨー、オネゲル、デュレ、オーリック、タイユフェール、そしてプーランク)の中で一番のメロディーメーカー。作風はエスプリ・クルトワに富んでおり、いかにもパリの作曲家が書いたと思われるような、洒脱で時にユーモラスで、とにかく愛嬌のある音楽を書く。

「牝鹿」は、矢崎のキビキビとした音楽作りと、金管奏者の音色の美しさに魅せられる。矢崎のリズム感は抜群で、これならフランス音楽が一番得意であってもおかしくはない。弦は例によって大人しめであるが、いつもよりは輝かしい音を奏でる。

オルガン、ティンパニと弦楽器のための協奏曲。オルガン独奏の青木早希は、東京藝大オルガン科を卒業し、同大学院に進むが、在学中にフランスのサンモール国立音楽院に移籍。その後、カン国立地方音楽院教授のエルウァン・プラドに師事(個別に指導して貰ったのか、カン国立地方音楽院の学生になって師事したのかは、書かれていないのでわからない)。2006年にグレナダ国際オルガンコンクールで優勝。翌年のフランスのフローレンツ国際オルガンコンクールでも覇者となる。2008年には、シャルトル国際オルガンコンクールで、第1位、聴衆賞、ガストン・リテーズ賞の三賞を独占。現在もフランス在住で、カン市ピエール教会と聖アンドレ教会のオルガニストとして活動している他、サルロー地方音楽院とフレール地方音楽院で後進の指導にも当たっているという。

ザ・シンフォニーホールのパイプオルガンは音も良い。青木の独奏も優れたもので、出てくる音は力強く、華麗である。

プーランクは、弦楽器よりも管楽器の方を遙かに好んだ作曲家で、今日のように管楽器が登場しないオーケストラ作品は大変珍しい。関西フィルの弦楽器群はやや薄手ではあるものの、彩り豊かな演奏を展開。ティンパニを叩く、エリック・パケラも好演であった。

 

後半、ショーソンの交響曲変ロ短調。
矢崎は演奏開始前に一人で舞台に出てきて、マイク片手に、ショーソンについて語る。ショーソンは、44歳の若さで亡くなっているが、妻を駅まで迎えにいくために、娘を乗せて自分で漕いでいた自転車が横転し、頭を強打。打ち所が悪く、帰らぬ人となってしまった。ショーソンは、矢崎曰く「運動神経が未発達」な人であり、そのため運動自体が嫌いになり、肥満体であったという。
ショーソンも、矢崎同様、最初から音楽の学校を選んだわけではなく、まず法学を学び、弁護士の資格を取得してからパリ音楽院に入学して、マスネやフランクに作曲を師事したという経歴を持つ。法学部に通っていながら音楽家になったという人物は少なくなく、親から音楽家になることを反対されたので法学を学んだが、結局は自分のやりたい音楽の道を選んだというケースには、指揮者のカール・ベームやクリストフ・フォン・ドホナーニ、作曲家のシベリウスなどがいる。ただ弁護士資格を持った音楽家というのは珍しい。

師であるフランクの交響曲を意識した作品で、非常に格好いい曲である。矢崎の指揮は弦と管のバランスが絶妙。金管はここでも絶好調だ。弦楽群も大健闘である。第2楽章には、フルートとクラリネットが会話を交わすように、交互に短い旋律を演奏する場面があるのだが、関西フィルのフルート、クラリネットともに技術は高く、印象に残る場面であった。第3楽章もキレがあり、フランスものの演奏のお手本となるような、洒脱な演奏が展開される。演奏後、矢崎は長い間、手を下ろさなかったが、下ろした瞬間に、大きな拍手とブラボーの嵐が矢崎を讃える。

矢崎は、最後にオーケストラメンバー全員に立つように命じたが、奏者達は敬意を表して立ち上がろうとはせず、矢崎一人が喝采を浴びる。そうしたことも当たり前と思えるようなハイレベルの演奏会であった。関西フィルの演奏会には何度も接しているが、今日がこれまでで一番の出来かも知れない。

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2013年10月15日 (火)

ペギー葉山 「南国土佐を後にして」

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2013年10月 7日 (月)

ファジル・サイの弾くジョージ・ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」フランクフルト・アム・マイン・ライヴ映像

ドイツ・ヘッセン放送(hr)がYouTubeにアップした、ファジル・サイのピアノによるジョージ・ガーシュウィン作曲(オーケストレーション:ファーディ・グローフェ)の「ラプソディ・イン・ブルー」演奏の模様です。

現役のアーティストとしてはあらゆるジャンルの音楽家の中でも世界一の天才であると思われるファジル・サイ。トルコ出身のピアニストであり作曲家です。今では珍しくなった変人タイプの天才ピアニストであるため、弾く姿もどこか挙動不審ですが、生み出される音楽は一級品。単なる「演奏」を超えた「再創造」という言葉が似合います。
伴奏を務めるのはカルロス・ミゲル・プリエト指揮のフランクフルト放送交響楽団(hr交響楽団)です。

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2013年10月 6日 (日)

笑いの林(8) 「小泉エリVS桜 稲垣早希~千の日の前の女の戦い~」

2012年3月19日 大阪・なんば千日前の5upよしもとにて

午後8時から、大阪・なんばの5upよしもとで、ユニットライブ「小泉エリVS桜 稲垣早希~千の日の前の女の戦い~」を観る。千の日の前というのは5UPよしもとのある千日前のことである。

仲が悪いというキャラ設定の、マジシャン・小泉エリとお笑い芸人・桜 稲垣早希のバトル。

まずは、お洒落衣装対決。
小泉エリはピンクのロングドレス。早希ちゃんは真っ白なミニのワンピースで現れる。早希ちゃんが「エリさんみたいなちんちくりんがロングドレスなんて。裾踏んづけて倒してやる」と攻撃すると、エリさんは「早希ちゃんは、いつもの制服とオレンジの髪と赤い耳はどうしたのかな? アラサーだから『あの格好はもう無理があると』2ちゃんねるに書いてあった」とやり返す。

次いで互いの出身地をくさす。早希ちゃんが小泉エリの出身地である京都を「日本で一番古くてダサイ街」と言い、「マクドナルドの看板が茶色で不味そう」と続け、小泉エリのことを「京都の人の性格が出ている。今日、本番前に『早希ちゃんの足踏んでやる』と言ってた」と発言。エリさんは「早希ちゃん、神戸は日本なのに何で南京町に頼るのかな? それから神戸異人館とか。異人ってもう『人と異なる』で人じゃないから。それに道を聞くと『海の方に行って下さい』とか『山の方に行って下さい』とかわからん。京都みたいに『上ル』『下ル』になってない」と返す。

早希ちゃんはエリさんの血液型を「B型です。この世で一番嫌われている血液型です。わがままで自分勝手」と言うと、エリさんは「(早希ちゃんの血液型である)O型は一見、誰にも受けがいいように思えるけど、誰にでも受けるので、誰にも浸透せず、結局、早希ちゃんには一人も友達がいない」とこき下ろす。

暗転し、お互いの公式ブログに載せた写真などを用いた今回の公演のタイトル映像がスクリーンに投影される。その後、二人が私服に着替えてきてのクイズ対決。吉本新喜劇の清水けんじが司会として出てくるが、清水は「何ですか? 今の映像は?」と言い、「私は京都出身のB型です」と早希ちゃんに釘を刺す。

早押しクイズなのだが、二人ともクイズは苦手である。まず「七福神の中で」と清水が言ったところで早希ちゃんがボタンを押してしまい、「早く押す対決だと間違えてませんか?」と清水に突っ込まれる。早希ちゃんは「毘沙門天」というが不正解。エリさんは「ボダボダマン」と訳のわからない答えをいう。「七福神の中で唯一女性の神様なのは?」と全部の問題が言われても早希ちゃんも「楽天」ともう神様ではない答えになる。エリさんの答えが余りに酷いというので、エリさんは鼻孔に洗濯ばさみを挟まれる(正解は勿論「弁財天」)。

次いで、「酸素の化学記号は『O』、水素の化学記号は『H』。では水の化学式は?」という問いにエリさんが「H2O」と正解して、早希ちゃんの鼻の峰洗濯ばさみで挟む。

「明智光秀が」と清水が問題と言ったところでエリさんがボタンを押し、「織田信長」と答えるが、続きがあるということで不正解。早希ちゃんは「足利のやすひで」と誰のことなのだかわからない回答をする。「明智光秀が織田信長を討った」でエリさんが「本能寺の戦い」と答えるがまだ続きがある。「明智光秀が織田信長を討った本能寺の変で、明智光秀は本能寺に向かう際、何と言ったでしょう?」という問いに、早希ちゃんは「歴史は駄目やからなあ」とぼやく(駄目なのは歴史だけではないと思うが)。そして、「火が付くので火元をきゅっと締めるように」「VIVA!本能寺」とやはり意味不明の答えをして、罰ゲームとしてエリさんに耳を洗濯ばさみで挟まれるが早希ちゃんは痛くなかったようで、「振りでも痛いようにせえよ!」と清水に突っ込まれていた。

「『すみません、どうしましょうか?』を敬語にすると?」という問題では早希ちゃんは「すみました、どうしません」と敬語ではなく逆の形にしてしまう。エリさんが「申し訳ございません。いかが致しましょうか?」と正解を言う。早希ちゃんは首を洗濯ばさみで挟まれるが、やはり余り痛くないようであった。

「『水戸黄門』の『この紋所が目に入らぬか』というセリフでお馴染みの印籠は何を入れるもの?」という問題に早希ちゃんは「ピルケース」と答え、清水に「水戸黄門は男やで」と言われるが、印籠は薬入れなので「ピルケース」でも間違いではないということで、正解になる。エリさんは早希ちゃんによって首に洗濯ばさみを付けられ、早希ちゃんとは対照的に痛がる。

「昨年の流行の東の横綱は『なじしこJAPAN』ですが、西の横綱はなに?」というクイズに早希ちゃんは「iPhone」と答え、正解はスマートフォンであったが正解となる。エリさんは早希ちゃんに瞼に洗濯ばさみを付けられて痛がるが、トータルでクイズ対決はエリさんの勝利となる。

暗転中にスクリーンに二人の占いの結果が映し出され、四柱推命ではエリさんは「恋愛運が好調、人気が上がります」、早希ちゃんは「健康運は安定。財産運にも恵まれますが詐欺に遭う可能性があります」ということでエリさんの勝ち。動物占いでは「タヌキ」のエリさんは「古風な女」、早希ちゃんの「ペガサス」は、「閃きは天才的」ということで早希ちゃんの勝利となる。

続いて「無茶振りものまね対決」。演じる人物やキャラクターの名前を言ってはいけないというルールである。まずは早希ちゃんが「ちびまる子ちゃん」をやってクリア。エリさんは「クレヨンしんちゃん」をやるが「おいらは野原しんのすけ。みさえ」とやるがキャラクターの名前を言ってはいけないということでアウトになる。早希ちゃんは「アントニオ猪木」を「元気があれば何でも出来る!」とやってクリア。エリさんは「ジャガー横田」であるが、誰だかわからないということでアウト。そもそもジャガー横田の真似は難しい。
次の早希ちゃんのお題は「黒柳徹子」であるが、早希ちゃんは「こんにちは、黒柳徹子です」と名前を言ってしまい、アウトになる。エリさんは「芦田愛菜」を「マルマルモリモリ」を歌ってクリアとなる。
「小泉エリ」というお題を早希ちゃんはクリアするが、「稲垣早希」というお題にエリさんは舌を出してサイコロを振る物真似をして、似ていないということでアウトになった。
早希ちゃんは「若乃花」というお題に、「体重が増える。お尻が出る」とやって意味不明ということでアウト。大相撲好きのエリさんに「若乃花は不知火型の土俵入りをしないと」と突っ込まれる。
エリさんのお題は「綾波レイ」であったが、似ていない上に「私、綾波レイ」とまた名前を言ってしまい、アウトとなる。
「無茶振りものまね対決」は早希ちゃんの勝ちとなる。

溶暗中に、「今はまっているもの」の紹介映像。エリさんは大相撲観戦をしたときのビデオを流し、早希ちゃんはMacBook Airを紹介して、立ち上がりがわずか2秒であるということ、これでエリさんのブログを監視していることなどを伝える。

ダンス対決。早希ちゃんはお得意のアニメソングに乗せた可愛らしいダンスを制服風の衣装を着けたバックダンサー二人と披露。一方のエリさんはマイケル・ジャクソンの歌を使い、こちらもバックダンサー二人と踊るが、動きが小さすぎたり、ムーンウォークがただの後ずさりになってしまったりと会場の笑いを買い、早希ちゃんの勝利となる。

続いては、「ブログ文章対決」。今、携帯電話付きのカメラで写真を撮り、すぐにブログにアップし、出来を競うというもの。互いに写真を撮りあった後、溶暗し、その間に二人ともオフィシャルブログを更新する。溶暗中には「小田和正の楽曲に合うイメージビデオ」小泉エリ編が流れる。子供の頃の写真や、父親の「小泉純一郎似のマジシャン」横木ジョージとの写真。相撲好きのエリさんらしく貴乃花光司親方とのツーショットなどが流れる。

そして、更新されたブログ。早希ちゃんは「私はブログ芸人です」「自分のブログの他に『ロケみつ』のブログも毎日更新しています」「ブログで食ってます」と豪語。更新したブログ記事は早希ちゃんがこちら、エリさんがこちらである。
早希ちゃんのものはエリさんの宣伝にもなっているということで、早希ちゃんの勝利となる。

溶暗中には早希ちゃんによる「小田和正の楽曲に合うイメージビデオ」。「ことばにできない」が流れる中、まずは二十代前半の頃の早希ちゃんの初々しい写真が流れるが、その後はお笑い芸人の早希ちゃんらしく、ガリガリガリクソンや天津・向なども登場するギャグ映像になっていた。

続いて、小泉エリがスマイルの瀬戸洋祐、早希ちゃんがアインシュタインの稲田直樹とペアを組んでの「お絵かきヒント対決」。お題を一人が画に描いて、それをもう一人が何を書いたかを当てればクリアというもの。

最初のお題は「『え』で始まる好きなもの」。早希ちゃんチームは稲田が結構わかりやすいエゾシカの画を描くが、早希ちゃんが「エリ」と当てずっぽうの答えをしてクリアならず。
エリさんチームは小泉エリが女性の画を描き、瀬戸が「えり」と書いて、小泉エリのことであるとして正解になった。実際は、瀬戸は書かれた女性が着ている服の襟が大きかったので「襟」のつもりで「えり」と書いたのだが、それでもたまたま合っていたということでクリアとなる。

次のお題は「自分が一番、価値があると思うこと諺」。早希ちゃんが画を描くが、表に向ける時に「桃栗三年柿八年」と思わず言ってしまい、口を押さえる。
「お前、アホやろ!」と清水が突っ込み、早希ちゃんは描き直しとなる。
スマイル・清水が猫と小判のわかりやすい画を描くが、なぜかエリさんは「猿も木から落ちる」と書いてしまい、不正解。
早希ちゃんが描き直した画を、アインシュタイン・稲田は「豚に真珠」と当てて、タイになる。

最後のお題は「『さ』で始まる大嫌いなもの」。清水も「悪意がある」と述べる。
エリさんは勿論、早希ちゃんを描く。早希ちゃんが描いた画はエリさんの似顔絵。稲田は「サギマジシャンエリさん」と書くが、早希ちゃんの答えは「殺人鬼」であった。当然であるが、小泉エリは殺人鬼ではない。

最後は、「サイコロ転がし芸」。サイコロの出目によってお題が出され、それをクリアするというもの。クリアできなければ罰ゲームである。「ロケみつ」でいつもサイコロを振らされている早希ちゃんは「これどうしてもサイコロ振らなきゃ駄目なんですか?」と不満げである。出目6は最初にボードの隠してある部分がめくられ、「スイーツを食べる」であることが告げられる。

小泉エリが早希ちゃんの似ていない物真似をした後でサイコロを振って出た目は3。「15秒間すべり知らずトーク」がお題である。小泉エリは「高校生の時、アイスクリームが食べたいと思ってハーゲンダッツに行ったんですよ。ハーゲンダッツにハゲのおじさんが」と言って、清水に「すべりっぱなしやないか」と言われてクリアならず。早希ちゃんが筆に墨を付けて、エリさんの右頬に「バ」、左頬に「カ」、合わせて「バカ」と書く。

早希ちゃんも出目3だったが、「残念なお知らせがあります。『ロケみつ』をパクったAVが出ました」と言って受け、クリアとなる。

エリさんがサイコロを振り、出目はなんと1。「これなにたこ焼き」として、たこ焼きの中に何かが入っているのでそれを当てればセーフ、外せば勿論アウトとなる。エリさんは、「大切な部分を呑み込んでしまった」として答えられず、アウトとなり、早希ちゃんに朱墨で額に「弐」と書かれる(朱はエヴァンゲリオン弐号機の色であるため)。

早希ちゃんのサイコロは5。「紙飛行機クイズ」。紙に自分のことをクイズにして書き、それを紙飛行機に折って客席に飛ばし、受け取ったお客さんが正解すればクリアとなる。ここで早希ちゃんが紙飛行機を折れないことが判明。清水に呆れられる。
早希ちゃんの出したクイズは「私の出ている番組は○○みつ」で、早希ちゃんが何とか適当に折った紙飛行機は客席の前から5列目、右通路際に落ちる。拾った人が「ロケみつ」と答えてクリア。
エリさんも何と紙飛行機が折れない。エリさんの書いたクイズをお客さんが当てることが出来ればエリさんの勝ちとなる。エリさんの滅茶苦茶に折った紙飛行機は最前列に落下。「私の好きなスポーツは?」というのが問いである。早希ちゃんが当てられたくないので「野球」などと嘘を言う。ただ小泉エリの大相撲好きは有名であり、公演中にも映像を出して発言もしているので、拾ったお客さんも正解を言い、早希ちゃんは粉の入ったプレートに顔を押し当てられて、顔が真っ白になる。

総合判定。小泉エリの勝ちとなる。勝ち数は早希ちゃんの方が多かったのだが、早希ちゃんが京都とB型をコケにしたのが、司会の清水の感情を逆撫でしたらしい。早希ちゃんが「今年の6月に再挑戦する」「大阪のどこかでよ」と宣言し、小泉エリがそれを受けて幕となった。

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2013年10月 4日 (金)

笑いの林(7) 「祇園ナイトバラエティ」2011年11月

2011年11月12日 よしもと祇園花月にて

「祇園ナイトバラエティ」。午後7時開演。出演は、タナからイケダ、諸見里大介、GAG少年楽団、浅越ゴエ、ファミリーレストラン、ダイアンである。

現在、京都在住のタナからイケダ(2011年時点)。池田周平が保育士になりたいという夢を語る。そこで、「一年生なったら」を歌うのだが、「一年生になったらば、一年生になったらば」と歌詞を変えて、田邊孟徳に変だと突っ込まれる。池田は更に「mixiで友達100人出来るかな」と歌い、田邊に「リアルで友達作れよ」と再度突っ込まれる(まだ2年経っていないがすでにmixiではなくFacebookの時代に移行している。時の流れは余りに速い)。池田は「100人で食べたいなリーガロイヤルホテルで」などと非現実的なことを歌う。実は「一年生になったら」は変な歌詞を持つ。「一年生になったら。一年生になったら。友達100人出来るかな。100人で食べたいな富士山の上でおにぎりを」という歌詞なのだが、友達が100人いたら、富士山の上でおにぎりを食べるのは自分も含めて101人でないとおかしい。「101人で食べたいな」ではゴロが悪いので矛盾するが「100人で」と切りのいい形にしたのだろう。
田邊は、「お弁当箱の歌」を歌うが、池田は「おにぎり、オダギリジョーとつめて」て歌詞を変えてしまう。「お弁当箱の歌」も歌詞が変だというので、劇団青い鳥が、歌詞の訂正をするという芝居をやっている。野菜はそれまで全て「さん」付けで呼ばれていたのに、「フキ」だが呼び捨てなのはおかしいということから、色々な部分を変更していくというストーリーであった。
そして、以前もやった熱血教師ネタ(田邊孟紀が熱血教師を演じるのだが、敵役の教頭を演じる池田周平の方が熱血だったというネタである)を経て、高校で初めて出会ったときのシーンを演じることになる。田邊は顔のパーツが中心に寄っているので、今日もそれをいじられる。リアリティにこだわって変になったり、矛盾があったりで笑わせるネタであった。

諸見里大介。苗字からわかる通り、沖縄県出身の芸人である。国立琉球大学に入っているので(卒業はしていない)頭はいいのだが、滑舌がとにかく悪い芸人である。「アメトーク!」の「滑舌悪い芸人」に出ていたりする。サ行の発音が特に変である(「しゃししゅしぇしょ」になってしまう。iPhoneには音声識別機能が付いているのだが、それでちゃんとした答えが出ることが滅多にないという。ということで、客席からセリフをリクエストして貰って、それを諸見里がiPhoneの音声識別機能を使って、その通り出るかどうかを確かめるというネタである。私もサ行を狙って、「サッカー選手、三得点」、「昭和三十三年」などをリクエストする。「サッカー選手、三得点」は「サッカー選手、ザ得点」だったという。惜しい。でも「ザ得点」って何? 「昭和三十三年(東京タワー完成の年である。だから東京タワーは333mなのである。また巨人軍の背番号3、ミスタージャイアンツ・長嶋茂雄が入団した年でもある)」は、「商社OL云々」となってしまったという。最後にサ行の発音がおかしくても言える「SIAM SHAIDE(シャムシェイド)」をリクエストした人がいて(やはり、サ行である)これは当たった。ということで、ここで演目終了となる。

GAG少年楽団。宮戸洋行が教師になり、坂本純一と福井俊太郎が不良生徒をやるのだが、最初は坂本も福井も真面目な人間を演じてしまう。それでは話にならないということで、坂本が体育館の裏で煙草を吸っているということになる。しかし坂本が吸っていたのは実は煙草ではなくて鉄パイプというわけのわからない展開になる。宮戸は立ち直るために(別に二人とも不良になってはいないのだが)ラグビー部に入ることを勧める。だが、坂本はすでにボクシング部に入っているという。坂本と宮戸が喧嘩になるのだが、宮戸の圧勝。宮戸は「どこがボクシング部やねん」と言う。だが、実は坂本は明日、ボクシングの試合があるので、人を殴れないという。坂本が「肋骨が折れた」と言い、福井が「あんたは生徒の夢を壊す最低の教師だ」と宮戸をなじって立場が逆転して終わる。

浅越ゴエ。R-1ぐらんぷりのチャンピオンで、ザ・プラン9のメンバーの一人である。昨日、ミュージカル「ロック・オブ・エイジズ」に出演していた、なだぎ武もザ・プラン9の一人だ。立命館大学出身。ちなみに、京都の劇団「飛び道具」の主要メンバーは浅越ゴエと同じ立命館大学の同世代の出身で、互いに知り合いである。
浅越ゴエが、岡山から京都に出てきた時、住んだのは嵐電(旧称は京福電鉄嵐山線で、浅越ゴエは嵐電に正式名称が変わったのは知らないようで、京福電車と言っていた)帷子ノ辻駅のそばであるという。帷子ノ辻駅は難読駅名の一つ。「かたびらのつじえき」と読む。私は「洛北日和」で紹介しているので、地名も知っているし、漢字もわかる。由来も知っている。私が空気に、「帷子ノ辻」と書いているのを浅越ゴエは目ざとく見つける。といっても私は当日券で入ったのに、二列目である。舞台上から見えて当然である。
「どこに住んでいるの?」と聞かれた時に、「帷子ノ辻」と答えると、「どんな漢字?」などと聞かれるのが嫌なので、隣りの駅にしようとしたが、隣の駅は太秦駅である。国宝・弥勒菩薩のある太秦寺や東映太秦映画村があるので、太秦(うずまさ)というのは難読地名ではあるが全国区ではある。でもそれでも嫌なので隣の駅にしようとしたが、次は蚕ノ社駅である。蚕ノ社(かいこのやしろ)という神社が実際にあるのである。これも「洛北日和」で紹介済みだが、上から見ると三角形に見えるよう組まれた鳥居がある。
蚕ノ社も嫌だというので、結局、始発である四条大宮に住んでいるということにしたという。帷子ノ辻から四条大宮までは結構な距離がある。
続いて、「しっくりこないニュース」。北海道の旭山動物園が温水洋一の飼育を始めたり、「アンパンマン」のバタ子さんが、ジャムおじさんを告訴したり、一休さんが工事中の橋の何故か真ん中を通って(勿論、あの頓知である)怪我をしたり、銀河鉄道999の走る路線をJR東宇宙が廃線にしたというニュースである。廃線の理由は星野鉄郎とメーテルしか利用者がいないからだいう。車掌はリアルに気味が悪いというので再就職先が見つかっていないとのことだった。

ファミリーレストラン。現在、滋賀県に移住して活動しているコンビである。滋賀県出身者がいるかどうかを聞くが、二人いて、一人しかファミリーレストランを知らなかった。CMに出るのが売れる近道だというので、下林朋央が、ロッテの「Fit's」のCMで佐々木希の真似をするがかなり微妙な出来である。原田良也はといえば、有名なCM曲の前の部分を創作してしまったり、後ろに付け足してしまったりする。
次いで、K1グランプリに下林が出場し、原田がそれを実況中継するという。月曜日にやったネタと趣旨は同じである。原田は下林を、「滋賀からやって来た最強のプランクトン、赤潮が」などと紹介するが、プランクトンは弱いやろ、ということで、二人で、客席の滋賀県出身者に「滋賀で強いといった何?」と聞くが、誰も答えようとしない。仕方がないので私が「ブラックバス!」と声を掛ける。下林が「滋賀県の人でないのに教えてくれたわ。そうや、ブラックバスや」と反応する。実は原田が京都の嵐山出身だというので、最初の「京都の人」と挙手を求めていたのである。最初は「京都生まれの京都育ち」限定だったのだが、「京都に住んでる人」まで広げたので、私は遅れて手を挙げていた。多分目立ったはずである。そして芸人さんというのは頭がいい。客席の埋まりが悪いということもあり、大体の人の顔は覚えているはずである。
「ブラックバス、外来魚やな」、「プランクトンよりは強そうだ」、「でも嫌われ者やで嫌われ者は嫌やな」という話になるが、実は琵琶湖のブラックバスは問題になっているのである。ブラックバスは外来魚であるが、強く、在来種を食い尽くすため、生態系に影響があるとして現在では輸入や飼育などは禁止されている。そして今、湖にいるブラックバスも駆除の方向で動いているのである。だから大津の釣り場では、ブラックバスに限ってはキャッチアンドリリースではなく、ブラックバスを釣ったら、専用のゴミ箱のようなものに入れることになっている。何故、私がそういうことを知っているのかというと、びわ湖ホールに向かうのに、普通の人は京阪石山線を使うが、私は「琵琶湖沿いを歩きたい」というので、京阪浜大津駅から、びわ湖ホールまで毎回歩くのである。その間に、ブラックバス用のゴミ箱のようなものがあるのだ。
ファミリーレストラン・原田は今度は無茶振り。「セクシーに攻撃をよける」などと下林に注文し、下林も不自然な除け方をするが、実は挑戦者はまだ登場していなかったというオチであった。

トリは、ダイアン。ダイアン・津田篤宏がコンビニでおにぎりを買ったところ、賞味期限が切れていたという話からコンビニネタがスタート。津田が「おにぎりの賞味期限が切れていた」と文句を言いにやってくるが、コンビニの店長のダイアン・西澤裕介(余談であるが、ダイアンは二人とも滋賀県出身である)は、「大丈夫、食える食える。貧しい国の子供達のことを考えてみ、贅沢やで」などと交わしてしまう。更には津田が持ってきた「ゴマ味噌だれ」のおにぎりはうちの店のものではないと言う。津田が、今度は自分が店員になるというが、西澤もコンビニ店員役を続けてしまう。岐阜から大阪のコンビニに憧れて通っているという妙な店員役である。津田が、「二人で店員やってどうするねん、お前は客や」と言って、西澤は客を演じるが、店員役の津田の目の前で、堂々と大量の万引きを行ったり、勝手に中華まんの味見をしたりする変な客になってしまうのであった。

最後は、浅越ゴエが司会を務めるコーナー。「芸人がアルバイトを辞めていい時期は?」がお題である。ちなみに、出演者のうちで、アルバイトもしている人は少なく、タナからイケダの二人だけだった。しかし、アルバイトをしていないから裕福ではなく、仕事が増えると、アルバイトが出来ないというのが実情なのである。打ち合わせや稽古時間などに時間を取られるので、アルバイトをしている暇がないのである。演劇人も実は同じである。
GAG少年楽団の福井俊太郎が実は、という話になるが、リアル過ぎるということで、タナからイケダの田邊孟徳が一番、ということになった。

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2013年10月 2日 (水)

観劇感想精選(101) 「ROCK OF AGES ロック・オブ・エイジス」

2011年11月11日 大阪市の森ノ宮ピロティホールにて観劇

午後7時から、大阪の森ノ宮ピロティホールでミュージカル「ROCK OF AGES ロック・オブ・エイジス」を観る。作:CHRIS D'ARIENZO、上演台本・演出:鈴木勝秀、テキスト日本語訳:北丸雄二、日本語訳詞:井上秋緒、振付:NAO&LICO。出演:西川貴教(T.M.Revolution)、島谷ひとみ、山崎裕太、高橋由美子、misono、藤田玲、石橋祐、明星真由美、なだぎ武、鈴木綜馬、川平慈英。ヴォーカルチーム(歌声のみの出演。ダンスはあるが演技シーンなし):KEN、大嶋吾郎、marron、鈴木佐江子、久保田陽子。バンド:Leda(エレキギター)、中村康彦(エレキギター)、渡辺大(ベース)、LEVIN(ドラムス)、前嶋康明(ピアノ)。

舞台は1987年、ロサンゼルスはサンセット大通り(映画のタイトルとしても有名である)にあるライブハウス・バーボンルームである。バーボンルームのオーナーはデニス(なだぎ武)。狂言回しのロニー(川平慈英。途中で、自分が「ナレーター、狂言回し」だと明かすシーンあり)の説明や、ロニーとデニスのやり取りでストーリーは進む。ロニーはロサンゼルスには毎年1000人が芸能界での成功を求めてやってくるが、成功できるのはせいぜい20~30人であると告げる。ジャック・ケルアックの小説『路上(オン・ザ・ロード』でも同じような例えがあったはずだ(ロサンゼルスでは警官やウェイトレスなどに美男美女が多い。みなハリウッドスターを夢見て敗れた者だと)、またイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」は実はこうした人々を歌った歌である。舞台上手には「ルート66」の看板。ルート66はメイン・ストリート・オブ・アメリカやマザー・ロードともいわれた、シカゴからカリフォルニア州に向かい、ロスを経て、サンタモニカで終わるという大陸横断道路で、様々な作品の舞台となった国道である(現在は廃線)。数々の栄光と挫折を見守ってきた道だ。スタインベックの『怒りの葡萄』やケルアックの『路上(オン・ザ・ロード)』などにも登場する。

ミュージカル「ロック・オブ・エイジス」

バーボンルームでバーテン見習いとして働いているドリュー(西川貴教)は、本当のファーストネームはウォルフガング(ヴォルフガング)。高名な作曲家のヨハン・ヴォルフガング・テオフォル・モーツァルト(芸名:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト)と同じであり、つまりドイツ系である。シカゴでならともかく、ロサンゼルスで成功するのは難しい。バーボンルームのメインバンドはアーセナル。ヴォーカルはステイシー(山崎裕太)である。

ボーイミーツガールが作品の王道という意味のセリフをロニーが言い、ガールであるシェリー(島谷ひとみ)が紹介される。シェリーはアメリカの中西部の生まれ。だが、女優を夢見て、ルート66を使ってロスに出てきた(史実では1985年にルート66は廃線となっている。フィクションである)。街で偶然、ぶつかったドリューとシェリー。二人はたちまち恋に落ちる。だが、おそらくドリューは自分がドイツ系であるということに後ろめたさがあったのであろう、WASPであろうシェリーに自分達は「友達」だと断言してしまう。シェリーはそれほど頭の良い女の子ではないという設定なので、その言葉をそのまま受け取ってしまう。シェリーはバーボンルームのウェイトレスとして働くことになる。

一方、バーボンルームのある一角を再開発しようと企んでいる人物がいる。ヘルツ・クライマン(鈴木綜馬)である。息子のフランツ(藤田玲)とともに計画をロス市長(石橋祐)に伝える。反対するロス市都市計画管理官のワギーナ(misono。ワギーナはWAGINAというスペルである)。クライマン親子は名前からしてそうだが、フランツが「ダンケシェーン」とドイツ語で礼を言うシーンがあり、ドイツ系である。のちにフランクはハンブルグの生まれであるということがわかる。ドイツ語では…、というわけで、結構、危ないネーミングの人がいるのである(実際にワギーナがフランツに注意する場面がある)。

ドリューがアーセナルの前座公演を行うチャンスを掴む。声はかかるが、WASP風の名前に変えて、アイドル路線のSTREET BOYZのヴォーカルとしてデビューするという、ドリューの願いとは違うものであった。一方のシェリーはステイシーと関係を持ち、ドリューと別れることになる。しかしシェリーとステイシーは長くは続かない。シェリーはやむなく、ジャスティス(高橋由美子)の経営するストリップクラブ「ヴィーナス」で働くことになる。ジャスティスとは「正義」という意味で、こういう名前の女性がストリップクラブを経営しているというのも変である。

ドリューとシェリーの再会。ドリューは不本意ながら色物系バンドのヴォーカルになることを告げる。シェリーは自分がストリッパーになったことを教える。この部分ではセリフと意思が一致しないという高度な作劇法が用いられている。ドリューはヴォーカルとしてデビューという約束を反故にした。

ステイシーは天狗になってアーセナルを脱退し、ソロになるが、その途端にアーセナルが売れてしまう。やけになったステイシーは「ヴィーナス」に行って女を指名するが、女はシェリーであった。ステイシーはシェリーにサービスすることを求め、シェリーもそれに応じるが、そこをドリューは目撃してしまう…

笑いでごまかしているが、深刻な状況が続き、普通なら悲劇確定路線のストーリー展開である。だが、ストーリーは予想外の方向へと向かう。ロニーがドリューに台本を否定することを薦め、ドリューもそれに従うのである。
実は台本を否定するという作品は私も書いている。「生まれ変わるとしたら」がそうであるが、残念ながらそれが伝わった人はほとんどいなかった。ほとんどの人が三球三振、それも見逃しで一球も掠ることさえ出来なかった。そして今も三振したことに気付いていない人がいる。ヒントになったのはベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の第4楽章冒頭である。

それはともかくとして、「ロック・オブ・エイジス」は物語の定番を見事に破るのである。

実力は歌手を揃えただけに歌唱は見事である。森ノ宮ピロティホールは音響は良くないので、それが残念であるが、西川貴教のいつ果てるともなく延びる声などは、やはり威力十分である。役者達はアドリブなども達者で、みなプロの演技と歌唱を披露する。

終演後は総立ち。まあ、当然であろう。西川貴教は滋賀県出身で、他にも、なだぎ武は大阪、misonoは京都で、明星真由美も大阪出身である。ということもあって、客席はロックコンサート終了後並の盛り上がりを見せ、出演者達は何度もカーテンコールに応えた。

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2013年10月 1日 (火)

お米でつくったカール「カレーライス味」

カール「カレーライス味」

meiji(株式会社 明治)から出ている国民的スナック菓子「カール」。私が子供の頃は、カレー味とチーズ味が二本柱でしたが、チーズ味は残ったものの、カレー味は、うす味に取って代わられ、たまに期間限定で再発売されるにとどまってきました。

そして今年、カレー味が久しぶりに復活しました。「お米でつくったカール」シリーズに入っているものなので、単なる「カレー味」ではなく、お米を強調して「カレーライス味」になりましたが、味は「カレー味」とほとんど変わりません。

油分23%カットというヘルシーさを打ち出した「お米でつくったカール」。レギュラーとして定着するのか期間限定発売なのかはわかりませんが、カレー味を今、食べられるというのは幸せなことです。

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