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2014年8月29日 (金)

コンサートの記(151) 西本智実指揮 日本センチュリー交響楽団 外山啓介(ピアノ) ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」ほか

2014年6月22日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後3時から、ザ・シンフォニーホールで、~映画「砂の器」公開40周年記念~ 西本智実指揮 組曲「宿命」ほかを聴く。外山啓介のピアノ、日本センチュリー交響楽団の演奏。

松本清張のミステリー小説を映画化した「砂の器」が公開されたのが、1974年の10月19日。今年はそれから40年目に当たるというので、「砂の器」の映画音楽であり、鍵を握ることにもなる組曲「宿命」を40年ぶりにステージで再演しようという企画である。西本智実と外山啓介は、日本フィルハーモニー交響楽団と組曲「宿命」のライブレコーディングを行っており、今年の7月23日にCDがリリースされる予定であるが、今日はホワイエでCDの先行発売が行われており、演奏会終了後にCD購入者限定による西本智実のサイン会があるというので、多くの人がCDを買っていた。

今日は、普段のコンサートとは客層が異なる。まず、西本智実も外山啓介も女性に人気があるアーティストなので、女性客が圧倒的に多い。そして大阪といえども、普通のクラシックコンサートでは開演前や休憩時間、演奏会終了後には声を抑えて話をする場合が多いのだが、今日は周りを気にせずガンガン喋るというステレオタイプな「大阪のおばちゃん」そのままのお客さんもいた。

曲目であるが、まずは外山啓介のピアノ・ソロを3曲。いずれもラフマニノフの作品で、「ヴォカリーズ」(リチャードソン編曲)、前奏曲作品23-4、前奏曲作品3-2「鐘」。次いで、西本智実指揮日本センチュリー交響楽団ストリングスによる、芥川也寸志の「弦楽のための三楽章」。休憩を挟んで、メインの菅野光亮(かんの・みつあき)のピアノと管弦楽のための組曲「宿命」が演奏される。

映画「砂の器」の公開日は私の生まれた日に近いので、私が生まれた1974年11月12日にも映画館では「砂の器」が上映されていたのだと思われる。

映画「砂の器」の音楽監督は芥川也寸志であったが、芥川は自らは劇中音楽である組曲「宿命」を書くことはなく、菅野光亮に作曲を依頼している。

組曲「宿命」は、毎日映画コンクール音楽賞、モスクワ映画祭ソビエト作曲家同盟賞を受賞したが、作曲者の菅野光亮は映画「砂の器」公開の9年後、1983年に44歳の若さで病死している。

 

日本人若手女性指揮者というと、ちょっと前までは西本智実の専売特許のようなものだったが、今は西本よりも若くて才色兼備の三ツ橋敬子の台頭が著しく、もはや西本の独擅場という状態ではなくなっている。
西本と三ツ橋のルックスは好対照で、西本が女性としては長身であるのに対して、三ツ橋は女性としても小柄。西本は宝塚歌劇団の男役的風貌(実際に、宝塚音楽学校の生徒から先輩だと間違われてお辞儀をされたことが一度や二度ではないというエピソードがある)であるが、三ツ橋はもし宝塚歌劇に入っていたとしても娘役の方だろう。

外山啓介のピアノによるラフマニノフ3曲。芥川也寸志と菅野光亮がラフマニノフの影響を受けているということで選ばれた曲である。

外山は、持ち味である、クリアで立体感のある響きを奏で、曲調による描き分けも巧みである。「ヴォカリーズ」は少し遅めのテンポでじっくり歌い、前奏曲作品23-4はチャーミングに、前奏曲「鐘」はスケール豊かに演奏する。

西本智実指揮日本センチュリー交響楽団のストリングスによる、芥川也寸志の「弦楽のための三楽章」。プログラムには載っていなかったが、今日は長原幸太が客演コンサートマスターを務めている。

現在の指揮者は、拍を刻むよりも、仕草で音型を示すタイプが多いが、西本はしっかりと拍を振ることが多い。日本的な曲調を持つ「弦楽のための三楽章」であるが、西本は曲の魅力を存分に引き出す。第1曲アレグロでエネルギーの横溢した演奏を聴かせると、ノンタクトで振った第2曲「子守唄」・アンダンテでは一転して磨き抜かれた音による耽美的な展開を示す。終曲である第3曲プレストでの活きの良さも魅力的だ。

メインの、菅野光亮作曲、ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」。

菅野光亮(1939-1983)は、、東京芸術大学作曲科卒業後、ジャズ・ピアニストとして活動を始めた人で、組曲「宿命」にもジャズ的要素が取り込まれている。クラシック作品は僅かしか残していないようだが、映画(「魔界転生」、「鬼龍院花子の生涯」など)やドラマ(「熱中時代」スペシャルなど)の音楽は数多く手掛けている。

組曲と銘打っているが、二部構成であり、普通の組曲のように小品が連続するわけではない。1部2部それぞれが曲調により3つに分けられる。丁度真逆の構成となっており、第1部が、いかにも映画音楽的なゴージャズで甘い音楽に始まり、現代音楽的パートを経て、日本民謡のような旋律で終わるのに対し、第2部は日本民謡的なメロディーで始まり、ピアノの華麗なソロを経て、不協和音の現代音楽的場面に至り、最後は冒頭の「宿命」のテーマが再現され、曲全体に統一感を生んで終わる。

コントラバスは、今日は前後半ともに4人編成だったのであるが、組曲「宿命」演奏前にアクシデントがあったようで、コントラバス奏者の一人が突然、退場。オーケストラがチューニングを終えてもコントラバス奏者は戻ってこない。結局、センチュリー響のスタッフが数名出てきてコントラバスを片付け、急遽、3人編成での演奏となる。奏者か楽器に事故があったのだと思われる。楽器に問題があった可能性の方が高いが断言は出来ない。
指揮台に立った西本はコントラバスの方を見て、「わかった、3人ね」という風にうなずく。

ラフマニノフ的とされる組曲「宿命」であるが、菅野光亮がジャズ・ピアニスト出身ということもあって、ジャズの要素も感じ取れる。「宿命」のテーマは日本的旋律ではあるが、その後の展開を含めてみると、コール・ポーターの音楽のように聞こえる。ラフマニノフは旋律の一つ一つがもっと短めなので、ラフマニノフよりもコール・ポーターの方が近いであろう。
また、ミュートトランペットを多用するところはガーシュウィンを想起させる。

情熱的な演奏展開を持ち味とする西本であるが、今日も集中力の高い演奏が繰り広げられる。センチメンタルに陥らないよう心がけて良く歌い、センチュリー響の美点である音の立体感を存分に駆使する。

外山啓介のピアノも華麗であり、繊細にして煌びやかなピアノが曲調にマッチしている。

100点満点というわけではなかったが、かなり完成度の高い演奏であり、楽しむことが出来た。

 

終演後にもCDを買い求める人が長蛇の列を作っていたが、私は西本は現時点ではロマン派とロシア音楽のスペシャリストと見ており(今日の演奏で日本人作曲家の演奏も得意であることを示したが)、ベートーヴェンやモーツァルトはからっきしであるため、どうしてもサインを貰いたいとまでは思えず、CDも買わず、サイン会にも参加せずにザ・シンフォニーホールを後にした。普段はコンサート帰りの人で混雑する福島6丁目の交差点が今日は空いている。それだけホールに残ってサイン会に参加する人が多いということである。

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