« 文芸について(引用) | トップページ | 大義名分 »

2014年6月21日 (土)

コンサートの記(144) 沼尻竜典指揮 日本センチュリー交響楽団第181回定期演奏会

2013年5月16日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、ザ・シンフォニーホールで、日本センチュリー交響楽団(旧:大阪センチュリー交響楽団)の第181回定期演奏会を聴く。今日の指揮者はセンチュリー響首席客演指揮者の沼尻竜典(ぬまじり・りゅうすけ)。

プログラムは前半がモーツァルトの交響曲第31番「パリ」、後半がメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」全曲である。「真夏の夜の夢」全曲が演奏されることは珍しく、CDでさえ、マイナーレーベルまでは把握していないが、メジャーレーベルで全曲を録音しているのはアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団ほか盤(EMI)だけである(なお、プレヴィンはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほかと「真夏の夜の夢」を再録音しているが、こちらは全曲盤ではなく抜粋盤である)。
ソリストには、ソプラノ独唱に幸田浩子、メゾ・ソプラノ独唱に林美智子という、日本の若手を代表する女声歌手が並ぶという豪華な布陣(もっとも、ソリストが完全に一人で歌うパートはなく、出番も少ない)。語り手を女優の檀ふみが務め、テキストは作詞家の松本隆が担当している。合唱はザ・カレッジ・オペラハウス合唱団。
豪華な陣容であるが、今日は指揮者と向かい合わせになる俗にいうP席に座ったので、チケット料金は1000円という破格の安さであった。

日本センチュリー交響楽団は橋下徹大阪市長が大阪府知事時代に真っ先に潰そうとしたオーケストラであり、センチュリー響としては存続をかけ、大阪のみでなく、全国各地で演奏を行おうという意味で大阪センチュリー交響楽団から日本センチュリー交響楽団に名前を変え、これまで京都コンサートホールぐらいでしか行っていなかった特別コンサートを増やし、今年度は、福井市、岸和田市、大津市、津市、京都市で特別演奏会を行う。またホワイエには障害者向けのコンサートや病院慰問コンサートを行った際の写真パネルが飾られている。
なお、日本センチュリー交響楽団の音楽監督を務めている小泉和裕が2014年3月をもって退任し、同年4月から飯森範親が首席指揮者に就任することに決まったという情報が張り出されていた。

ステージ上方にはデッカツリー(イギリスのデッカ・レーベルが始めたことからその名がついたライヴ録音のための基本的なマイクの釣り方であり、メインマイクの他に4本のマイクが下がっている)があり、ステージ上の各所にもマイクが配置されている。間違いなくライヴ収録が行われるだろうと確信したが、一応、センチュリー響関係者に伺ったところ、やはり収録はあり、「CDとして出せればいいという思いはある」とのことだった。

モーツァルトの交響曲第31番「パリ」。沼尻はバトンテクニックに定評のある指揮者だが、この曲はノンタクトで指揮する。
冒頭からセンチュリー響の弦楽群が普段より透明な音を出し、ピリオド・アプローチを意識した演奏であることがわかる。もっとも、沼尻のピリオド・アプローチは他の指揮者と違い、弦楽器奏者全員がビブラートを抑えるのではなく、ステージ最前列や指揮者に近い奏者はビブラート比較的多くかけ、後ろの方の奏者はほぼノンビブラートで通すという、独特のものであった。
煌びやかで典雅な演奏であるが、聴いている時は感心することが多くても、聴き終わった後に残るものは意外に少ない。バトンテクニックの優れた指揮者は演奏がスポーティーになることが多く、沼尻もその一人なのだろう。

メインの「真夏の夜の夢」全曲。語り手である檀ふみは声音を使い分け、いくつものキャラクターを演じ分けてみせる。流石女優である。言い直したところが一箇所だけあったが、これは失敗のうちには入らないであろう。
沼尻指揮するセンチュリー響も流麗で美しい音を奏でる。ただ、その美音が表面を磨いたように聞こえるのが現時点での沼尻の限界であろう。とはいえ、その弱点を差し引いても充実した内容であることは確かである。
独唱の幸田浩子(少し痩せたように感じた)、林美智子(イメージチェンジか、はたまた役作りのためか、茶髪のボブカットにしており、以前とは大分印象が異なる)も共に澄んだ歌声を披露し、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団も良かった。
この曲の第4幕「夜想曲」には長くて難しいホルンソロがあるのだが、センチュリー響のホルン奏者は苦戦。4度ほどキークス(音外し)をしてしまった。それでもホルンパートの難しさと長さを考慮したのか、演奏終了後、沼尻は真っ先にホルン奏者を立たせてねぎらった。

また、テキストを書いた松本隆が会場に来ており、沼尻によって客席からステージに呼ばれ、共に賞賛を受けた。

|

« 文芸について(引用) | トップページ | 大義名分 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40048/59849224

この記事へのトラックバック一覧です: コンサートの記(144) 沼尻竜典指揮 日本センチュリー交響楽団第181回定期演奏会:

« 文芸について(引用) | トップページ | 大義名分 »