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2014年7月13日 (日)

観劇感想精選(126) こまつ座&ホリプロ公演 音楽劇「それからのブンとフン」

2013年10月19日 イオン化粧品シアターBRAVA!にて観劇

午後12時30分から、シアターBRAVA!で、こまつ座&ホリプロ公演 音楽劇「それからのブンとフン」を観る。作:井上ひさし、演出:栗山民也、出演:市村正親、小池栄子、新妻聖子、山西惇、久保酎吉、橋本じゅん、佐藤こうじ、吉田メタル、辰巳千秋、飯野めぐみ、保可南ほか。ピアノ演奏:朴勝哲。

井上ひさしの初期の戯曲の上演である。

売れない小説家、大友憤(市村正親)。原稿用紙にも事欠いて、チラシの裏に線を引いて原稿用紙代わりに使っている。通俗さを嫌い、芸術至上主義の作品を書いているためにヒットメーカーとはほど遠いのだが、そんな憤が書いた、大泥棒ブンを主人公とした小説が大ヒット。しかし、小説に書いた主人公が小説を飛び出して、現実社会で大暴れしだしたものだから、さあ大変。四次元を飛び越えるという特技を持つブン。ベルリンの動物園のシマウマから縞を盗み、上野動物園のシマウマにそれをつけて格子縞にしてしまう、東大寺の毘盧遮那仏、つまり奈良の大仏を盗みだし、鎌倉の高徳院の阿弥陀仏、つまり鎌倉の大仏の横に据える、ニューヨークの自由の女神の松明が盗まれるなど、ブンは各地で怪盗ぶりをいかんなく発揮する。憤が書いたブンものの小説も大ベストセラーになるのだが……

大友憤役の市村正親以外は、一人で複数の役を演じる。出番の多い小池栄子は、オリジナルのブンとして、白いボディコン姿や和服姿で登場。もう一人のヒロインである新妻聖子は、悪魔役であるが、その前にブンの一人としてセーラー服の女子高生役で出てきたり、NHKEテレのお姉さん風チアリーダーの衣装で登場したり(ちなみにかなり気に入っているようである)と忙しい。音楽劇であるが、歌はミュージカル俳優でもある市村正親と新妻聖子が主に担当する。

ブンとは文であり、ブンが小説から抜け出して活躍するということは、文章が人々の思考に与える影響のメタファーであって、文章の力と大切さを観るものに訴えかける。そしてブンが盗む標的を現物ではなく、人間の記憶や虚栄心、権威欲などに変えていく過程は、ミヒャエル・エンデの童話にも通じるものがあるように思う。

主題だけ抜き出すと説教くさいものに思えるが、そこは井上ひさしの筆だけにユーモアがふんだん盛り込まれており、主題がわからなくても楽しめるものになっている。

知的にも面白く、物語としても面白い。井上ひさしの戯曲としては初期のものであるため、後年に比べると筋書きが二項対立で分かり易すぎるなど、不満に思うところもあるが、それも後年と比べればであった、戯曲そのものは優れた出来である。

ラストのメッセージも非常に力強いものだ。ペンは剣よりも強しである。

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