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2014年10月13日 (月)

コンサートの記(157) 京響プレミアム 菅野祐悟×広上淳一×京都市交響楽団

2014年8月24日 京都コンサートホールにて

午後3時から、京都コンサートホールで、「京響プレミアム 菅野祐悟×広上淳一×京都市交響楽団」というコンサートを聴く。「京響プレミアム」は、クラシックでない音楽をオーケストラで本格的に演奏しようという試みで、今日の演奏が第1回となる。

菅野祐悟(かんの・ゆうご)は1977年生まれの作曲家。映画音楽やドラマ音楽などの劇伴音楽を主に作曲しており、今年の大河ドラマ「軍師官兵衛」の音楽も担当している。そうした人の作曲した音楽を、それも作曲者の演奏付き聴けるというのは正にプレミアムだが、チケット料金自体は定期演奏会などに比べると安い。

菅野祐悟は有名な映画やドラマの音楽を次々に書いている、今最も旬な日本人劇伴作曲家の一人である。代表作は「軍師官兵衛」の他に、ドラマでは「ガリレオ」、「新参者」、「花咲舞が黙ってない」、「ダブルフェイス」、「MOZU」、「安堂ロイド」、「外交官・黒田康作」、「不毛地帯」、「ホタルノヒカリ」、「SP 警視庁警備部警護課第四係」、映画では「アンダルシア 女神の報復」、「アマルフィ 女神の報酬」、「容疑者Xの献身」、「真夏の方程式」、「踊る大捜査線 THE FINAL」、「麒麟の翼~劇場版・新参者~」、「カイジ 人生逆転ゲーム」、アニメに「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ」、「PSYCHO-PASS サイコパス」など、話題作が目白押しである。
また、東京音楽大学卒であり、今日の指揮者である広上淳一の後輩に当たる。ということで、「京響プレミアム」の第1回の作曲者として招かれたのであろう。

東京音楽大学は日本最古の私立音楽大学であるが(創設時の名称は東洋音楽学校)、桐朋学園大学や国立音楽大学、武蔵野音楽大学などに押され、長い間、東京の音大の中でも下位に甘んじてきた。広上淳一も「俺は二浪して三流大学だから」と言っていたり、「海外で出身校を答えるといい顔をされない」と書いているほどである。しかし、近年になって急速に成長し、次々と優れた人材が輩出している。声楽の分野は昔から強かったが、広上淳一が指揮科の教授になってからは、川瀬賢太郎や船橋洋介のように、「広上さんに教わりたい」という理由で東京音楽大学に入学した指揮者が頭角を現し始めている。作曲の分野もクラシックではさほどではないが、劇伴の分野では菅野祐悟の他に、大河ドラマ「龍馬伝」や映画「ALWAYS 三丁目の夕日」などの作曲を手掛けた佐藤直紀も活躍がめざましい。

演目は、“新参者”より「新参者-MAIN THEME-」、“ホタルノヒカリ”より「ホタルノヒカリ-OPENING TITLE-」、“ガリレオ”より「探偵ガリレオ」、“PSYCHO-PASS サイコパス”より「PSYCHO-PASS Symphony」、“踊る大捜査線 THE FINAL”より「LIFE」&「湾岸の要塞」、“花咲舞が黙ってない”より「花咲舞が黙ってない」、“MOZU”より「MOZU~String~」、“ダブルフェイス”より「ダブルフェイス」、“軍師官兵衛”より「軍師官兵衛 メインテーマ」「天才官兵衛」「官兵衛走る」「軍監官兵衛」。

京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一の指揮。菅野祐悟は全曲でピアノを弾く。ちなみに今日のピアノは蓋を完全に取り払い、マイクが入っていて、ピアノの下に置かれたスピーカーからも音が出るという仕組みである。

今日の京都市交響楽団のコンサートマスターは泉原隆志。渡邊穣は今日は降り番であり、フォアシュピーラーにはアシスタント・コンサートマスターの尾﨑平が入る。

管楽器は今日は前の方の席だったので確認が難しかったが、首席奏者は余りいなかったように思える。ティンパニには打楽器首席奏者の中山航介が入るが、今日は打楽器が大活躍する曲もあるため、客演奏者を3人招いている。

菅野祐悟は、スーツの前部分が赤い独特の衣装で登場。広上淳一は、前半は濃い茶色にアラベスクのような模様の入った独特の上着である。広上は後半は黒いジャケットに着替えて出てきた。

1曲ごとに菅野と広上によるトークが入る。菅野はコンサートではいつもトークを入れているそうだが、菅野曰く「良い音楽とグダグダのトークのギャップを楽しんでいただくため」だそうである。

ちなみに、菅野は本人曰く「嵐を呼ぶ男と言われている」そうで、今年は東京で40年ぶりの大雪のあった日にコンサートが当たってしまったという。栃木に行ったら今度は台風が来たそうだ。菅野は広島の大雨が大災害を招いているのをテレビで知り、「京都は大丈夫だよね?」と聞いたそうだが、やはり嵐を呼ぶ男なのか今日の京都は大雨である。大雨・落雷警報も出た。

菅野はまず、「皆様、本日はどうもおこしやす」と挨拶。「合ってるんですかね?」と呟く。それから、「昨夜は京都の良い場所で、あれ? 地名をど忘れした。どこでしたっけ?」と聞くが本人しか知らないので誰も答えられない。京都には良い場所は沢山あるのである。ただ祇園の可能性が高いとは思ったが、やはり祇園であり、菅野が思い出して、「祇園の素敵な料亭で食事をしてはんなりしました」と言って、広上に「はんなりで良いですかね?」と聞く。広上は「はんなりは難しいから使わない方が良い」と答えていた。菅野は「どうしても京都弁を使ってみたかった」と言う。

フルサイズのオーケストラで演奏出来るように菅野が編曲したスコアでの演奏。ルロイ・アンダーソン風編曲だったり、ジョン・ウィリアムズ風編曲だったりする。やはり映画音楽などはアメリカ人の作曲家に実力者が多いため、アメリカ風の編曲になるようだ。

菅野祐悟は作曲家としては優れているが、一般人に比べると少し抜けたところがあるようで、祇園をど忘れしたということもあるが、「花咲舞が黙ってない」を「花咲舞が黙っていない」だと思い込んでいたり、西島秀俊のことを、「西島ひでとしさん、あれ? としひでさんでしたっけ?」と主演俳優の名前を記憶していなかったり、次に演奏する曲が何なのか忘れてしまったりする。菅野は「マイペースでやって良いと言われているので」と言い訳するが、広上は泉原と顔を見合わせて「マイペースにも程がある」といった風に笑っている。優れた才能のある人は他の部分が欠落しているというのはよくあることである。

そんな菅野祐悟であるが、バラエティに富んだ作風を誇り、雄大なものからドラマティックなもの、神秘的な音楽から愛らしいものまで巧みに書き分けている。コンサートマスターが活躍する場面が多く見られ、それが一つの特徴となっている。

菅野祐悟は、これまで様々なヴァイオリン奏者と共演してきたが、泉原隆志の音色は好きだそうで、泉原の演奏を特等席で聴けるのが嬉しいそうだ。菅野は泉原のことを「向井理似のイケメン」と評する。京響の楽団員の中で泉原が一番のイケメンであることに異論を唱える人はいないであろう。

今日は前から6列目であり、京都コンサートホールは前の方の席は響きが良くないのであるが、京都コンサートホールの音響を把握している広上の指揮だけに、今日は良い響きで楽しむことが出来た。

面白い曲が並んでいたが、一番の聞きものは何といっても大河ドラマ「軍師官兵衛」の音楽。テレビから流れてくる「軍師官兵衛」のメインテーマの指揮者が他ならぬ広上淳一なのである。ちなみに菅野によると、「2分40秒ジャストというかなり厳密な規定がありまして、『良い演奏が出来たな』と思ったら、『2分42秒、やり直し』という指示が来て、『えー、2秒ぐらいいいじゃん。音楽を優先させてよ』」とも思ったそうだが、2分40秒ジャストになるまで収録を繰り返したそうである。
広上淳一は、2004年の大河ドラマ「新選組!」、2010年の大河ドラマ「龍馬伝」の指揮を担当しているが、「父親が某国営放送局、まあ、NHKですね、に勤めていたものですから、大河ドラマは幼い頃から見ていて、大河フェチ。歴史の成績の方は余り良くなかったのですが、歴史劇は好きで、黒田官兵衛は好きな武将なのでやれて良かった」と語るが、「去年も綾瀬はるかさんに会えるというので本当はやりたかったのですが」などと相変わらずのミーハーぶりも発揮する。

京都コンサートホールの1階席は音が横に飛びやすいのだが、今日はそれが程よい拡がりとなって、テレビやオーディオで聴くよりもスケールの大きな演奏を楽しむことが出来た。

菅野祐悟は、「皆様、本日は最後までお聴き頂きまして本当におおきに」と関西弁を交えたお礼を述べ、アンコールとして、今日の演奏会のために作曲してきたというピアノソロ曲「約束」を演奏する。しっとりとした曲である。その後、菅野に広上指揮の京響も加わり、“軍師官兵衛”から、「天下人秀吉」が演奏された。

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