« コンサートの記(138) 飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団第190回定期演奏会「飯森範親首席指揮者就任記念演奏会」 | トップページ | 観劇感想精選(123) 虚構の劇団「グローブ・ジャングル」2014大阪 »

2014年5月16日 (金)

観劇感想精選(122) 「もって泣いてよフラッパー」2014大阪

2014年3月14日 大阪・京橋のシアターBRAVA!にて観劇

午後7時からシアターBRAVA!で、「もっと泣いてよフラッパー」を観る。「上海バイスキング」と並ぶオンシアター自由劇場の代表作である。1977年に初演されて大好評を得て、1990年から1992年までは毎年シアターコクーンで上演が行われていたのだが、それ以降は上演がなく、「もう上演されることはないのでは」と噂された傑作の22年ぶりの再演である。
「上海バイスキング」は2010年に久しぶりの上演が行われ、この上演はオンシアター自由劇場で初演された時以来の俳優が多く出演していたが(吉田日出子、小日向文世、笹野高史ら)「もっと泣いてよフラッパー」を上演するには流石にオリジナルキャストでは無理がある。ということで、オンシアター自由劇場出身の人は串田和美を含めて7人だけである。
作・演出・美術・出演:串田和美。出演:松たか子、松尾スズキ、秋山菜津子、りょう、大東駿介、鈴木蘭々、片岡亀蔵、太田緑ロランス、大森博史、真那胡敬二、小西康久、酒向芳、内田紳一郎、片岡正二郎、石丸幹二ほか。
音楽は松たか子の旦那さんである佐橋佳幸と、京大卒のマルチミュージシャンという異色の存在であるDr.kyOnのユニットであるダージリンが音楽監督・作曲・編曲を手掛ける。オリジナルの作曲は越部信義、八幡茂、乾祐樹。
オーケストラ・ラ・リベルテ(演奏):佐橋佳幸、Dr.kyOn、黒川修、木村おうじ純士、黄啓傑、花島英三郎(以上演奏家)。串田和美、石丸幹二、大東俊介、大森博史、真那胡敬二、小西康久、酒向芳、内田紳一郎、片岡正二郎、近藤隼、佐藤卓、内藤栄一(以上、出演&演奏)。佐橋佳幸と黒川修はセリフのない役でちょっとだけ出演している。

串田和美が物語性のある芝居以外の演劇を追求して出来上がった劇である。童話のような複数のストーリーが展開されるが、物語が膨らむ前に次から次へと別の要素が入っては過ぎていく。それは別の話だったり、ダンスだったり、歌だったり音楽だったりする。

舞台は1920年代の架空の街・シカゴ。実在のシカゴと似てはいるが架空の都市という設定である。街中にあるラ・リベルテというクラブではフラッパー達がダンスショーを繰り広げている(フラッパーとは日本でいうとモガことモダンガールに近い存在で、1920年代に現れた新しい格好やライフスタイルを持つ女性達のことである)。一方、実在のシカゴ同様に禁酒法の下にある架空のシカゴでは、やはり実際のシカゴ同様にギャング達が酒の密輸で私腹を肥やし抗争を繰り広げている。ラ・リベルテのオーナーも銀色パパと呼ばれるマフィア(串田和美。なお、「もっと泣いてよフラッパー」では、基本的に一人の俳優が何役も演じ分ける)である。彼らと敵対しているのはアスピリンという名の男(松尾スズキ)を首領とする黒手団だ。

トランク・ジル(松たか子)は、ラ・リベルテのダンサーになることを夢見てシカゴにやって来た。だが、シカゴは治安が悪い。ということで、背広を着てちび鬚を付けるなど男装している。見るからに悪そうな黒手組の一味と鉢合わせしそうになったジルは物陰に隠れるが見つかってしまう。「見ねえ顔だな。何て名前だ?」と聞かれたジルは「しゃっくりジャスミン」という偽名を名乗る。すると黒手組の組員達は「あの、しゃっくりジャスミンか」と怖れをなして逃げてしまう。しゃっくりジャスミンを名うての殺し屋だと黒手組の連中は勘違いしたようだが、しゃっくりジャスミンという名前はジルがその場で思いついた名前であり、なぜ殺し屋だと思われたのかジルは不思議がる。
ジルは宿を求めるが、そこはネズミがクラス家だった。だが、何故かネズミの家の亭主(松尾スズキ)もその妻(秋山菜津子)も自分達のベッドを開けてくれる。
ネズミの間でも争いがあり、ジルは眠りから覚め、宮沢賢治の『よだかの星』に似たモモンガを主役にした話をする。皆、いい話なのかどうか怪訝に思うが、取り敢えずその場は丸く収まる。そしてジルは何故かネズミ達から同じネズミだと思われており(不審に思われてはいる)、しゃっくりジャスミンだとまたも偽名を名乗ると、「猫を怖れぬ、しゃっくりジャスミンか」と、またもネズミ界の英雄と勘違いされてしまう。そこで、猫に鈴を付ける大役を引き受けたのだが、実際に出てきた猫は大きくて目つきが悪く、ジルは慌てて逃げる。

中国系移民のチャン(真那胡敬二)が営む理髪店。チャンは「ハサミやカミソリなど人を傷つけたり人の血を流したりするを使って仕事をするのが我々。ところが刃物も使わずに傷つけたり血を流す奴らがいる」と嘆いてる。
そこに、シカゴタイムズの記者、ベンジャミン(石丸幹二)が髭を剃って貰いにやって来る。ベンジャミンはフラポーという女性(鈴木蘭々)に惚れている。だが、ベンジャミンがフラポーの良さについて語っている時に黒手組の組員達がやって来る。怖れをなして逃げるベンジャミン。鬚を剃って貰っていた黒手組のメンバーだが、昼だというのに月が出た。不思議に思っているとフラポーが現れる。黒手組の首領アスピリンはフラポーに一目惚れしてしまう。

クリンチ・チャーリー(大東俊介)はボクサーだが、長いこと勝てていない。チャーリーの座っていたバケツの下からジルが現れる。これまで男装に成功してきたジルであったが、チャーリーには男装した女だと一目で見抜かれる。

何とかラ・リベルテのダンサーになれたジル。ラ・リベルテのトップダンサーは3人、お天気サラ(秋山菜津子)、青い煙のキリー(りょう)、月影ギナン(太田緑ロランス)であるが、キリーは男に騙されてばかりいる。サラは、「男は女に騙されたがっている。なのに騙されてどうするの」と語る。

サラにコミ国という国の皇太子(片岡亀蔵)が恋をした。だが、サラは「身分違い」だと皇太子を相手にしない。

一方、キリーはまた恋をした。相手は黒手組の構成員である青い血オニオン(大森博史)だ。オニオンの歌声に惹かれたのだ(黒手組のメンバーによるドゥワップ歌唱があった)。

ジルはシカゴから何十キロも離れたところにあるモーテルで、チャーリーと一夜を共にする。そこでチャーリーはボクシングで勝てないのではなく、わざと負けることで金を受け取る、つまり八百長をしていたことを告白する。だがチャーリーは今度の試合では第7ラウンドでクランチした時に「今日は八百長はなしだ」と告げ、KOしてみせると宣言する。「第7ラウンドが始まったら会場を出て車に乗って待っておけ。俺もすぐ向かう。南部に行って一緒に写真屋をやろう」とチャーリーはプロポーズするのだった。

この劇は、場面転換が多く、スライド映像のように完結しないままの物語が回っていく。そのため、あらすじを書いても余り意味はないのだが、最低限抑えておかなければならないところは書いておいた。

“もっと泣いてよ”とタイトルにあるとおり、この芝居は基本的には悲劇である。この物語に出てくる恋愛はいずれも悲惨な結末を迎える。哀感に満ちた話なのであるが、それでも不思議と暗い気持ちにはならず、開放感や爽快感を覚える。文学的楚辞を用いるなら「浮遊感溢れる悲哀」で一杯なのだ。悲劇的結末がラストで次々明かされるので悲劇的展開が不十分(もちろん敢えて開いた形にしなかったのだ)であり、悲劇に見舞われた女性達が皆たくましく、また何よりも音楽が悲しみを抑えてくれる。カタルシスとはまた違った、悲劇であるが故の癒しがこの劇にはある。

カーテンコールは鳴り止まず、アンコール演奏、そして楽隊と松たか子が客席通路を歩きながらラストナンバーである「もっと泣いてよフラッパー」を歌った。

|

« コンサートの記(138) 飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団第190回定期演奏会「飯森範親首席指揮者就任記念演奏会」 | トップページ | 観劇感想精選(123) 虚構の劇団「グローブ・ジャングル」2014大阪 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40048/59649784

この記事へのトラックバック一覧です: 観劇感想精選(122) 「もって泣いてよフラッパー」2014大阪:

« コンサートの記(138) 飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団第190回定期演奏会「飯森範親首席指揮者就任記念演奏会」 | トップページ | 観劇感想精選(123) 虚構の劇団「グローブ・ジャングル」2014大阪 »