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2014年5月17日 (土)

観劇感想精選(123) 虚構の劇団「グローブ・ジャングル」2014大阪

2014年4月18日 大阪・天王寺の一心寺シアター倶楽にて観劇

午後7時から、大阪・天王寺の一心寺シアター倶楽(くら)で、虚構の劇団の「グローブ・ジャングル」を観る。

虚構の劇団は、鴻上尚史が第三舞台解散後に新たに立ち上げた劇団で、運営は引き続きサードステージが行っている。
「グローブ・ジャングル」は虚構の劇団旗揚げ公演で上演された作品であり、今回は久しぶりの再演となる。作・演出:鴻上尚史。出演:オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)、根本宗子(ねもと・しゅうこ。劇団月刊「根本宗子」主宰)、小沢道成、小野川晶(おのがわ・あき)、杉浦一輝、三上陽永、渡辺芳博、塚本翔大、森田ひかり、木村美月。最年長の渡辺芳博でも1981年生まれ。1990年代生まれも二人いるなど大変若い劇団である。

「グローブ・ジャングル」は第61回読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞しており、その理由もよくわかるのだが、ステージで観るよりも戯曲で読んだ方が楽しめるような作品ともいえる。

鴻上尚史は自分の作品が上演されている劇場には大抵姿を見せていて、今日も開場時には、自身のツイッターを更新するなどパソコンで作業をしており、その後、売り子となって公演パンフレットと戯曲本を売りながら客席を回った。

舞台装置はかなりシンプル。後方のスクリーンに様々な映像や文字が映る。
インターネットが重要な舞台になっており、登場人物達は舞台に出てきた際に、インターネット上の書き込みのようなセリフを発する。繋がりがあるものもあればないものもある。やがて、青山七海(小野川晶)がバイト先であるコンビニで、店長の娘の小学生(根本宗子)にせがまれて、店長の娘が冷蔵庫に入った写真を撮り、更にせがまれて自身も冷蔵庫に入った写真を店長の娘に撮らせてしまう。店長の娘がその2つの写真をツイッター上にアップしてしまったことから騒動は始まる。投稿を見つけた劇団主宰で塾講師の沢村(オレノグラフィティ)はその写真を2ちゃんねる上にアップ。たちまち犯人捜しが始まり、店長の娘も、そして七海もFacebookで身元が割れ、通っている大学、住所、電話番号なども次々に公開されていく。

一方、ことを大きくした沢村も劇団員達の離反に遭い、次回公演を降りることになった。劇団員で恋仲でもある麻実(森田ひかり)に演劇を続けるよう言われた沢村だが、辞めてロンドンへと旅立つ。そして、七海は自宅近くや大学の周りにおかしな人々が集まりだし(店長の娘が「無理矢理やらされた」と書いたことから幼児虐待という罪までなすりつけられていた)、大学は中退に追い込まれる。就職しようにも、今は応募者の名前をネット検索する時代であり、検索されればバカ発見器の餌食になっていることが上位にランキングされてしまうため、雇ってくれるところもない。そこで七海は写真を2ちゃんねるにアップした人物をネットを使って自力で調べた。その人物は酒好きの塾講師で、左手にバイク事故の際に出来た傷があり、ロンドンへ旅立ったことを知る。
七海もその人物(沢村)を追ってロンドンへ向かう。酒好きだということでロンドンのパブを回るが、そこで住田という男(小沢道成)と出会う。実は住田は自殺した幽霊であり、住田のことが見えるのは自殺願望を持った人だけなのだという。七海は探している人物を見つけ出して殺害し、自分も死ぬつもりであった……

21世紀になってから書かれた作品であるが、アングラ第三世代に属する鴻上の筆だけに、どことなく80年代の匂いが残る。

グローブ・ジャングルとは、昔は公園などによくあった遊具で、球形のジャングルジムである。私の実家の近所にある公園にもグローブ・ジャングルはあった。子供の頃は、勢いよく回して体を宙に浮かせながら遊んだものだが、今は保護者から「危険」という苦情があり、次々と撤去されてほとんど存在しないという。この劇では「喪失」の象徴として登場する。

居場所を喪失し、アイデンティティー喪失の危機に陥った若者達の物語であり、私ももう少し若ければ共感し得たと思うのだが、残念ながら私も今年で40歳である。「ここではないどこか」を探し、「愛と人間を諦めること」を否定したい若者達を応援したいと思うが、もう不惑になると純粋に大人向けの作品が観たくなる。日本の小演劇は観客に若者が多いということもあり、若者をターゲットにした作品が多い。鴻上も当然、若者が多く観ることを想定して作品を作っている。欧米の作家が書いたものを基にした演技は大人向けに書かれたものも多く、私が原作が外国人作家の舞台を好んでみるのもそのためである。

ともあれ、いい舞台である。若者にはお薦めだ。

俳優陣はいずれもパワフルな演技を披露。特に3役を演じ分けた根本宗子の演技は良かった。

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