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2014年2月 6日 (木)

コンサートの記(123) 金聖響指揮 京都フィルハーモニー室内合奏団第191回定期演奏会「ニューイヤーコンサート2014」

2014年1月17日 京都コンサートホールにて

午後7時から、京都コンサートホールで京都フィルハーモニー室内合奏団の第191回定期演奏会「ニューイヤーコンサート2014」を聴く。

京都フィルハーモニー室内合奏団は、これまで、指揮者を置かないで活動して来た期間の方が長かったが、演奏回数も減り、主なしでは予算的にも厳しいということで、齋藤一郎を4月から初代音楽監督として迎えることにしている。齋藤一郎は、NHK交響楽団の副指揮者時代には注目を浴びた人だが、その後は伸び悩んでいるだけに、齋藤に取っても良い機会となるだろう。ただ、今シーズンも京都フィルハーモニー室内合奏団の定期演奏会は数えるほど。その中で、「どうしても聴いてみたい」というプログラムの演奏会は残念ながらゼロである。

今日の指揮者は金聖響(きむ・せいきょう)。1970年、大阪生まれの在日韓国人三世の指揮者である。世界中どこに行っても苗字は韓国語読み、名前は日本語読みで通す。在日韓国人三世ではあるが、子供の頃からインターナショナルスクールに通っており、14歳の時に一家で渡米。以後の教育はアメリカとヨーロッパで受けているということもあり、中身は西洋人かも知れない。聖響という名前であるが、学者の家系の生まれており、聖響という名前になったのもたまたまで、両親共に聖響が音楽の道に進むのには反対したそうだが、聖響は名門・ボストン大学哲学科に入学。優秀な成績で卒業して両親を黙らせ、ニューイングランド音楽院大学院を修了。その後、ウィーン国立音楽大学でも学んでいる。
東京音楽大学で広上淳一が開講していた指揮者コースにも下野竜也らと共に通っていたが、広上は下野については「下野君は当時から断トツに優秀でした」と語り、一番弟子扱いしている一方で、金聖響について言及したことはなく、余り気に入られなかったのかも知れない。
「のだめカンタービレ」の千秋真一の外見上のモデルになるほど若い頃はハンサムで、女優キラーとして知られ、酒井美紀と噂になったり、映画で共演したミムラとは結婚にまで漕ぎ着けるが、指揮者と女優とでは互いに多忙すぎてほとんど顔を合わせることすらなく、結婚した意味がないということで、数年後に離婚。慰謝料など一切なしの円満離婚であった。

今日のプログラムはオール・アメリカもの。アメリカで音楽教育を受けた金聖響には最適のプログラムである。

曲目は、コープランドの「アメリカの古い歌」第1集(バリトン:晴雅彦)、グローフェの組曲「グランド・キャニオン(大渓谷)」(ホワイトマン楽団初演版)、コープランドのバレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」より“ワルツ”“大平原の夜”“祝いの踊り”、レナード・バーンスタインの「ウエストサイド物語」からシンフォニック・ダンス(Farrington編曲)。

なお、午後6時30分からホワイエで、京フィルメンバーによる「お出迎えコンサート」があり、アメリカのヨハン・シュトラウスことルロイ・アンダーソンの「フィドル・ファドル」、「プリンク・プランク・プルンク」、「シンコペテッド・クロック」が小編成で演奏された。

今日は室内合奏団で演奏するにはスケールが大きい曲がある上に特殊な編成を取る必要があるため、普段以上に多くの客演奏者を招いている。コンサートマスターも客員コンサートマスターの釈伸司が務める。

コープランドの「アメリカの古い歌」第1集は、アメリカ民謡などから歌詞を取ってコープランドが作曲したもので、讃美歌のような美しい歌からコミックソングまで曲想が幅広い。
バリトン独唱の晴雅彦は、最終曲であるコミカルソング「私は猫を買ってきた」で大袈裟に歌って聴衆の笑いを誘う。

最初の曲であるコープランドの作品が終わったところで、楽団員全員が退場し、金聖響一人がマイク片手に出てきて、トークを行う。「オール・アメリカ・プログラムです」と金は語り、「前回、京フィルを指揮した時も実はオール・アメリカ・プログラムでした」と続ける。それから、グローフェの紹介(ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」のオーケストレーションをした人など)をし、今回はジャズバンドで初演された時の編成での演奏で、もう初演版の楽譜は出版されていないので、コロンバス交響楽団(広上淳一がオーケストラ首脳部と対立して解任されたところである。その後、コロンバス交響楽団はどうなっているのだろう)に保存されていた楽譜をお借りしての演奏だそうである。
レナード・バーンスタインの「ウエストサイド物語」よりシンフォニック・ダンスは、イギリスの作曲家兼編曲家のファリントンという人物の室内オーケストラのための編曲版による演奏であるが、版権の問題があるため、演奏は一度きりしか許されていないそうで、演奏終了後には楽譜を破棄する必要があるかも知れないとのことだった。

グローフェの組曲「グランド・キャニオン」。今はどうか知らないが、中学校もしくは高校の音楽の授業における名曲鑑賞などでよく使われた曲である。グローフェがいたジャズバンド、ホワイトマン楽団のために書かれた初版での演奏であるため編成はいびつ。弦楽器は第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンともに4人、ヴィオラ3人、チェロ2人、コントラバス1人と薄手である一方で、トランペットは4管編成。サキソフォンも4管編成という、クラシックではまず考えられない大所帯である(サックスは全員客演奏者)。バンジョーもいるが、楽器自体が音量豊かなものではないということもあり、余りはっきりとは聞こえない。

第1曲「日の出」でミュートトランペットが入るなど、フルオーケストラ版とは異なるところがいくつもある。第2曲「赤い砂漠」はラスト自体が違う。

なお、何故かはわからないが、1曲終わる毎に客席から拍手が起こる。休憩時間にホワイエなどをのぞいたところ、京フィルの定期会員入会などに大勢の人が並んでおり、クラシックのマナーに疎い招待客が多いというわけでもなさそうだ。以前、京フィルを聴いた時にはこんなことはなかったのだが、どうしたのだろう。京フィルの演奏会ではこれが流儀になったのだろうか?

金聖響の作る音楽は見通しの良い、すっきりとしたものであり、描写力に長けたこの曲の魅力を存分に味わわせてくれる。「グランド・キャニオン」は通俗的ではあるが、エンターテインメントとしては優れた作品だ。

後半。コープランドでのバレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」よりの3曲ではしなやかな演奏を展開し、本邦初演となるファリントン編曲による「ウエストサイド物語」よりシンフォニック・ダンスでは、リズミカルで抒情的な演奏が繰り広げられる。レナード・バーンスタインの「ウエストサイト物語」よりシンフォニックダンスであるが、全曲有名ナンバーから編まれているものの、実は更に有名な、「トゥナイト」、「マリア」、「アイ・フィール・プリティー」、「アメリカ」などは入っていない。ミュージカルは名ナンバーが1曲入っていれば名作となるので、「ウエストサイド物語」がいかに怪物級の作品であるかがわかる。ファリントンの編曲は弦の人数が少ないということを考慮して、本来は金管が受け持つ旋律を木管に吹かせるなどの工夫が見られた。

アンコールは、ヨハン・シュトラウス二世のポルカ「雷鳴と電光」。三重県文化会館で、広上淳一指揮新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏でも聴いたばかりだが、金の振る「雷鳴と電光」は、広上指揮のものに比べるとリズム感が今一つ。金は広上より丁度一回り若いので、広上と比べるのは酷かも知れない(ちなみに広上さんは、「のだめカンタービレ」の片平元のモデルといわれている)。

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