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2015年1月21日 (水)

コンサートの記(170) 垣内悠希指揮 京都市交響楽団特別演奏会「ニューイヤーコンサート」2015

2015年1月11日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団特別演奏会「ニューイヤーコンサート」を聴く。今日の指揮者は期待の若手、垣内悠希。

曲目は、モーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」序曲、フリードリヒ・グルダのチェロとブラス・オーケストラのための協奏曲(チェロ独奏:宮田大)、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」

「ニューイヤーコンサート」ということで、女性奏者は思い思いの華やかな衣装で登場。洋装が圧倒的だが、中には振り袖の人もいるし、成人式や卒業式の時のような羽織袴の人もいる。男性奏者も蝶ネクタイでお洒落に決める。

垣内悠希は、1978年東京生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業(指揮科ではない)後、ウィーン国立大学に留学し、同校指揮科を首席で卒業。2011年に同校劇場音楽科特別課程を修了。同年のブザンソン国際指揮者コンクールで優勝している。現在はポストには就いておらずフリーの立場で指揮活動をしているようだが、フランス、オーストリア、ロシア、日本など世界を股に掛ける活躍をしているようである。

京都市交響楽団の今日のコンサートマスターは泉原隆志。渡邊穣がフォアシュピーラーに回る。ドイツ式の現代配置での演奏。クラリネット首席奏者の小谷口直子は前後半共に登場(「田園」演奏中に楽器トラブルがあったようだ)。フルート首席の清水信貴とオーボエ首席の高山郁子は後半のみの登場である。

モーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」序曲。トルコを舞台としたオペラの序曲であるため、トルコ風の旋律やシンバル(トルコはシンバルの有名な産地である)の活躍が目立つ。
弦楽の旋律の歌わせ方が流線型でピリオド的であるが、意欲的にピリオドを取り入れたという風ではなく、自然体である。
キビキビとした音楽運びが特徴。垣内の指揮のスタイルは、指揮台の上で結構動き回るというのが特徴である。第1ヴァイオリンの音を大きくしたいと思うときはコンサートマスターの近くにスッスと歩み寄る。

フリードリヒ・グルダのチェロとブラス・オーケストラのための協奏曲。ドラムスが入る場面ではかなりロックすることで知られる曲である。珍しい曲であるが、京響がこの曲を取り上げるのは初めてではなく、下野竜也指揮の定期演奏会で取り上げられたことがあるはずである(その日は別の用事があったため、当該コンサートは耳にしていない)。

宮田大(みやた・だい)は、京響との共演経験もあるが、栃木県出身のチェリスト。両親共に音楽教師という恵まれた音楽環境の中で育ち、出場した国内コンクールでことごとく1位を獲得。パリで行われた第9回ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールでも優勝している。桐朋学園音楽学部特待生、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコース首席卒。ジュネーヴ音楽院も卒業している。

20世紀を代表するピアニストの一人であるフリードリヒ・グルダ(1930-2000)。J・S・バッハなどの独自の解釈による演奏でも知られているが、ジャズを演奏し、即興演奏なども得意としていた(ジャズピアニストとしての評価は残念ながら高くはなかった)。この曲は、チェリストで指揮者としても活躍しているハインリヒ・シフがグルダにベートーヴェンのチェロ・ソナタで共演しようと持ちかけたものの、グルダが良い顔をせず、そこでシフが「チェロの曲を書いて下さい」と依頼して出来上がったものだという。理由はわからないが、どうもグルダはシフのことを疎ましく思っていたようである。

編成であるが、突飛である。まずドラムス(京響首席打楽器奏者で、通常はティンパニを叩いている中山航平が担当する。ちなみに革靴から運動靴に履き替えての演奏である)が、舞台上手後方に陣取る。
上手前方にはギターとベース(エレキスタイルのものでアンプも使うが、音は全曲を通してアコースティック音にセットしたままで演奏する)、管楽器は一通り並ぶ。純粋にアコースティックな弦楽器はコントラバス(ダブルベース)1台のみである。ギターとベースには客演奏者が招かれ、ギターを中村たかしが、ベースを小笹了水が演奏した。

5つの楽章からなるが、ドラムスが盛大になっている時のチェロの旋律はかなり通俗的である。その他の楽章ではモーツァルト的だったりバッハ的だったりと、ピアソラのタンゴのようだったり、フランシス・レイの映画音楽を思わせたりと、おそらくグルダは意図的に作風を真似て書いている。
最終楽章は、スーザが書いたような行進曲。楽しいといえば楽しいが能天気に過ぎる気もする。

宮田のチェロは潤い豊かな音色で、華麗な技術を披露する。

深みのある作品ではないので、聴いて楽しければOKである。ただ、第5楽章が余りにポピュラー寄りで明るく、続けてチェロ奏者のアンコールの定番であるJ・S・バッハの無伴奏チェロ組曲やカタルーニャ民謡の「鳥の歌」などを演奏すると違和感があるためか、宮田はアンコール演奏を行わず、最後はチェロを持たずにステージに登場して一礼した。

ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。ポピュラーな曲であるが、難曲でもある。まず曲の冒頭が交響曲第5番同様、休符で始まる。「田園」は比較的ゆったりと始まるために第5に比べると振るのは楽であるが、第2楽章には8分の12拍子(8分音符の3連符4つ)という、クラシック音楽でしか見掛けない拍子が現れる。その後も、拍子記号は簡単でもオーケストラコントロールは難しい場所が続く。

垣内は中庸のテンポを採用。弦の歌い方はピリオド寄りであるが、ピリオド・アプローチという程までには行かない。それよりもティンパニに硬めの音を出させたのがピリオド的である。

第1楽章の高揚感、第2楽章の瑞々しさ、第3楽章の快活さ、第4楽章の迫力、第5楽章の伸びやかさ、いずれも満足のいく出来。三十代でこれほどのベートーヴェンが振れるのなら上々である。

演奏を終えた後、垣内は後ろのポールにもたれ掛かって「あー、疲れた」という表情をする。若くても「田園」を演奏するのはしんどいのだろう。

垣内と京響は喝采を受けるが、垣内が拍手を止めて貰うような仕草をした後で、「新年あけまして」と言い、京響のメンバーが「おめでというございます!」と続けた。

アンコールは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ニューイヤーコンサートでも定番の「ピッチカート・ポルカ」。好演であった。

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