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2014年9月12日 (金)

観劇感想精選(133) 「酒と涙とジキルとハイド」

2014年5月22日 大阪・京橋のシアターBRAVA!にて観劇

午後7時から、大阪・京橋のイオン化粧品シアターBRAVA!で「酒と涙とジキルとハイド」を観る。三谷幸喜:作・演出。ホリプロ企画制作、松竹協力の作品で、大阪公演は梅田芸術劇場と読売テレビの主催であるが、公演は梅田芸術劇場ではなく、毎日放送系列のシアターBRAVA!で行われる(読売テレビは京橋に本社があるため、最寄りの劇場ではある)。出演:片岡愛之助、優香、藤井隆、迫田孝也。チラシには有名俳優3人の名前が大きく書かれており、迫田だけが文字が小さいが、迫田は狂言回しとしてほぼ出ずっぱりであり、ある意味一番重要な役をこなす。

スティーヴンソンの「ジキル博士とハイド氏」を基にしているが、この舞台は換骨奪胎がなされており、全くの別物といって良い内容になっている。

上演時間約1時間45分。休憩なしの1幕もの。場面転換なし、同時系列という、三谷幸喜の原典ともいえるスタイルで書かれたコメディである。

舞台中央に階段があり、それが表玄関へと続いている。主舞台となるのはジキル博士の地下にある研究室だ。屋上の部分はフラットになっていて、そこで二人の音楽家が演奏を行い、また街路に見立てられていて、出演者がそこを通る。

舞台が始める。優香演じるイブが客席に向かって語りかけているが、背後が明るくなると、優香は客席に語りかけているのではなく、プール(迫田孝也)に向かって話しているのがわかる。恋ってとっても不思議、好きな人の前では緊張して自分が出せないのに、特に好きではない人といるとリラックスして自分の良いところが出せる。ということは好きな人には自分の一番魅力的なところを見せることが出来ないということになる。イブがプールに話しているのはそうした内容だ。イブはジキル博士(片岡愛之助)のフィアンセであるが、政略結婚であり、ジキル博士に関してイブはリラックス出来るので余り好きではないようだと言う。ジキル博士は、話がつまらないし、細かすぎる性格が難点のようだ。いつも懐中時計を二つ持ち歩いており、二つを見比べて正確な時間を計ったりするするそうで、イブは「時計は一個で十分、いいえ、時計を持たないようなワイルドな男に惹かれる」のだそうだ。プールはジキル博士の助手。博士と共に性格を変える薬の研究をしている。

街路を通って、ジキル博士が入って来る。ジキル博士は、「とんでも八分、歩いて五分」、「やったぜベイビー」など使う言葉が古くさい。ジキル博士が、善と悪について語るが、キリスト教の思想も取り入れた難解なもので、イブは聞いている間に退屈して寝てしまう。ジキル博士が善と悪を分ける薬を開発したということだけは何とかわかる。

イブが帰った後で、プールはジキル博士に、「取り敢えず、やったぜベイビーはまずかったと思います」と駄目出しする。ジキル博士は精神医学の博士であるが、人の心を読むのが実は苦手である。

イブは持ってきた本をジキル博士の研究室に置き忘れてしまう。一見おしとやかなイブであるが、読んでいるのはどぎつい内容の官能小説である。ジキル博士はイブの外見から愛読しているのはハイネの詩集あたりだろうと予想していたので驚く。

ジキル博士が出掛けたところで、ビクター(藤井隆)という青年がジキル博士の研究室を訪れる。ビクターはジキル博士から午後1時半に研究室に来るよう言われたのだという。
ビクターは劇団所属の俳優。売れてはおらず、「ヘンリー五世」の伝令役で、セリフは一つしかないという。ジキル博士は昨日、「ヘンリー五世」を観に来ており、終演後に声を掛けられたのだという。

プールがビクターの素性を聞く狂言回しの役を終えたところで、ジキル博士が帰ってくる。ジキル博士であるが、人間が持つ善の部分と悪の部分を分かち、悪の部分(博士はこれを「ハイド」と名付ける)のみを引き出す薬の開発に成功したので、明日、学会で発表を行うのだという。だが、実は薬の開発に成功したというのは嘘っぱちで、見栄で成功したと触れ回ってしまい、後に引けなくなったジキルは、ビクターにハイドの役を演じるよう頼む。ビクターが選ばれたのは、ジキル博士と背格好が似ていたというただそれだけの理由だった。

イブがジキル博士の研究室に戻ってくる。ビクターはイブに見つかるとまずいので裏のドアから部屋を出ることになる。イブは帰る途中に真っ赤なショールを売っているのを見て、ジキル博士がこれを背広の胸ポケットに差したら似合うだろうということで、買って戻ってきたのだという。
実際はイブが帰ってきたのは、官能小説を置き忘れたので取りに戻ったためであり、不自然に思われないように適当な理由を拵えたのである。イブは博士が自分の持ってきた本のページを開いていないか確認し、自分が持っているのはディケンズの『オリバー・ツイスト』だと嘘をつく。
ジキル博士は、イブが戻って来た理由を彼女の言うままに信じるが、プールは真相を述べ、「小学生でもわかることです」とあきれ顔である。

だが、イブはまた間違えていた。イブは今度は自分が持ってきた官能小説だと勘違いして、博士の研究ノートを持って帰ってしまったのだ。

ビクターは博士と同じ格好をさせられ、真っ赤なショールもプールが二つに引き裂いてビクターの胸ポケットにも入れる。そして、博士が薬を飲んだ作用に苦しみ、後ろの衝立に向かって右側から隠れた後、一呼吸おいてビクターがハイド氏として衝立の左側から出るという仕掛けを説明される。ビクターは悪役をやろうとするが上手くはいかない。

ジキル博士は、イブが間違えて自分の研究ノートを持って帰ったことに気付く。ノートにはジキル博士が研究したこと全てが書き記されており、人手に渡ったら大変なことになる。ジキル博士はイブの後を追う。プールも奥に退場し、ビクター一人が残される。ビクターはイブの官能小説を読んで、「うわ、えぐい」と呟く。そこへ、博士とは入れ違いにイブが研究室に戻ってくる。イブは博士と同じ格好をしたビクターの後ろ姿を見て、ジキル博士だと勘違いしたまま話を進めるが、ビクターの顔を見て、「誰?!」となる。しかし、ビクターの胸ポケットに博士と同じ真っ赤なショールが差してあったため、「ひょっとして(実験成功)?」となる。イブの声を聞いて戻って来たプールも、ビクターも「ハイドだ」というので、イブは信じてしまう。ビクターが演じるハイドは、イブを「売女!」などと罵るが、イブにはマゾの気があるらしく、恍惚の表情を浮かべる。そして、「ハイド氏に惚れた」とプールに告げる。しかし、イブにはどうしても越えられない一線があった。

イブは自分の殻を破るために、薬を飲む。効くはずもないのだが、イブは思い込みの激しい性格なので、今度はサディスティックな女性へと変貌する……

三谷が得意とする「シチュエーション・コメディ」という触れ込みであり、確かにシチュエーションも面白いし、よく計算されているのだが、それよりも俳優のオーバーアクションで笑いを取っており、どちらかというと「スラプスティック・コメディ」に分類されるような内容である。三谷幸喜の戯曲は全て当て書きであり、稽古前に台本が仕上がっていることは余りないので、稽古をしているうちに、徐々にスラプスティックな方へと変わっていったのだと思われる。藤井隆は吉本所属でスラプスティックはお手の物であり、本作が初舞台となる優香もバラエティ経験豊富で笑いを取るのは得意だ(舞台慣れしていないのに東京ロングランに挑んだ後で大阪入りしたためか、喉が少しやられているように感じる場面があった)。

片岡愛之助といえば、昨年、連続ドラマ「半沢直樹」で、オネエ口調のエリート官僚を演じて話題になったが、サービスとして、オネエシーンも用意されている。「半沢直樹」のテーマ音楽付きである(「半沢直樹」の音楽担当は、「三谷幸喜座付き作曲家」といわれたこともある服部隆之であり、三谷が「使いたい」といえば二つ返事でOKだろう)。

三谷幸喜の舞台は、もともと演技スタイルが新劇のそれに近いが、今回もイギリスが舞台ということで、優香などはかなり西洋人を意識した身のこなしである。

音楽は、説明的に使いすぎるきらいがあるが、勿論、効果的な場面もある。

役者陣も充実していて、笑えて楽しめる舞台であったが、これでも三谷演劇としては中くらいか中より少し下といったところ。そのため却って三谷演劇がいかに高水準かがわかる。

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