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2015年3月17日 (火)

コンサートの記(175) サー・ロジャー・ノリントン指揮チューリッヒ室内管弦楽団来日演奏会2014

2014年10月2日、大阪・京橋のいずみホールにて

午後7時から、大阪・京橋のいずみホールで、サー・ロジャー・ノリントン指揮チューリッヒ室内管弦楽団の来日演奏会を聴く。ノリントンの80歳記念と日本・スイス国交樹立150周年を記念した公演である。ノリントンとチューリッヒ室内管の世界ツアーの一環であるが、日本での演奏会は、ここ、いずみホールでの今日のコンサートのみとなる。ということで、関西のみでなく日本各地からいずみホールまで詰めかけたお客さんもいるはずである。いずみホールがシリーズで行っている「モーツァルト ~未来へ飛翔する精神」の一つとしてノリントンが特別に演奏会を開くことになったのであろう。

オール・モーツァルト・プログラム。ノリントンは現役の指揮者としては最も巧みにモーツァルトを演奏する指揮者の一人である。
交響曲第1番、ピアノ協奏曲第21番(ピアノ独奏:HJリム)、交響曲第41番「ジュピター」が演奏される。

第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンともに5名という編成。古典配置であり、平台などは用いず、管楽器奏者は立って演奏する。今日のノリントンは全曲ノンタクト、暗譜での指揮である。

1934年、英国オックスフォード生まれのサー・ロジャー・ノリントンは90年代に癌を患い、心配されたが、見事に克服。現在、チューリッヒ室内管弦楽団の首席指揮者を務めている。最初は古楽器のオーケストラであるロンドン・クラシカル・プレーヤーズを組織して指揮していたが、その後、モダンオーケストラをピリオド・アプローチで演奏することに専念し、ロンドン・クラシカル・プレーヤーズは解散している。モダン・オーケストラの指揮者としてはカメラータ・ザルツブルクとシュトゥットガルト放送交響楽団(SWR交響楽団)の首席指揮者を長きに渡って務め、特にシュトゥットガルト放送交響楽団とは「ベートーヴェン交響曲全集」を始めとする名盤を作成している。

交響曲第1番は、モーツァルトが8歳の時に作曲したもの。モーツァルト最初の交響曲として、モーツァルトの初期交響曲の中では比較的知られている作品である。

ノリントンは強弱をはっきり付ける。特にピアニシモからフォルテシモへと一足飛びに移行する手段が多用され、ロッシーニクレッシェンドをも凌ぐ効果を上げている。

ノリントンのピリオド・アプローチは、同手法を取り入れている指揮者の中でも最も徹底したもので、ビブラートはほとんど用いず、澄んだ音色を基調としている。ティンパニは小型で硬い音を出すバロックティンパニを採用。マレットの先には何も巻かれておらず、木の棒で叩く感じとなる。トランペットとホルンはモダンタイプを使用。

ピリオド的面白さよりも、放出するエネルギーでもって魅せる演奏。それにしても、モーツァルトは8歳にして哀感に満ちた第2楽章を書いているのだから凄い。

ノリントンは、ラストで客席の方を向くというパフォーマンスを得意としており、今日も交響曲第1番が終わると同時に客席の方に向き直ってみせた。

ピアノ協奏曲第21番。以前、ザ・シンフォニーホールで行われた、ノリントン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団の来日演奏会で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲を演奏した時もそうであったが、今回もピアノは弾き振りをする時のように鍵盤を客席側に向けて据えられ、ソリストは聴衆に背中を向けながらの演奏となる。ピアノの蓋は取り払われており、ノリントンはソリストと向かい合わせになって舞台の中央付近で指揮をする。楽団員はノリントンを中心に車座になって弾く。ということで、コンサートマスターも第2ヴァイオリン奏者も客に背中を見せながらの演奏である。私の席からだとノリントンの姿は第2ヴァイオリンが陰に隠れる形となり、足元しか見ることは出来ない。

ピアノ独奏の、HJリムは、韓国生まれ、フランス育ちの若手女性ピアニスト。LIMというアルファベットの綴りは、東京ヤクルトスワローズのクローザーであったイム・チャンヨンと同じであるため、漢字で書くと「林」、ハングル読みでイムだと思われるのだが、フランス育ちであるためリムと名乗っているようだ。HJはファーストネームの漢字二字の頭文字を取ったものであると思われるのだが、何という漢字で名前なのかはわからない。
パリ国立音楽院を卒業後、EMI(現在はワーナーに統合)と契約し、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集でCDデビューをしている。

リムのピアノであるが、モーツァルトなのにヴィルトゥオーゾのような弾き方で弾くため、典雅さが後退し、かなり乱暴な印象を受ける。メカニックは達者であるが、音楽よりも技術を聴かされているような気分になってしまうのだ。
ノリントン指揮のチューリッヒ室内管は標準的なテンポでスタートしたが、リムは快速でバリバリ弾く。その速さに意味が感じられず、正直、苦手なタイプのピアニストである。

第2楽章は、映画「短くも美しく燃え」のテーマとして使われたことで知られるが、リムはスラスラ進んでしまうため味気ない。

カデンツァは、ベートーヴェンの「プロメテウス主題」などが用いられた独自のものであったが、アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキーが作曲した新しいものであるという。

リムはアンコールとして、ショパンの夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)を弾く。ザッハリッヒカイトなものであったが、モーツァルトよりはリムの個性に合っているようだ。

交響曲第41番「ジュピター」。
ノリントンは最初の音を弱く抑え、そこから急速に強さを増すような仕掛けを施す。同じような音型が続いても、違った風に演奏するなど細やかな演奏である。拍よりも自在な表現を重視しており、スピードや強調すべき音を変幻自在に操る。現時点で聴くことの出来る最高峰のモーツァルトだと思って間違いないだろう。

ノリントンとチューリッヒ室内管は、アンコールに応えて、「ジュピター」の第4楽章から終盤を再度演奏する。楽器のバランスを微妙に変えての演奏。ノリントンは第2ヴァイオリンに指示を出してから、第1ヴァイオリンへの指示へと移行する際に、時計回りをして一端客席と正対するというパフォーマンスを見せた。

拍手は鳴り止まず、終演後もノリントンはステージに残り、客席からの喝采に応えた。

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