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2014年10月 4日 (土)

コンサートの記(154) グレン・ミラー・オーケストラ2014大阪公演

2014年9月22日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後6時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、グレン・ミラー・オーケストラの来日演奏会を聴く。グレン・ミラー・オーケストラ初来日から50年目に当たることを記念しての日本ツアーの大阪公演である。今回の日本ツアーはかなり大規模なもので、グレン・ミラー・オーケストラのメンバーは約1ヶ月に渡って日本に滞在する。

ジャズのビッグバンというのは、普通はリーダーが引退したり死去したりすると解散となるのが普通だが、グレン・ミラー・オーケストラは、グレン・ミラーの死去から半世紀以上が過ぎたのに、今なお世界最高のジャズ・ビッグバンドとして活動を続いているという稀有な例である。過去の在籍者に映画音楽作曲の大家であるヘンリー・マンシーニもいる。

グレン・ミラー・オーケストラの代表曲には有名なものが多く、「ムーンライト・セレナーデ」や「イン・ザ・ムード」、「茶色の小瓶」などのメロディーは日本人なら耳にしたことのない人はいないと断言してもいいほど有名である。映画やテレビなどで盛んに使われている上に、飲食店や病院のBGMなどとしてありとあらゆるところで流れているため、避けて通ることの方が困難だとも言える。

ジャズの場合は、「テイクファイブ」などの例外はあるが、基本的に合わせやすいように4拍子で作られているため、多少編成が大きくても指揮者は必要ないのだが、ミュージックディレクターのニック・フィルシャーが指揮者を務める。フィルシャーはメインヴォーカルと司会も担当する。フィルシャーはピアノが専門で、音楽学部でピアノの音楽学士号も得ているが、弾き振りではなく、専門のピアニストを置いての演奏である。

グレン・ミラー・オーケストラの演奏曲目はチラシの束の中の1枚として無料で配布されており、お金を出さなくても何が演奏されるのか事前にわかるようになっている。グレン・ミラー・オーケストラが好きな人のために有料パンフレットも作られているが、500円という良心的な価格である。

プログラムは、オープニングテーマ「ムーンライト・セレナーデ」、「アメリカン・パトロール」、「真珠の首飾り」、「セレナーデ・イン・ブルー」、「タキシード・ジャンクション」、「キング・ポーター・ストンプ」、「ザ・レディー・イズ・ア・トランプ」、「ジャスト・イマジン」、「ペンシルバニア6-5000」、「ビギン・ザ・ビギン」、「グレン・アイランド・スペシャル」、「バークリー・スクエアのナイチンゲール」、「サムシング・ガッタ・ギヴ」、「林檎の木の下で」、「チャタヌーガ・チュー・チュー」、約10分という異様に短い休憩を挟んで、「ナイト・トレイン」、「茶色の小瓶」、「アット・ラスト」、「ワン・オクロック・ジャンプ」、「ペニーズ・フロム・ヘブン」、「アイ・ウォント・ダンス」、「スターダスト」、「カラマズーの娘」、「レッツ・バブ・アナザー・カップ・オブ・コーヒー」、「イン・ザ・ムード」、クロージングテーマ「ムーンライト・セレナーデ」。「ムーンライト・セレナーデ」はグレン・ミラー・オーケストラのテーマ曲ではあるが、2回演奏される上に、メンバーが合唱としてステージ前方に出てきて歌う際はヴォーカル・グループ「ムーンライト・セレネーダーズ」を名乗るなど、グレン・ミラー自身の作曲による「ムーンライト・セレナーデ」への入れ込みはかなり強い。日本では「イン・ザ・ムード」の方を耳にする機会の方が多いかも知れないが。

「ムーンライト・セレナーデ」は、ジャズの曲の中でもかなり洗練された楽曲であるが、これはグレン・ミラーが白人だったことと無関係ではないだろう。黒人が始めた音楽であるジャズはソウルを大事にするが、「ムーンライト・セレナーデ」からはソウルのようなものはほとんど聴き取ることが出来ない。

グレン・ミラーは白人ジャズプレーヤーとして有名になれたが、その代償として、白人からも黒人からも差別されるというほろ苦い人生を歩んでいる。黒人からは「俺達の音楽に白人がしゃしゃり出てくるな」と思われたであろうし、白人からは「なんで白人がジャズなんて演奏しているんだ? プライドはないのか?」と白眼視された。
第二次世界大戦が勃発すると「音楽もまた戦争」ということで、ヨーロッパ各国で慰問演奏を行うが、フランスに向かうためにイギリスから飛行機で離陸後に消息を絶つという、サン=テグジュペリのような最期を遂げている。

男声メインヴォーカルは指揮者のニック・フィルシャーが務めるが、女声ヴォーカルは楽団専属歌手であるナタリー・アングストが受け持つ。

フェスティバルホールは音響設計がなされているが、多目的ホールであり、幕を使ったり、カラフルなライトを用いるなどの演出が可能である。午後6時開演と日本でのコンサートとしては早めの開始であるが、上演時間は約2時間と平均的なものであった。そのため、午後8時過ぎには終了となる。おそらく、幕を始めとした舞台装置を外して今日中には移動を行うために早めにスタートして早めに終わったのであろう。

ニック・フィルシャーは、「大阪の皆さん、毎度」「日本に来ることが出来てとても嬉しいです」と日本語で挨拶し、その後は英語でのトークを行う。音楽の場合、語られる内容のパターンはどんなジャンルであってもほぼ同じであり、使われる英単語も限られているため、英語であっても大体の意味は把握することが可能である。

トランペットがミュートの時に帽子のようなものを朝顔の前にかざしたり(3階席で聴いていたので、何をかざしているのかまではわからなかった)、トロンボーンが左右に体を揺すりながら吹いたりと、ビッグバンドではお馴染みの光景が続く。お馴染みではあるが、やはり見ていて楽しい。

クラシックの演奏会で見掛ける類の木管楽器専門の奏者はおらず、一応、木管楽器であるサックスの奏者がクラリネット演奏も兼任している。

演奏としての完成度よりもショーとしての見せ方が上手いと感じるコンサート。やはりアメリカはショーの本場であるため、エンターテインメントの作り方が並みではない。日本ではサービスと取られることがアメリカでは普通なのであろう。ただ、日本人が彼らの真似をしても様になるとは思えないので、日本人ならではの楽しませ方というのを生み出してみるのも面白そうだ。難産になりそうではあるが。

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