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2014年10月 9日 (木)

観劇感想精選(136) 「茂山狂言会」秋公演2014

2014年9月7日 京都烏丸一条の金剛能楽堂にて観劇

午後4時から、京都御苑の西にある金剛能楽堂で「茂山狂言会」秋公演を観る。茂山千五郎家による公演である。今日は午前11時からと午後4時からの2回公演であり、午前の部では茂山正邦の三男である鳳仁君、今回の午後の部では茂山逸平の長男である慶和君が共に「靱猿」で初舞台を踏む。そのため、鳳仁・慶和「靱猿」競演というサブタイトルが付いている。

演目は、「靱猿」、小舞「吉の葉」、小舞「雪山」、「右近左近」、「寝音曲」、「仁王」

「靱猿」。出演は、茂山七五三、茂山宗彦、茂山慶和、茂山逸平。後見や地謠まで入れると書き切れないので割愛する。

大名が京に戻る途中で遊行(狩りのこと)をすることにする。そこへ、猿使いと猿がやって来たので、その猿の皮を靱(矢を入れる筒状の道具)の外巻きに使おうと思い立つ。大名の家臣である太郎冠者が猿使いにその旨を申し出るが、猿使いは戯れだと思って気にしない.ところが大名が本気であることを知って驚き、「それだけは受けるわけにはいかない」と突っぱねる。大名は憤り、猿使いと猿を共に矢で射てその後で、猿の皮を靱に使おうとする。矢を構えられた猿使いは、仕方なく自分で猿を討つことにするのだが……

前半はシリアスな場面が続き、後半に笑いが連続する。

まだ幼い茂山慶和は猿を演じ、父親の茂山逸平が猿使い役で親子共演となる。茂山慶和はまだ烏帽子が重たそうな年齢であるが、無事に役目を果たし終えた。

小舞「吉の葉」と小舞「雪山」は、共に子供である茂山竜正と茂山虎真の舞。「吉の葉」を茂山竜正が、「雪山」を茂山虎真が舞う。茂山虎真の方が年長である。茂山千五郎家は中興の祖である九代目千五郎の諱が正虎であったが、茂山家自体がそれとは無関係に熱心なタイガースファンのようなので、あるいは虎真はタイガースが前回優勝した2005年生まれなのかも知れない。いずれにせよ二人ともまだ迫力ある舞が出来る年齢ではない。

「右近左近」。出演は、茂山茂、茂山童司。後見:山下守之。

右近は「うこん」はなく、「おこ」と読む。「おこ」というと「おこの沙汰」という言葉からわかる通り、愚か者という意味である。左近は「さこ」と読む。それ自体に特に意味はないが、「さ」で始まる「聡い」、「賢しい(さかしい)」などの意味掛けがあり、切れ者という設定である。右近も左近も百姓であるが、左近の馬が、実った右近の田を蹴散らし、稲を食い漁るという事件があった。
右近(茂山茂)は、そのことで、女房(茂山童司)に相談をする。この事を公事(事件)にして地頭へ訴え出ようというのである。だが女房は、左近は裕福で地頭への年始の礼も欠かさないのに、右近はといえば貧しい上に地頭へ挨拶に出向いたこともない。それでは地頭は左近に味方するから公事にするだけ無駄だと言う。

それでも、地頭に訴え出て勝つための稽古をしようということになり、女房が地頭に扮するが、右近は今でいうイメージトレーニングに嵌まりすぎて、余計なことばかりした上に、地頭の前に出ると緊張の余り、「左近の田を馬が荒らしました」、「左近が馬を食べました」、「左近が右近を食べました」と支離滅裂なことを言ってしまう。
実は女房には秘密があるのだが、右近もそれを知っていて……

やはり茂山茂、茂山童司クラスになると二人とも張りのある声が心地良く、メリハリのある動きにも静かな迫力が漲っている。

ちなみに、茂山童司は、この演目でセリフを間違えたそうで、「仁王」ではそのことをネタにしていた。

「寝音曲」。出演は、茂山宗彦、茂山正邦。後見:井口竜也。

主が友人の家を訪ねた後の帰り道で、家来の太郎冠者が能の謡いをしているのを聴く。上手いというので、家に帰った後、太郎冠者を呼んで謡をさせようとするが、太郎冠者は後々面倒なことになりそうなので、謡を拒む。だが、「酒を飲まないと謡が出来ない」と太郎が無理を言い、大きな杯で三杯も開ける。普段は酒など飲める身分ではないので、ここで思う存分飲んでやろうという魂胆だったのだが酔ってしまい……

太郎冠者を演じた茂山宗彦の謡が見事である。

「仁王」。出演は、茂山あきら、茂山千三郎、茂山逸平、茂山童司、網谷正美、丸石やすし、松本薫、茂山千五郎。後見:増田浩紀、鈴木実。

すっぱ(盗人、詐欺師、犯罪者などという意味。「忍者」という意味もあり「すっぱ抜く」のすっぱは忍者の方である)をして家から追い出された男が、知り合いを頼り、知り合いが山の上に仁王像が現れたということにしよう、そうすれば居ながらにして貢ぎ物を受け取ることが出来てそれで不自由なく生活出来ると提案する。すっぱは仁王像に扮することにする。

知り合いは麓まで行って、村人達を呼んでくる。村人達は、供え物をして「南無仁王像」と唱えた後で、お願いをするのだが、ここは全て出演者のアドリブに任せられている。

茂山逸平は、「最近、父親が涙もろくなってきて困る」と言い、茂山童司は「先程、セリフを間違えてしまいました」と打ち明ける。自分のことよりも阪神タイガースや広島東洋カープの勝利を願う人もいる。皆、受け狙いであり、客席からは爆笑が起こる。

茂山千五郎は、昨年、観世会館の階段から転げ落ちて怪我をし、今も歩行に難があるのだが、そのことも笑いのネタに変えており、狂言師の心意気を感じさせた。

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