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2014年5月13日 (火)

コンサートの記(137) デイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団来日演奏会2014大阪

2014年4月13日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後2時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、デイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の来日演奏会を聴く。第52回大阪国際フェスティバル2014の一つとして行われる公演であり、有料パンフレットは発売されておらず、全12ページの無料パンフレットが全員に配布されただけだったが、紙の質は良く、無料にしてはまずまずの出来である。

曲目は、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:ギドン・クレーメル)とブラームスの交響曲第1番。

これまで関西ではデイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の来日演奏会は、必ず&ヨーヨー・マという形で行われており、世界最高のチェリストの一人であるヨーヨー・マが付いてくることでチケット料金が高騰し、とてもじゃないが手が出ないという状態が続いていたが、今回はあくまでもデイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の来日演奏会として行われ、ヴァイオリンのソリストは、やはり世界最高峰のギドン・クレーメルであるが、クレーメルの分まで料金がプラスされたりはしなかった。

デイヴィッド・ジンマンは、1936年、ニューヨーク生まれの指揮者で、フランス人指揮者であるピエール・モントゥーに見出され、モントゥーが首席指揮者を務めていたロンドン交響楽団に客演して注目を浴び、70年代のオランダ室内管弦楽団の首席指揮者時代にはフィリップス(現在はDECCAレーベルに統合されて消滅)にレコーディングを行っている。80年代から90年代前半に掛けてはボルチモア交響楽団の音楽監督として同楽団のレベルアップに貢献。TELARCレーベル(こちらも現在はクラシックからは撤退)に多くの録音を行う。ただ、ここまでのジンマンの指揮者としての評価は「良くて二流」というものだった。
それが一変したのは1995年にチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者に就任し、90年代後半に「ベートーヴェン交響曲全集」をアルテ・ノヴァにレコーディングしてからである。ピリオド・アプローチと、即興演奏満載のこの全集は世界的な評価を獲得し、ジンマンの評価は「良くて二流」から一躍「超一流」にまで高まった。

その後も、ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団は、「リヒャルト・シュトラウス交響詩全集」、「マーラー交響曲全集」などを作成し、世界各国で好評を博している。

ヴァイオリン独奏のギドン・クレーメルはソ連時代のラトヴィア生まれ。ソ連時代にはかなり苦労したようである。J・S・バッハから現代音楽に至るまで幅広いレパートリーを誇り、90年代後半にはヨーヨー・マなどと共に世界的なピアソラ・ブームを生み出している。
非常に個性的なヴァイオリニストであり、自著では世界的な指揮者であっても方向性が違えば無能扱いしている。
クレーメルはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を2度レコーディングしているが、最初はロシアの現代音楽作曲家であるシュニトケ作曲によるカデンツァを使用して話題になった。2度目のレコーディングでは、ベートーヴェン自身がヴァイオリン協奏曲をピアノ協奏曲に編曲した際に書いたピアノ用のカデンツァをヴァイオリン向けに編曲したものを採用して、この時も反響は大きかった。

無料パンフレットには「本日どのようなカデンツァが演奏されるのかは不明である。」と書かれている。

開場は午後1時であったが、ロビー開場であり、客席開場は午後1時30分であった。クレーメルは神経質なヴァイオリニストなので、事前まで入念なリハーサルを行っていたのであろう。

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。オーケストラは後半のブラームス演奏の時よりも少し小さめの編成(弦楽奏者達の最後列が空席になっていたのでわかった)。アメリカ式の現代配置であるが、ティンパニは指揮者の正面ではなく、やや下手よりに置かれている。なお、ティンパニはベートーヴェンとブラームスとでは異なり、ベートーヴェンでは手前にある小さめのものが、ブラームスでは奥にある大きめのものが使用された。

ジンマンとクレーメル登場。ジンマンはシャルル・デュトワやエリアフ・インバルと同い年であるが、デュトワやインバルに比べると幾分老けた感じである。同い年ではあっても年の取り方はそれぞれ異なるのであろう。

ピリオド・アプローチで鳴らしたコンビだけに伴奏は万全。交響曲演奏の時とは違い、即興的な要素は用いていない。

独特なのは、ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団よりもソリストのクレーメルで、なんと最初の伴奏と再現部の伴奏のそれぞれ一部をオーケストラと一緒に演奏する。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は人気曲だけに何度もステージの演奏に接しているが、伴奏の一部をオーケストラと一緒に奏でたソリストはクレーメルが初めてである。

クレーメルもピリオド奏法を用いているため、線は通常の演奏時よりも細めであったが、音は美しく、特に弱音は息を呑むほどの絶美である。歌い回しも独特だが思いつきでやっているわけではないことは伝わってくる。

カデンツァであるが、これまで聴いたことのないものが用いられていた。基本的には第1楽章冒頭のヴァリエーションであったが、なんとオーケストラ伴奏が加わり、誰の手によるものなのか見当が付かないカデンツァである。

外連もあったが、全体としては現代最先端のベートーヴェン演奏として高く評価出来るものであった。

クレーメルはアンコールとして現代曲を演奏。1949年生まれのペレシスという作曲家の「ヴィオラのための24のカプリース」より第5番。ヴィオラのための作品をヴァイオリンで弾いてしまったことになる(ヴァイオリンとヴィオラは指使いは同じなのでヴィオラ向けの曲をヴァイオリンで弾くこと自体は比較的簡単である)。繊細な演奏であった。

後半。ブラームスの交響曲第1番。
非常にスマートな演奏である。第1楽章の序章は凶暴さを感じさせる演奏も多いのだが、ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団はバランス重視。威風堂々であるが重苦しくはない。
第2楽章のリリシズム、コンサートマスターのソロとホルンを始めとする管楽器の対話が分かりやすく伝わってくる。
第3楽章も風通しが良く、最終楽章もギアチェンジがはっきりしすぎなのが気にはなったが、造形のきちんとした演奏が展開される。
都会的な洗練されたブラームス演奏であった。ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の録音は弦の音がすっきりしているのが特徴であるが、実演でもやはり同傾向で、録音によって変化しているわけではないようだ。ベートーヴェンもブラームスも基本的にピリオドを採用しており、そのために弦に透明感が出るのだろう。

アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第1番。情熱的な曲だが、ジンマンは徒にオーケストラを煽ることなく(情熱的な演奏では音を揺らすことが多いがジンマンはそれは行わなかった)、パッションよりも勢いを前面に出した演奏となった。

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