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2014年9月 2日 (火)

コンサートの記(152) スイス・ロマンド弦楽四重奏団来日演奏会・京都2014

2014年7月19日 京都・上桂の青山音楽記念館バロックザールにて

午後5時から、上桂にある青山音楽記念館バロックザールで、スイス・ロマンド弦楽四重奏団の来日演奏会を聴く。

スイス・ロマンド弦楽四重奏団はその名からも分かる通り、ジュネーヴを本拠とするスイス・ロマンド管弦楽団のメンバーからなるストリング・カルテットである。メンバーは、第1ヴァイオリン=粟野祐美子、第2ヴァイオリン=イネス・ラーデヴィッグ・オット、ヴィオラ=ヴェレーナ・シュヴァイツァー、チェロ=ヒルマー・シュヴァイツァー。チェロのヒルマー・シュヴァイツァーだけが男性で、他の三人は女性である。ヴェレーナ・シュヴァイツァーとヒルマー・シュヴァイツァーの関係であるが、同じデトモルト音楽大学を卒業し、共にクラウディオ・アバド指揮のグスタフ・マーラー・ユーゲントオーケストラを経て、二人ともデトモルト室内管弦楽団に所属。現在はスイス・ロマンド管弦楽団の同僚である。夫婦か兄妹だと思うが、実際は不明。女性奏者の常として、ヴェレーナ・シュヴァイツァーの生年は不明であるため、どちらが年上なのかもわからない。

粟野祐美子が京都生まれで、京都市立音楽高等学校(現・京都市立堀川音楽高等学校)卒であるため(大学は東京芸術大学に進んでいる)京都でも公演が行われるのだと思われる。スイス・ロマンドSQは、今後、米沢と東京で公演を行う。

全員、スイス・ロマンド管弦楽団のメンバーではあるが、スイス人なのはイネス・ラーデヴィッグ・オットだけである。しかし、オットという苗字から分かるとおり、ドイツ語圏のバーゼル出身でスイス・ロマンド(スイス・フランス語圏のこと)ではない。シュヴァイツァーという苗字の二人はドイツ人だ。

曲目は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番、リヒャルト・シュトラウスの弦楽四重奏曲イ長調、ブロッホの「山にて」(“たそがれ”&“田舎の踊り”)、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」。

実は、スイス・ロマンドSQに関する事前の知識は、「多分、スイス・ロマンド管弦楽団のメンバーによるSQだろう」というかなり大雑把なものしかなく、男女構成すら把握していなかった。ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」が聴けるというのでチケットを購入したのである。

青山音楽記念館バロックザールに来るのは初めて。室内楽&器楽専用の音楽ホールであり、以前もチケットを取ったことがあったのだが、持病が良くない状態だったため、見送っている。

無料パンフレットには、スイス・ロマンド管弦楽団の現在の音楽監督であるネーメ・ヤルヴィと首席客演指揮者を務めている山田和樹によるスイス・ロマンド弦楽四重奏団への賛辞が記されている。

スイス・ロマンド弦楽四重奏団のメンバーは、カラフルな衣装で登場。粟野祐美子がオレンジ、イネス・ラーデヴィッグ・オットが紫、ヴェレーナ・シュヴァイツァーがターコイズブルーのドレス。ヒルマー・シュヴァイツァーは上下共に黒である。

メンデルスゾーンは、「真夏の夜の夢」などの明るい曲も魅力的だが、ヴァイオリン協奏曲や序曲「フィンガルの洞窟」、交響曲第3番「スコットランド」のような短調の曲の方が名曲が多い。
この弦楽四重奏曲第1番も仄暗い曲調が特徴である(一応、全体を通しては長調の曲ではある)。
定石を絶妙に外していく旋律がメンデルスゾーンの才気を感じさせる。

スイス・ロマンドSQのメンバーは全員、音に張りと艶があり、優れたストリング・カルテットだ。

今年が生誕150年となるリヒャルト・シュトラウスの弦楽四重奏曲。現代音楽が次々に発表される時代も生きているが、作風を変えることはなく、「私がこの時代にいるのはたまたま長生きしただけだ」とシュトラウス本人も語っている。作風もドイツ後期ロマン派最後の巨匠という言葉そのままのものである。ただ小洒落ているのがR・シュトラウスらしい。
第1楽章は快活な感じでスタート。その後の旋律も美しい。
第3楽章には、現在はドイツ連邦共和国の国歌「ドイツの歌」の旋律となっているハイドンの弦楽四重奏曲第77番「皇帝」第2楽章の旋律を想起される箇所がある。
弦楽四重奏は、「ヴィオラが要」と言われることがあるが、この曲では特にヴィオラが活躍する。

ブロッホは、ユダヤ教の音楽を数多く作曲していることで知られるが、ジュネーヴ生まれであり、ジュネーヴを本拠地とするスイス・ロマンド管弦楽団ゆかりの作曲家である。
「山にて」は、“たそがれ”と“田舎の踊り”からなるが、“たそがれ”は今日演奏された曲の中で最も現代音楽寄りである。不協和音の移り変わりが黄昏の光景を描き出していく。
“田舎の踊り”は、その名の通り、一転して賑やかな音楽となる。

ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」。今日演奏される曲の中で飛び抜けて有名な作品である。個性が強く、弦楽四重奏曲というジャンルの中でも一二を争うほどの人気曲である。
ヴィオラが歌い出し、第1ヴァイオリンへと引き継がれていく主題を二人とも伸びやかに奏で、第2ヴァイオリンも必要な渋さを発揮し、チェロのリズム感も秀でている。

スイス・ロマンド弦楽四重奏団は、世界的に見ても有名なストリング・カルテットではないが、実力は高い。

第1ヴァイオリンの粟野祐美子は笑顔を浮かべるなど終始楽しそう。第2ヴァイオリンのイネス・ラーデヴィッグ・オットは眉間に皺を寄せての演奏で、各奏者で演奏スタイルは異なる。

室内楽というと、「聴くよりも弾いて楽しむもの」というところがあり、仮に私が作曲家だとしても交響曲、交響詩、協奏曲、独奏曲などは聴衆のために書くが、室内楽だけは演奏家が弾いて楽しめるようなものを生むと思う。ただ今日のスイス・ロマンドSQの演奏会は、音も素晴らしかったし、音の受け渡しを視覚で確認出来るのも面白かった。

アンコールは、ドヴォルザークの「ユーモレスク」(弦楽四重奏版)。第1ヴァイオリンの粟野祐美子が伸びやかなヴァイオリンを奏でる。

アンコールをもう1曲。粟野が、「東日本大震災の時に、スイスのラジオで流れていた曲です。題名は敢えて言いません」と語った後で、童謡(文部省唱歌)「故郷」の弦楽四重奏版が演奏された。

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